『おやすみプンプン』というマンガは、浅野いにお先生著の、簡単に言ってしまえばただただ一人のどこにでもいる、やや自意識過剰な少年(お前だお前!)が青年に至るまでの半生を描いたものである。
そこには怪獣が出てくるわけでもなく、お化けが出てくるわけでもない。リーゼント姿のヤンキーも出てこないし、密室殺人だって出てこない。ある意味ぼくらの日常にとてつもなく近く、だからこそ何より引き込まれる。
たぶんそれは、この物語のキャラクターたちがぼくたちと同じく、"どこにでもいる人"だからだろう。
プンプンのそれは、どこにでも転がっている淡い恋心から始まった
プンプンの居た小学校に田中愛子という少女が転校してきた所から物語は始まる。
プンプンと愛子の周りは決して幸福とはいえない。二人の周りには色々な問題が転がっていて、ただそれはまだプンプンの目にはハッキリとは見えない。しかしその歪みは、二人が成長するにつれ、どんどん影響を与えていく。大人になった二人が一体どんな選択をするのかーー。最後に二人が迎える結末を、ぼくは平常心で迎え入れる事が出来なかった。
それは恐らく、どこか自分という人間をプンプンに感情移入させていたからだと思う。そういう人間は少なくないと思う。
プンプン=ぼくたち、なのだ。
特徴のある絵柄、キャラデザイン
『おやすみプンプン』の主人公。プンプンのデザインはかなり個性的だ。
ただしこれはあくまでプンプンの思う自己的なイメージであって、もちろんその世界でプンプンは普通に普通の見た目をしているのだけれど(むしろイケメン説まである)、その鳥みたいなデフォルメされたデザインと、写実的な背景が妙にマッチしていて、今っぽくて、すごいオシャレだ。
他のキャラクターたちも基本的には写実的に描かれているのだけれど、時折漫画的な表現が爆発する時があって、その不意なギャップにぼくは驚かされてしまう。
たとえ絶望しても、人生は続く
プンプンはいつも絶望している。
子供の時も、大人になってからも。
しかしそれでも当たり前のように、プンプンの人生は続いていく。続いていくうちに、少しずつ人生が良い方向に進み始まることもある。
今辛かったとしても、生きてさえいればきっといいことがある、だから大丈夫。
そんなことをぼくは『おやすみプンプン』に教わった。