のむラリアット!

こんぱる&ふじしまペポ / 著

『のむラリアット!』プロレスの世界を楽しむ理由は3カウントで充分だ!

のむラリアット!』は双子の姉妹・みるくが女子プロレス部で送る青春の物語が描かれた作品です。「まんがタイムきららMAX」にて、こんぱる先生とふじしまペポ先生のタッグにより描かれています。

テーマはプロレス。技と技をぶつけ合い、ときには凶器(パイプ椅子やチェーンなど)が登場することもある格闘技です。

恥ずかしながら筆者はプロレスに対して、怖い世界だ、という先入観を持っていました。しかし、それは本作を読む前の話。プロレスに詳しくなくても楽しめる魅力が、本作に詰め込まれていました。

1COUNT:コメディで優しく包まれた世界

まず筆者を安心させてくれたのは物語の世界観。作品は、終始コメディ調で描かれていました。

その中心にいるのは双子の桃。彼女は部活動で爽やかな汗を流したいみるくと対照的に、カワイイ女の子しか眼中にありません。ついには「ヘンタイ」とみるくに言われてしまうほど、女の子への強い愛はブレないのです。ちょっと心配になりました。

しかしそんな調子の彼女がいたからこそ、プロレスの怖そうなイメージが見事に中和されています。

おかげで、筆者が心配していたような恐ろしさは全く感じられませんでした。15ページも読み進めれば、桃が強めのビンタを浴びせられて血を吐いていたって、心穏やかでいられるほどポップに世界が描かれています。

2COUNT:何でもいいわけじゃない

コメディ調で話が進められる本作。それでもどこかに熱い気持ちを抱えたまま読み進められた理由は、「熱中できる何かへの憧れ」にありました。

みるくは部活動に打ち込んでみたい女の子。その理由について、1つのスポーツに打ち込んでいる人に対して「羨ましいんだ…」と語っています。輝きたい。その願いは、適当な気持ちで決めた部活動では叶えられないことも予感していました。

きっと 夢中になれる事って 何でも良くて 何でもじゃダメなんだ

引用元:『のむラリアット!』第1巻より

偶然出会った女子プロレスという未知の世界で、みるくは「これじゃなきゃダメだ」と思えるようになるのか。そんな風に彼女の成長を考えながら読み進めているうちに筆者が、プロレスの世界っていいのかも、という考えに変わっていたことに気づきました。

3COUNT:試合はやっぱりアツい!

第1巻の終盤になると、みるくと桃は練習試合に参加します。対戦相手は都内トップ4の実力を誇る宿新高校。みるくと桃にとって、はじめての団体戦です。

ほとんど素人の彼女たち。にもかかわらず、もしかすると格上相手に黒星を挙げてしまうのでは…?という展開は、コメディ作品であることを忘れさせるほど、アツい。先輩たちの解説のおかげで、知識がない筆者でも試合展開が感覚的に分かります。

みるくたちの試合を眺める自分に対して、格闘ゲームを観戦しているようだ、と思いました。

友達の家に遊びに行ったとき、先に着いていたメンバーがプレイしている格闘ゲーム。自分はやったことがないタイトルでも、体力ゲージの減り方や素早いキャラクター操作の技術力は伝わってくる。そんな感覚です。

宿新高校との試合が始まるあたりで、パワーやスタミナなどのステータスがグラフになって各選手の顔写真と共に描かれているページがありました。ここも格闘ゲームのキャラクター選択場面に似ています。ゲーム感覚でプロレスを楽しんでほしいという配慮なのかな、と想像が膨らみました。

最初はプロレスの世界に怯えるばかりだった筆者。1巻を読み終える頃には、すっかりプロレスの世界を楽しんでいました。

格闘技の見え方が変わる

見事、スリーカウントでプロレスの魅力に感服してしまいました。

本作を、プロレスだからと思って遠ざけてしまうのはもったいない。筆者にとって自分が知らない世界を描いた作品でしたが、大いに楽しんでしまいました。もしかすると、アナタにとっても「夢中になれる1冊」になるかもしれませんよ!

ラリアットは受け手の技術も大切です!

のむラリアット! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
こんぱる&ふじしまペポ/著