月刊アフターヌーンで2013年3月号から始まった『インハンド』が、2020年11月24日発売のイブニング24号で遂に最終回を迎えることとなりました。
本日発売のイブニングに『インハンド』第38話が掲載されております。掲載の最後に記載していただいた通り、今回+2回で『インハンド』は最終話を迎えます。最後までよろしくお願いします! pic.twitter.com/lCL4fIs8fV— 朱戸アオ「インハンド」連載中 (@acatoao) October 27, 2020
この作品を、2019年に山下智久さん主演でドラマ化されたことで知った方も多いのではないでしょうか?原作のイメージをそのまま実写化したような見事なキャスティングと、原作にはないストーリー展開も多く、原作を知っている人も楽しめる作品でした。
本記事では、『インハンド』最終回に向けて、名言を振り返りながら、朱戸アオ先生の作品を楽しむポイントを筆者なりに解説します。
プロフェッショナルな3人。彼らのコンビネーションが秀逸
変わり者でドSな主人公・紐倉 哲(ひもくら てつ)と、その紐倉にふりまわされるお人好しの助手・高家 春馬(たかいえ はるま)、そして仕事に一生懸命な依頼者・牧野巴(まきの ともえ)。この3人は、専門用語を巧みに操り、知識だけでなく雑学も豊富な切れ者揃いです。
彼らは正に「プロフェッショナル」※1と呼ぶにふさわしい、同じ分野の人からすれば尊敬の対象となるような専門家。…のハズなのに、それを感じさせない変人っぷりを隠すことなく飄々と生きる紐倉、その紐倉にいじられつつも、さらりと難題をやりのける高家、そしてこの2人にしか解決できないような事件へ巻き込む牧野。彼らのコントのような会話でお堅い話が分かりやすく、読みやすくなっています。
この一見遊んでいるような言葉の掛け合いが、物語を深く深く掘り下げていきます。
名言を振り返る!
自己中心的で、寄生虫のことしか考えていないように見える紐倉が、時折見せる人道的な一面は、科学者としての性(サガ)がそうさせるのでしょうか。
紐倉自身も研究者として常に超えてはいけない一線がどこなのかを探りながら、あくなき探究心と折り合いをつけているのかもしれません。紐倉の言葉は自戒の念を込めて発しているのだと思います。
システムで人の弱さをおぎなうなんて わかりにくいんだよ 罪には罰を!のほうがわかりやすい 僕らは感情の奴隷だ 僕も 君ですら でも・・・それだけじゃダメなんだ
起こり得る悲劇、身近でリアルな原因
原因となる病原菌やウィルス、寄生虫はどれも実在します。
感染症に限らず、ドーピングや、遺伝子組み換え、中毒症状のある食品など、扱うテーマはとても身近で聞いたことがあるものばかり。詳しくはわからなくても、日々医療機関で処方される薬やワクチンが活用されている事実。そして今では一般的になった遺伝子組み換え技術を違法に操作することで起こる神の手のようなメリットと、想定できない悪魔の仕業のようなデメリット。これらをさらりと紹介しつつ、謎解きミステリーの要素として活かしているところもポイントです。※2
物語のラストは、紐倉とかつての友人・入谷 廻(いりや かい)との過去、そして失った右腕の経緯に迫っています。入谷とのエピソードはドラマでも出てきましたが、全く違うアプローチから展開するラストが見逃せません!
『インハンド』は、医療マンガなのに病院が出てこない、そして謎解きミステリーの要素もある、新しい切り口の作品です。医療関係者でなくても置いてきぼりにならないわかりやすい解説に、丁寧に組み立てられたトリック的な仕掛け。エピソード一つ一つに多大な時間をかけられて連載にあたられていたことは、毎巻最後のページに記される参考文献の多さやその専門性の高さからうかがい知ることができます。
大変な思いをして連載を続けていらっしゃった朱戸アオ先生渾身のラストを見届けましょう!そして、朱戸アオ先生お疲れ様でした!