長い人生の中で約30年に一度訪れると言われている”サターンリターン”。西洋占星術では土星回帰とも呼ばれ人生において大きな転機がやってくると言い伝えられています。
そんな節目に自分の「死」を予告し、宣言通り自死する一人の青年・アオイ...。彼の死を巡り、それぞれの喪失と再生を描く鳥飼茜先生の衝撃的な最新作『サターンリターン』をご紹介します。
その人生は誰のもの?
かつては「午睡の国」で小説家として名を馳せた理津子。以降、小説が書けず今では半休業の状態で元担当の夫・史くんと過ごす毎日。一般的な幸せを手に入れたように見える理津子ですが、どこか噛み合わない史くんとの生活に時折心のざらつきを感じています。
そんな時、彼女の夢の中にかつての恋人アオイが現れます。
アオイは何故か若い時から30歳になるまでに死ぬと宣言していました。そんな彼が突然夢の中に現れて理津子にこう尋ねるのです。
・・・目が覚めた後、理津子のもとに入ってきたのはアオイの訃報。宣言通りアオイは亡くなってしまったのです。
アオイの死と真相を巡る
亡くなったアオイは理津子にとってただの元恋人ではなく、彼女の代表作である「午睡の国」を語る上で欠かせない人物。
理津子はかつて、アオイから自分の人生の証拠を小説で残してほしいとお願いされていて、そうして生まれた作品が「午睡の国」でした。
アオイの訃報を受け取った矢先、若手の文芸編集員・小出が理津子の担当につきます。ちょっぴり抜けているが独特の勘の鋭さを持つ小出は「午睡の国」をきっかけに、理津子に興味を持ち、ともにアオイの死の真相を探ることに...。
アオイの死の真相を追う最中、時折見せる理津子の不敵な笑みや彼女の過去。そしてアオイの死に近づくほどに生まれる新たな謎。
ミステリアスで終始不穏な空気が漂う『サターンリターン』、それぞれの喪失や絶望の先に何が待ち受けているのでしょうか。
心えぐる一コマ
絶望や悲しみ、不敵な笑い...。
繊細に描かれた登場人物の表情に思わず引き込まれ頭から離れません。
ですが、それ以上に印象に残るのは作中に登場する”心えぐる一コマ”。
アオイの死について語る理津子。
一番辛いのは相手を失う瞬間はなく、その後の心の”喪失”が一番自分を苦しめるのだと感じさせる一コマです。
相手により内面の話を聞き出したい時はどうしたら良い?という問いに対する答え。人付き合いにおける真理をついています。
当時死にたがっていたアオイについて回顧しながら話す理津子。なんだか恋愛に置き換えても通ずる考えですね。
喪失の先に待ち受けるものとは
『サターンリターン』は現在2巻まで発売されており、1巻はサターンイエローと名付けられた黄色の表紙が目印です。
6/28、私の年明けからの連載「サターンリターン」第1巻発売です。連載時から史上最大に加筆修正しています。描いていくうちにどんどん深みにはまってます。生きるって失っていくばかりね。ちなみにこの黄色はサターンイエローという色なのです。よろしくお願いします! pic.twitter.com/AV78XatSJP— 鳥飼茜 (@torikaiakane) June 27, 2019
喪失を埋めていくかのようにアオイの死の真相に迫る理津子たち。その先にあるのは希望か絶望か...ぜひ見届けてください。
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