ヒナまつり

大武政夫/著

『ヒナまつり』に癒される やる気ゼロ超能力少女とインテリヤクザの予測不可な日常       

ヒナまつり』は、大武政夫先生により2010年6月から連載をスタートしたマンガ。超マイペースな超能力少女が生真面目インテリヤクザを振り回しに振り回し、あまりにもゆるすぎる結果オーライな日々が、「あー、人ってほんとにそれぞれで、みんな愛おしいなぁ」と癒されまくります。

異常な世話焼き体質・新田の器の大きさに癒される

あなたは自分の家の中に突然、2メートル大の楕円型の物体(表面から人間の顔が見えている)が現れたらどうしますか?

僕なら逃げるし、誰かに連絡を取るし、まず警察に連絡します。

でも若手ヤクザの新田はどんな行動を取るかというと…。少し考えて、それから何も見なかったことにして一旦寝ます。

楕円の物体から現れたのは、超能力者のヒナ。新田は超能力で脅されつつも、ズボラでマイペースなヒナについつい天性の世話焼き体質を発揮させてしまいます。ヒナはそんな彼を超能力を悪用しようと近づいてくる大人とは違うと判断し、次第に信頼していきます。

問題が可視化されるまではスルーできる胆力、超常現象にも適応して世話を焼く優しさ(という名の諦め?)に癒されます。

シリアスな展開も感動の展開も、全てゆるい着地で癒される

ベースとなる出来事は、「ヤクザの抗争」「ホームレスと少女の心の触れ合い」「企業案件のコンペ対決」など、普通の物語なら、スリルや感動、学びなどがありそうですが『ヒナまつり』では全てゆるく着地するのがとても素敵。堅苦しくなくて、心が解放されます。

登場人物の大らかな、ある種後先を何も考えていないところにとても癒されてしまいます。

様々厄介ごとに巻き込まれる新田も、ヒナの超能力で最終的には結果オーライでヤクザ街道を出世コースで歩みますし、物語は常にノンストレスです。

全ての問題を乗り越える三嶋瞳の才能に癒される

ヒナと新田を中心に展開される物語ですが、他の登場人物の充実度も素晴らしいです。

特に、ヒナの同級生である三嶋瞳(みしまひとみ)には脱帽です。

女子中学生ながら、頼まれごとを断れない性質を利用されて急にBARで働かされたり、英語学習の留学に行ったら殺し屋の訓練をさせられたり、依頼された仕事を断れずに全てこなしていたら社長になっていたり…。

様々な問題が起こるたびにその才能を開花させていき、誰もが欲している富、名声を手に入れ、次々と成功を自分のものにしていきます。その、あらゆることに巻き込まれていく運の悪さと、望んでないのに発揮してしまうハイスペックな仕事スキルで様々な問題を乗り越えていく様はとても爽快です。

しかし、大武先生も言っていますが「自分が本当に欲するモノは何一つ手に入らないタイプ」と作中一の報われなさも必見です。ほんとに笑えるくらい報われません。幸せって何なのだろうかと、ふと考えさせられます。

連載から10年、堂々の完結

『ヒナまつり』は連載から10年の今年2020年に完結しています。日常系マンガとしては珍しく物語に時間経過があり、伏線を回収しながらフィナーレを迎えます。

笑って泣けて、スカッとする。大らかな『ヒナまつり』の人々に、ぜひ一度癒されてみてください。

大団円をその眼に焼き付けよう!

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