『ファッション‼︎』一番怖いのはやっぱり人間！ファッション業界を舞台に送る最恐ヒューマンホラー！

前作『ダルちゃん』が芥川賞や直木賞より売れると話題の文学賞「新井賞」を受賞したはるな檸檬先生による最新単行本『ファッション‼︎』が2021年9月22日に発売されました！

タイトルからわかるように本作はファッションにまつわるマンガです。しかしその本質は人間の恐ろしさをこれでもかと描いた作品なのです！

目指せファッションショー開催！しかし問題は山積み！

主人公はマンガ家、新道桜子（しんどうさくらこ）。観劇が趣味でギャグマンガやエッセイマンガを描いているという、先生ご自身をモチーフにしているといっていいキャラでしょう。そして物語を大きく動かしていくのがその夫、新道開（しんどうかい）です。

開はファッションを愛し、ファッションに魅了され、ファッションに関わるいろんな仕事をやってきました。現在のメインの仕事は電飾ですが、ファッションショーや展示会などにも足しげく通い、洋服のことだけでなく業界のことやそのやり方にも詳しいガチのファッションオタクです。

ある日、開は友人と行った展示会でジャンと出会います。そして今どきの若者にしては珍しい、熱く真摯な洋服に対する心意気に胸を打たれます。そんなタイミングでジャンは東京コレクションの支援枠の審査に受かり、大舞台でファッションショーを行う権利を得ました。そしてその大舞台の演出を開にやってほしいと頼んできたのです。

熱意があるのもわかるし応援したい気持ちはある。一方で自分にだって仕事があるし目に見えるだけでも困難は山のようにあります。一度はあきらめようとしますが、結局はそんなすべての関門を受けいれ、開は演出を引き受けることにするのです。

しかしそれこそが地獄への第一歩だったのでした。

ファッション業界を舞台にした最恐のヒューマンホラー

『ファッション‼︎』では大きなファッションショーを開くためになにが必要なのか、どんな点に気をつけなければならないのかなど、かなり詳細に描かれており、もはやお仕事マンガと言ってもいい濃厚さがあります。しかし本作は単にお仕事マンガで終わることなく、主眼として描かれるのはむしろ人間という生き物の恐ろしさなのです。

大掛かりなイベントになればなるほど関わってくる人の数も多くなります。資金も必要になります。誰かが有志で動くにしても、その人だって生活をしていかなければなりません。特に無名の状態で行動するのであれば、勝算の高くないツテであっても何本も掛けあって、とにかく形にしてかなければなりません。頼れるものは熱意と誠実さと培ったセンスだけ。そんなギリギリの状態自体は仕方のないことです。

しかしもし仮に、頼れると思っていたはずのモノでさえまったく頼ることができなかったとしたらどうでしょうか。熱意も誠実さに加えて、そのセンスさえも「ファッション」に過ぎなかったとしたら。はたしてそんな状態で大掛かりなイベントを成功させることなどできるでしょうか。

ショーの準備が進むほどに周りを巻きこみ大きくなり、いつしかもう戻れないところにまで進んでゆきます。並行してその足元を支えていたはずの信頼自体がじわじわと揺らいでゆくのです。

まるで断頭台に向けてゆっくりと歩み寄っていくかのようで、読んでいるこちらの胃がキリキリと痛んできます。これがホラーでなければなにがホラーなのかと思わずにはいられません。お化けも怪物も出てきませんが、この新しい恐怖の形にぜひ注目してください！

『ファッション!!』は「文春オンライン」及び「週刊文春WOMAN」で同時連載中

『ファッション‼︎』は「文春オンライン」及び「週刊文春WOMAN」で同時連載中です。単行本の続きもWEBでは「文集オンライン」の該当ページから読むことができます。

はたしてファッションショーはどうなってしまうのか。開と桜子の生活は大丈夫なのか。不穏な想像が尽きませんが、なにかを作り上げることや人間関係を広げることの恐ろしさはどこにでも転がっているものです。『ファッション‼︎』はそんなときのための転ばぬ先の杖になってくれるかもしれません。

第1話の試し読みはこちらからどうぞ。

「ジャンルは違えど分かり合える俺たち」オタクな私がオタクな夫と結婚してみた | 文春オンライン

『ダルちゃん』や『ZUCCAxZUCA(ヅッカヅカ)』のはるな檸檬さん最新作は、ファッション業界を舞台に「見せかけの人たち」を描くヒューマンホラー。（第1話前編です／後編を読む）発売中の「週刊文春WO

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最後になりましたが、はるな檸檬先生によるとタイトルはぜひレディー・ガガの曲「Fashion!」の第1声の発音で読んで頂きたいとのことですので、今後積極的に使っていきたいと思います！