九条の大罪

真鍋昌平/著

『九条の大罪』第3巻レビュー!法律とそれを駆使する弁護士から描き出される、人間の闇 

時に人は、自分が設定した枠の中であれば、いくらでも冷酷無比になれてしまう。

悲惨が過ぎて、知りたくないけれどもうやめられない。ドロドロの欲望、弱い人間の哀れさ、そこにつけこむ悪や権力のむごさを描いた九条の大罪第3巻が2021年8月30日に発売されました。

神か悪魔か⁉弁護士がアンダーグラウンドな世界を往く『九条の大罪』とは

『九条の大罪』は、国民的ダークヒーロー漫画『闇金ウシジマくん』の著者、真鍋昌平先生が描く、弁護士・九条を主人公とした法とモラルのダークな部分を描いた人間ドラマで、「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて連載されています。

なぜか厄介な案件ばかりを引き受ける弁護士・九条間人(くじょうたいざ)は、鼻炎持ちのバツイチで、ビルの屋上でテント生活をしている偏屈な弁護士。主な顧客は、半グレ、ヤクザ、前科持ちなど、きな臭い人だらけ。ネットでは悪徳弁護士と罵られながらも、イソ弁(居候弁護士)の烏丸(からすま)と共に、依頼人の擁護に務めています。

ある日、飲酒して轢き逃げをした半グレが、先輩の壬生(みぶ)に連れられて、九条のもとを訪ねてきます。依頼人の利益を優先する九条が授けた策は、弁護士にはあるまじき内容で・・・。

常識が簡単にひっくり返り、きれいごとでは済まされない日本の国家と社会の真実を目の当たりにする準備はできましたか?これまでの価値観や倫理観がぐらぐらと揺らぎだす、そんな作品です。

法律は人の権利は守ってくれるが、命までは守れない

倫理観や道徳で動かず「依頼人」を最優先する九条は、どう見ても諸悪の根源は別にあり、依頼人が権利を主張できる場面であっても、その主張が依頼人の人生においてどういう意味を持つのかまで先回りして弁護する「腕のいい弁護士」です。

法律の世界では、知らなければ損をするし、その場限りの主張でその時は気持ちは晴れても、結果的に不利益を被ることもあるという「リアル」に拘ったストーリ展開に、刑務所の人たちから「あの弁護士(九条)はいい」※1と言われているほど。

社会のきしみを徹底的な当事者取材に基づいて描かれたエピソードは、読者の心を掻き乱し、知らなかった現実を突きつけてきます。

※1 文春オンライン 著者インタビューより

大どんでん返しが連発する第3巻!

第2巻から続いている相続をめぐる親子の愛憎物語と九条の恩師との対決は、意外にも感涙を呼ぶラスト!「家族の距離」

自死を選んだ人の背景に想いを馳せる「死者の心境」そして裏で手を引く半グレ壬生の不可解な行動が今後どう展開していくのか⁉

そして4巻へ続く、壬生が関わる暴力団との綱渡りのような応酬が続く「強者の道理」

正義も悪も入り混じり渋滞を起こしている『九条の大罪』。人はどこまで非情になれるのか、しかしその非道徳で無情な一面は現代社会の様々な歪みが生み出した副産物であり一部なのかもしれません。

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無知は罪

九条の大罪 (全3巻) Kindle版