光の箱

衿沢世衣子/著

『光の箱』ハザマにあるコンビニは自分に最も必要なモノを問いかける

衿沢世衣子(えりさわ せいこ)先生の『光の箱』は、この世とあの世のハザマに存在するコンビニを舞台にしたオムニバス作品です。このコンビニで働くのは死にかけた人間と魔人で、訪れるのは人でない常連と死にかけた人たち。暗闇の中で光るコンビニで人々はいったい何を買い求めるのでしょうか。

このマンガがすごい!2021 オンナ編(宝島社)では、19位にランクインしている注目作です。

死ぬか延命のために働くかの選択

バイトのコクラは、事故で死にかけたところで、コンビニ店長に「このまま死ぬか」「労働するか」という選択を迫られ、コンビニで働くことを選択しました。

コンビニの外はいつも真っ暗で、一緒に働く店員のタヒニは魔人です。生死をさまよう人々はここで好きなものを買い、現世に戻ったりあの世に旅だったりします。

魔の延命を受けたことで、コクラの体は回復力や聴力が良くなるなど身体能力が異常に高まりました。さらに体には人ではなくなった証なのか、ひらがなで「ま」のタトゥーが刻まれています。しかし、コンビニバイトの時給はそこそこ良く、日中は前と同じように暮らせていました。

働きすぎの女性が取り戻したもの

ある時、コンビニを訪れたのは働きすぎの女性でした。メールは5分以内の返信が必須、帰宅してもすぐ呼び出され、女性は栄養ドリンクを飲みながら睡眠もとらずに働き続けていました。ところが、急いで会計して会社に向かわなければならないのに、レジは混みあっているし、店員の一人は客を無視して外の掃除をつづけています。

苛立った女性の前に現れたのは奇怪な生き物でした。生き物に襲われてる時でさえ、「会社に戻れなかった理由を証明しないと」と焦っていた女性は、コンビニを出る頃には、自分に必要なモノを思い出していたのです。

コンビニが象徴しているもの

別の日にやってきたのは、決断力が足りないユウトです。ユウトはコクラに、妹に渡すお菓子を選んで欲しいと頼みますが、逆に妹が好きなものは何かと聞き返されてしまいます。妹の好みが思い出せないでいるユウトに、「急いで決めないと妹さんは闇に飲まれますよ」と警告するコクラ。

この世とあの世のハザマに建つコンビニは、いったい何のために存在するのでしょうか。

コンビニに行けば必要なものは何でも揃います。お金も下せるし、コピーもできるし、郵便だって送れます。24時間営業のところも多く、コンビニがあれば欲しいものはいつでも手に入りますよね。ですが、自分にとって本当に必要なモノを、私たちは自分で分かっているでしょうか。

あの世の近くまで追い詰められた人々は、コンビニに立ち寄ることで、自分が欲しかったものは何か問いかけられ、必要なものを取り戻すことで死の際から救われているのかもしれません。

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裏表紙も忘れずチェック!

単行本の表紙を外すと、エピソードごとに買われたもののレシートが描かれています。レシートにはハザマ税8%の記載も。ほかに雇えないと言われたはずのヤミネコがストアロゴに紛れ込んでいたり、USACAポイントが還元されるらしい表記があったり、遊び心もいっぱい。ぜひ裏表紙もチェックしてみてください!

光の箱 (flowers コミックス)
衿沢世衣子/著