映像研には手を出すな!のあらすじ
実際には存在しないどこかの街、そんな街はないのにこんな街があるといいな、とわたしたちが妄想する街。舞台の芝浜高校はそんな街にあった。
「この高校を舞台にアニメを作りたい」。経緯不明の高低差とその階段、水上に建てられかつ増改築を重ねダンジョン化した校舎、おたく心をくすぐるばかりの高校に入学した浅草みどりの気持ちは踊る。
浅草氏は友達の金森さやかを誘いアニメ研の見学に行き、そこでアニメーターになる夢を持つカリスマ読者モデル水崎ツバメと出会う。3人は意気投合し打ち解ける中で垣間見えた「最強の、世界」を作り上げるためにアニメ制作を決意するのであった。
アニメーションを観るあなたへ、自分のイマジネーションを誰かに見て貰いたいあなたへ。人と人がその才能を重ねて何かを成し遂げる、そんなものづくりを愛する人々と、ものづくりをリスペクトする人々の物語!
第一巻のあらすじ
増改築を繰り返しカオスな建物になった芝浜高校に進学した、設定から入る未完の演出家・浅草みどりと幼い頃からお金に厳しいプロデューサー気質の金森さやかが、アニメーター志望の読モ・水崎ツバメと出会う。妄想を駆り立てられる舞台とすげぇ仲間達!今、最強の世界を目指す映像研の戦いは始まった!
第二巻のあらすじ
ついに映像研に新作アニメ制作の依頼が届く!それは100年以上の歴史を誇るロボット研からのPR動画の発注だった。ロボットのリアリティって?現実とロマンの間で揺れるロボット研と映像研の面々。その回答は…!
第三巻のあらすじ
アニメに絶対必要なものは何だ!? 今、映像研に欠けているモノは何だ!その絵をよりリアルにして、その動きにより意味を持たせる必殺の秘密兵器を持つ第四のメンバーが登場!冒険の準備はいよいよ整った!
第四巻のあらすじ
冬休みに浅草氏と水崎氏が旅だったのは久栗。そこにはたぬきの宝物伝説があった!その埋蔵金を探すうち、浅草氏の脳内に湧き上がる新作のインスピレーション。今度の新作のキーワードは、映像研が手掛けていなかった「ストーリー」! 物語があるからこそ見る人に何かが伝わるんだ!
誰が描いたの?
デビュー作にして最高傑作を生み出した大童澄瞳(おおわらすみと)先生。映画部に所属し、絵画科を卒業し、アニメーションを独学で制作しメジャー出版社でマンガを描く。様々な画像映像エンターテインメントに触れてきた経験があるからこそ「映像研には手を出すな!」の面白さは本物なんです。
連載開始から1年後には、東京ニュース通信社のTV Bros.が主催するマンガ賞「ブロスコミックアワード2017」で大賞を受賞。そして2020年、満を持してのアニメ化!ビッグウェーブ、キテます!
TVアニメ「映像研に手をだすな!」公式サイト http://eizouken-anime.com
イースターエッグと名台詞を見つけよう!
芝浜高校
水と一体化した建築物、複雑な内部構造。宮崎駿監督の「ルパン三世 カリオストロの城」のカリオストロ公国、「千と千尋の神隠し」の油屋をリスペクトしたかのような秘密基地感に満ちた舞台となっています。それは街全体にも言え、いつもと違う道へ一歩踏み出すと、そこには冒険の舞台が待っているのです。
昔、子供の頃、道路の白線の上から足を踏み外したら死ぬ、という妄想、遠くに見えるあの山の地下には巨大な宇宙船が格納されいるんだという夢、渋滞で進まないバスからメカの脚が生えて前の邪魔な車を踏み潰しながら進み出すなんて願望。
わたしたちも昔は、浅草氏の脳内でポンポンと湧き上がるイマジネーションの世界の住民でした。そんなワンダーな世界に芝浜高校があって、そこに映像研はあります。
「面白くなってきやがった」
逃げる水崎氏と追うGHQ。それを目撃した浅草氏の台詞。これはもう言わずと知れた宮崎駿氏の監督デビュー作「ルパン三世 カリオストロの城」の冒頭、衛兵とクラリスのカーチェイスに巻き込まれた次元大介の名台詞へのオマージュに違いありません。
同じ追いかけっこと、重要なキャラクターの登場と合流をあらわすにはもってこいの台詞です。
「3人ならできる!」
水崎氏のメカに浅草氏の妄想設定が加わって完成した「汎用有人飛行ポッド・カイリー号」に乗り込み初めてイマジネーションの世界に飛び立った3人。そこで発する金森氏の名台詞です。
いつもはクールで物静かな金森氏が眼光鋭く発するこの言葉こそ、名プロデューサーがここに輝かしい未来を垣間見た、その証かもしれません。
動画机を手に入れた映像研の面々が発見したカセットテープ
「1974年10月6…宇宙…ト」これは同日に放送開始された宇宙戦艦ヤマト第一回放送分を、テレビの前に正座してラジカセで録音したものと推測されます。
テレビのスピーカーの前にラジカセを置いて正座して、放送開始と同時に録音ON!つばを飲む事さえ許されない厳しい30分間の始まりです。
「健介、あんた何してんの!?」「お母さん!静かにして!!」
宇宙戦艦ヤマトのオープニングを堂々と謳い上げるささきいさおの声に、おかんの声どころかおかんに怒る健介の声さえ被さって台無しになったあの頃。今で例えると、踊ってみたの配信中におかんが部屋に入ってくるといった感じですよね。おかんはいつだってハプニングのトリガーです。
単に記録という点では、ただただHDDにアニメを記録し続ける今と何も変わっていないかもしれません。45年経ってなお、おたくの習性は収集なのです!
動画机の上に置かれているラジオ
それはジャイロアンテナがそそるヘビーディーティーデザインも魅力のナショナル・クーガNo.7。遙か海の向こうから流れてくるBCL放送を聞いてベリカードを手に入れる、それはおたくの趣味、収集癖の始まりだったのかもしれません。
動画マンの一日は夜に始まります。コンビニもスタバももちろんインターネットも無い時代。深夜、癒やしてくれるのはノイズ混じりのラジオ放送だったのです。
「出るんだよ私の世界では」
妄想の世界の中で団地に穴を開けて滝を作ろうとする浅草氏に問い掛ける金森氏の言葉への返事です。これは、宇宙空間なのに爆発音するのって変じゃないすか?という問いに対して「俺の宇宙では出るんだよ」とスター・ウォーズの父ジョージ・ルーカスがそう答えたというフォークロアのインスパイアです。
最近のファンは理屈っぽくなってきました。理詰めな世界を追い求めると、ややもすれば本当に大事なものがすっぽりと抜け落ちることだってあります。それが今や死語に近くなった「センス・オブ・ワンダー」です。
最近だとアカデミー賞を総なめにしたアルフォンソ・キュアロン監督の「グラビティ(邦題ゼロ・グラビティ)」へのNASAやマスコミからの難癖も、フレディ・マーキュリー堂々の凱旋だった「ボヘミアン・ラプソディ」に対しての時系列への非難もと、エンターテインメントとノンフィクションの区別が付かずにお小言を言うリアリティ原理主義者は一定数存在します。
作品を作る上で、人の心を揺さぶる上で大切な事の一つに「ウソのリアリティ」があります。「映像研には手を出すな!」が評価されるのは、その「ウソのリアリティ」の素敵な存在理由を丁寧に、そして詳細に語ってくれるところでもあります。
ガンダムの宇宙で爆発音が聞こえるのも、スター・ウォーズの宇宙空間に空気遠近法があるのも、全部大事なことでした。
様々な表現手段を知る大童澄瞳先生だからこそ伝えられるその意味。どうすれば面白くなるのかを知った者だけが知る、ワクワクの為に構築された世界の作り方なのです。
登場人物紹介
浅草みどり
「広い世界を大冒険したい」その思いに突き動かされ絵を描いている。そのいつかはと夢見る広い世界=「最強の世界」を描く為に常に鋭い観察眼で世界を見つめ、その度に空想は広がっている。無類の設定好き。役割は監督、設定。天才が故に人に理解されないこともあるが、仲間に助けられている。会話が苦手なコミ障の江戸っ子。宮崎駿、高畑勲、庵野秀明タイプ。
金森さやか
森羅万象をロジカルに思考しマネタイズに繋げる。アニメーションに理解があるわけではなく、商材として可能性を見出している。そして浅草と水崎の才能を優れた商材として認め、確信している。役割はプロデューサー。煌めく才能を世に出し現金化する天才、鈴木敏夫、石川光久、庵野秀明タイプ。
水崎ツバメ
ずばぬけた観察眼、そしてそれを紙に的確に描き起こす才能を授かった少女。読者モデルとしての自らの立場を自慢せず、アニメーターになりたいという夢を抱く、世界中のアニメーターを目指す少年の心の癒やし。役割は(天才超絶)作画、近藤喜文、大塚康生、庵野秀明タイプ。
「映像研には手を出すな!」に手を出そう!
映像を愛し、映像を作る人をリスペクトする。ページをめくる度に押し寄せてくるこの気持ち。マンガとアニメが好きで本当に良かった…。
アニメはマーチャンダイジングの呪縛から解き放たれるNHKでオンエア!受信料を払うタイミング、ついに到来だ!
「映像研には手を出すな!」に手を出そう!!
世界を注意深く見つめれば、そこには自分の心を駆り立てる未知の感動が待っているぞ!