呪い。それは、非物理的な手段で他の人に対して災厄や不幸をもたらす行為のことであり、大体が悪い意味として用いられます。けれど必ずしも「呪い」が人を不幸にするものとは限らない、時には誰かと結びつけたり予想だにしない未来へ導いてくれる、そんな希望ある呪いを描いた小西明日翔先生の『春の呪い』をご存知でしょうか?
恋人は死んだ妹の婚約者
物語は主人公・夏美が最愛の妹・春を病気で亡くすところから始まります。大好きな婚約者・冬吾を残し若くしてこの世を去ってしまった春。もともと家同士の政略結婚がきっかけで交際に発展した春と冬吾、春の死後はその代わりに夏美が付き合うことになります。
交際するにあたり夏美は冬吾にひとつ条件を出します。
それは、”春と二人で行った場所に自分を連れていく”というもの。
愛する妹を奪った憎き相手でもある冬吾と共に、春を追憶するデートを重ねる夏美。時が経つにつれて徐々に惹かれ合う夏美と冬吾ですが、そこにつきまとうのは「罪悪感」という名の呪い。
そんなある日、春が闘病生活中に残したと思われる日記を発見します。そこに記されていた言葉とは?そして、夏美、冬吾が春の死と向き合うことで見つけた答えとは?
呪いに囚われながらも前へ進む
奇しくも春、夏美、冬吾と季節が巡るかのような名前を持つ3人の登場人物たち。『春の呪い』に囚われもがきながらも前へ進もうとする登場人物をまとめました。
◯夏美
複雑な家庭環境下から妹の春と2人で生きていくことを夢見ていた夏美。その約束のために自分を犠牲にしてでも春に尽くす夏美の姿からは、姉妹愛を通り越した狂愛を感じます。“春のために”行動することで自分を保つ...。夏美は春へ依存することで自分の存在を証明していたのでしょうか。
◯冬吾
資産家に生まれ、イケメンで高学歴というハイスペックな冬吾。代々続く名家を継ぐために親に従い淡々と生きてきた彼ですが、夏美と付き合ってから自分で人生を選ぼうとする意思が芽生えたりと徐々に変わっていきます。
亡くなった春との婚約も親の希望からなるものでしたが、実はお見合いの時から春ではなく夏美に心惹かれていた...という衝撃的な事実も。
◯春
タイトルでもある『春の呪い』とは彼女のこと。その名の通り春のように朗らかなで優しい雰囲気をもつ彼女は、夏美とは対照的に女性らしく可愛い女の子。作品の鍵となる人物ですが、亡くなっているので過去の思い出や物語のモノローグとしてしか登場しません。彼女自身が本当はどう思っていたのか、今何を思うのかは誰にも分からないというところがこの作品を一層盛り上げます。
その呪いの先にあるのは希望か絶望か
『春の呪い』とは、一般的な意味の"呪い"のように夏美や冬吾に対して災厄や不幸をもたらすものだったのでしょうか?
夏美や冬吾は、罪悪感という名の呪いを抱えながらもがき苦しみます。ですが、皮肉にも春の死を通して、親に敷かれたレールを歩くだけだった自分が変化していくことを感じる冬吾や、自分のために生きるようになる夏美を見ていると決してそれは一般的な意味での呪いとは違うように思えるのです。
夏美と冬吾が囚われ続けている『春の呪い』、その先に見るのは一体何なのか。ぜひ、本編をご覧ください。
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