望郷太郎

山田芳裕/著

『望郷太郎』500年後の原始的世界で目覚めた男、太郎の故郷への遥かな旅

講談社のマンガ週刊誌「モーニング」で山田芳裕先生が描く『望郷太郎』。初期化された世界で全てを失った男・舞鶴太郎が、祖国への帰郷を生きがいに旅する壮大なストーリーです。

よくある転生物と侮るなかれ。家族も地位も全て失ったおっさんが主人公だからこそ、必死に生きる姿にはリアリティがあります。そんな『望郷太郎』の魅力とあらすじをご紹介します!

奮い立たせるのは故郷への想い

総合商社の7代目社長として働く太郎。ある時未曾有の大寒波が訪れ、太郎は自らの地位を使い家族と人口冬眠をすることに。しかし目覚めた時には500年経過。電気は通っておらず、妻と息子はミイラのように乾涸びて死んでいました。荒廃した景色が広がる世界で、太郎だけが生き残ってしまったのです。

太郎は絶望しますが、祖国日本に残した娘の安否が気になり生きる気力を取り戻します。「故郷へ帰る」という新たな生きがいを胸に、太郎の遥かな旅が始まります。

ビジネスマン太郎の生存戦略

一般的な身体能力の現代人・太郎が、狩猟と採取の原始的世界でどう生き抜くかは物語の見所です。

始めのうちはやはり苦戦します。スーツと革靴はボロボロになり、生水で腹を下し、動物を捕まえることも出来ず行き倒れに。運良く人に出会い助けてもらっても今度はペットのように扱われ、仲間として認めてもらえません。

しかし太郎は総合商社の支社長という経歴の持ち主。太郎は何度も窮地に陥るもビジネスマン時代の経験から機転を利かし、見事切り抜けます。

例えばある村で、太郎は自決を迫られます。しかし太郎はとっさに命乞いを成功させます。太郎には支社長時代に誘拐犯との交渉経験があったため、相手の欲しがるものを冷静に把握し、より良い条件を提示することで「殺すには惜しい」と思わせたのです。それどころかお金の力を使い、村同士の戦争も収めてしまいます…!

仕事柄お金の扱いに長けているうえ、元社長という立場だからか自然と人の心を捉え動かす手腕は見事なもの。始めは死にかけていたのが次第にスキルを発揮して活躍する様は、異世界転生モノにも通じる清々しい活躍ぶりです!

顔芸か?と思うほど濃い表情

先生の描くキャラクターの顔も『望郷太郎』を語る上で外せない魅力。

太い線で描かれた輪郭に、丹念に線を重ねて描かれたであろう陰影。目元のシワから耳の穴まで手抜かりなく描かれた線は、一本一本に魂が込もっているかのよう。線の重なり、緩急、流し方、それらが集約して生み出された力強い表情。キャラクターだけでなく纏う空気ごと喜怒哀楽が伝わってくる気がするのは私だけではないはず。コマを拡大するなりして是非、先生の筆致にご注目下さい…!

顔だけでなくシュールな絵面も必見です。

500年前に作られた物の使い道がわからないのだろうという事情は分かるのですが、シリアスシーンに唐突に混ぜてくるのが読者の笑いを誘います。先生、分かっててやってますよね…!?

まだ5巻?もう5巻?連載再開が待てない!

『望郷太郎』は壮大なストーリーを章ごとに区切って集中連載されるため、第6部は週刊「モーニング」2021年8月26日発売号より掲載。コミックス第5巻は2021年8月23日発売。

太郎の生き様に是非胸を熱くして下さい!

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