2024年に新しく発行される日本の1万円札の顔になる人物、日本資本主義の父・渋沢栄一。日本初の銀行である「第一国立銀行」（後の第一勧業銀行）を開業した人として有名です。
本記事では、渋沢栄一が徳川幕府最後の将軍、徳川慶喜の幕臣であったというもう一つの顔に焦点を当てながら、2021年8月30日に発売されたばかりの『栄一』第3巻のレビューをお届けします。
目次
- いま最も注目される日本史上の偉人渋沢栄一の生涯を描いた『 栄一 』
- 人生の分岐点ともいえるパリ万博への参加 波乱万丈のヨーロッパ編
- 大河ドラマ「青天を衝け」も見逃せない！
- 最終巻は2022年1月末発売予定！
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いま最も注目される日本史上の偉人渋沢栄一の生涯を描いた『栄一』
江戸、明治、大正、昭和。激動の時代の中で、 500以上の企業の設立に関わり、600以上の教育・社会事業に携わった 日本資本主義の父と呼ばれた偉人・渋沢栄一は、埼玉県深谷市に生まれ、豪農と言われる裕福な農家で育ちました。
農民時代に、能力のない武士たちの理不尽に耐えかねて、討幕を志し江戸に上がった栄一は、無謀とも言える夜討ちを決行する直前に仲間の弟に諭され、時期を改める形で思いとどまります。その後、攘夷運動が盛んな京都へ向かうも、時を同じくして勃発した八月十八日の政変※1により、攘夷運動そのものが下火になり、隠れながら生活しているところを徳川御三家の一つ、一橋家の側近、平岡円四郎に助けられます。
後に、渋沢栄一本人も、「不向見(むこうみず)の野蛮な考えであって、今から見ると、まことに笑うべき話」※2と語ったほど、当時の栄一は討幕に傾倒しており、開国を決断した幕府にも、国内に浸食してくる外国文化にも嫌悪感を持っていたと思われます。
そんな栄一が平岡円四郎との関わりをきっかけに慶喜に仕えたことは、自分の保身のためとはいえ、そうやすやす受け入れられるものではなかったでしょう。しかし、自身が尊敬する平岡円四郎が慕う慶喜に仕え、自分が必要と思う改革を推し進めていくことを快諾してもらうなど、自由に才覚を発揮できる環境で成果を上げることができた栄一は、徳川家というよりは慶喜個人に仕えていたようです。
※1 薩摩藩・会津藩を中心とする公武合体派が、長州藩ら尊王攘夷過激派を京都から追放した政変
※2 渋沢栄一と岩崎弥太郎－日本の資本主義を築いた両雄の経済哲学-（幻冬舎） より
人生の分岐点ともいえるパリ万博への参加 波乱万丈のヨーロッパ編
外国文化を嫌う栄一に突如下された慶喜からの命令。それは慶喜の弟、昭武（ありたけ）のパリ万博とフランス留学に随行することでした。第3巻では、栄一が西洋文化と近代経済に触れて、民間が国家事業のような大きな事業を担っていること（株式会社）、通貨の流通の仕組み（銀行）、商人の地位が高く、軍人と対等に渡り合っている様子を目の当たりにします。
もともと5年の計画だったヨーロッパ留学への随行も、大政奉還のニュースが栄一たちのもとに届き、予定を早めて日本に帰国することに。
第2巻の最後、徳川幕府を継ぎ、将軍となったばかりの慶喜に「なるべく自分から遠くにやってしまいたい」と言われた栄一。その意味は、もう長くはないと思った徳川幕府に仕えることが、栄一のためにならないとあえて行かせたことが見て取れます。
慶喜にとっても、大切な家臣であった栄一。将軍でなくなった後も、陰ながら栄一を守り※3、栄一もまた仕え続けると決心していた慶喜との関係は、思った以上に深いものであったようです。
※3 パリ万博へ随行し、2年間仕えた昭武が、帰国後も栄一を召し抱えたいと慶喜に要望していたが、「もし栄一が（昭武のいる）水戸へ行けば、水戸藩士たちは嫉妬し、栄一の身が危うくなるかもしれない。それに、栄一は我が藩にとっても必要な人間。だから水戸へいかせるわけにはいかない」と断っているというエピソードがあります。渋沢栄一と岩崎弥太郎－日本の資本主義を築いた両雄の経済哲学-（幻冬舎）より
大河ドラマ「青天を衝け」も見逃せない！
大河ドラマ「青天を衝け」9月12日に放送される第26回では、1867年に行われたパリ万博の後、大政奉還のニュースを聞き、急遽帰国した栄一が、家族そして主君である慶喜に謁見するところが放映されます。栄一と慶喜の関係性が一番よくわかるシーンだと思うので、是非大河ドラマの渋沢栄一もご覧ください！
久しぶりの草彅剛さん1ショット。帰国した篤太夫と慶喜が再会する日も近いかもしれません。お楽しみに。#青天を衝け#草彅剛#青天オフショット pic.twitter.com/qlkvoupFTH— 【公式】大河ドラマ「青天を衝け」 (@nhk_seiten) August 31, 2021
最終巻は2022年1月末発売予定！
大河ドラマに始まり大河ドラマに終わる。渋沢栄一イヤーともいえる2021年。本作品も大河ドラマと同じく年内に連載終了、最終巻は2022年1月末に発売予定となっています。
明治政府と共に新しい時代を切り拓く怒涛の展開が待ち受けている第4巻。栄一の年齢も明治2年、若干29歳の若さで日本における最初の株式会社を創業してから、91歳で生涯を終えるまでの約60年が1冊で語られます。まさに日本の資本主義の礎を作った渋沢栄一の生涯をこの目で確かめましょう！
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