『町田くんの世界』とは
『町田くんの世界』という作品は、別冊マーガレットで連載をしていた少女マンガです。「町田くん」というのは本作の主人公で、少女マンガとしては珍しく、見た目はメガネでモブキャラな男子高校生です。
防犯カメラ、駅の改札、インターネットのログインパスワードなど、現代の多くのものが性悪説によって成り立っている中、町田くんは性善説でこの世界を生きています。
悪い人間はいない。悪い行いというのはあるにしてもその行為には必ず理由があって、理由や言い訳を聞かせてほしい、というのが町田くんの持論なのです。
町田くんから学べることはたくさんあるのですが、私が最も心に響いた町田くんの価値観について、本記事ではご紹介したいと思います。
少し脱線
突然ですが「バーニングマン」というアメリカの祭りはご存知でしょうか。私は『町田くんの世界』を読んでバーニングマンの話を思い出しました。
それは、砂漠の真ん中に巨大な木の人形を立てて燃やす祭りで、それを中心にして何もない砂漠に自分で物を持ち込んで1週間生活する奇祭です。
Geordie Van Der Bosch's "Temple of Direction" burned, marking the culmination of our time together in Black Rock City. How are you starting this new year better, stronger, or more thankful than before? (Photo by @johncurley) pic.twitter.com/KIYt72acBj— Burning Man Project (@burningman) September 3, 2019
この祭りには重要なルールが1つあります。それは祭り期間中はお金のやり取りは一切禁止ということ。ただし物を与えるのはOK。つまり、現実の貨幣経済でなく贈与経済が祭り期間中に形成されます。
そんなことで成立するのかと思いきや、不思議なことにこのバーニングマンでは最も多く与えた者が最も利益を受けるのです。カラカラの砂漠で、持ち込んだ資源を失うことは一見すると無謀なことに見えるのですが、与えることによってその人の信用が溜まっていき、いろんな人から支持され結果的に豊かになれるという仕組みです。
バーニングマン的価値観
『町田くんの世界』を紹介する記事であるはずなのになぜこんな話をしたのかというと、このバーニングマンで大切にされている、与えることによって自分が豊かになるという価値観こそ、主人公の町田くんが体現しているものだからです。
何か欲しいものがあるなら、まずは自分が与えてから。本作を読み終わった後、町田くんから学んだこの価値観は、人間にモテるための裏技のように感じてしまいました。
町田くんはおとなしめの性格で、スポーツも勉強も苦手で要領も悪い。そんな彼ですが、クラスメイト、学校の先生、近所のママ友、自分の家族にまで、老若男女にモテまくる。理由は毎日与えているから。
好意、優しさ、気づかい、町田くんは人間が好きで自己犠牲をいとわないため、その結果としてあらゆる人からの好意のお返しが待っています。
心理学で言うところの返報性の原理というものであり、何かされたら返さないとなという心理が働いているのです。
もちろん作中で町田くんは「心理学にこういう原理があるから利用してみるか」というように狙ってやっているわけではないですが、異性・同性関係なく愛し愛される、これこそ理想的な人間関係ではないでしょうか。
7巻完結で読みやすいかと思うので、気になった方は是非とも手にとってみてください!