マンガの世界は無限の潜在力で溢れています。区切られたコマの中で表現されるのは、小説のような行間や、流れるような時の経過。絵が持つ表現力と文字が持つ明確な意味。そして読者にそっと伝えられた作者からのメッセージ。
『空飛ぶくじら』は、登場人物たちの淡々とした日常を舞台に、あまりにも小さなことできっと忘れ去られていく出来事の中に、実は彼らの人生の転換期となるような心が動く瞬間を切り取った場面が描かれた短編集となっています。
『空飛ぶくじら』とは
『空飛ぶくじら』はスズキスズヒロ先生のデビュー作を含む短編集で、「マトグロッソ」というWebメディアに掲載されていた作品が収録されています。2021年3月に発表された第24回文化庁メディア芸術祭のマンガ部門で新人賞を受賞した作品でもある本作品は、「いま、誰かと共有したくなる作品」が詰まった至極の短編集となっています。
【ご報告】「空飛ぶくじら スズキスズヒロ作品集」が『第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門〈新人賞〉』を受賞しました!https://t.co/OElnhqh6d7 pic.twitter.com/JegIp5LRI6— スズキスズヒロ:単行本発売中! (@suzuhirosuzuki) March 12, 2021
大人になるってどういうこと?
収録作品では、年代や性別が異なる人々が出会ったときに生まれる気づき、変わっていく行動が描かれており、進路に悩む⼥⼦⾼⽣とマイペースな⾼校教師のやりとりを描いた「⽊村先⽣」、鉄道オタクの⾼校⽣が地⽅から初上京し、ひとときの体験をする「TRAINSPOTTING」。
いずれも、大人になる途中の高校生を主人公に、大人になることをどこか悲観していた高校生が、人生の先輩から自分の道を探す糸口をつかんでいくストーリーとなっています。
木村先生はこちらから読むことが出来ます。
木村先生 | Matogrosso https://t.co/z6zUaXJ5fh
自分はいつ大人になになったんだろ?子どものころに想像していた大人はとても遠い存在だったなぁ。。— そふえ@アルライター&みんなでつくる学童STEMz (@STEMz8) May 6, 2021
高校時代につるんでいた4人組が、トラブルに困窮する旧友の頼みを叶えるべく協力し合う「銃声を削り出す」そして、この作品のスピンオフ作品である表題作「空⾶ぶくじら」。同じ夢を持っていた小学校の同級生が、大人になって自分の人生を振り返る「TAXI DRIVER」。
子どもの頃の夢や思い出を、大人になった主人公たちが同級生と出会うことで振り返る様子から、成長とは変化であり、選択だったんだと感じられる作品が収録されています。
【お知らせ】単行本が出ます!
「空飛ぶくじら」(イースト・プレス)12月7日発売です!
マトグロッソ掲載作+描き下ろし「空飛ぶくじら」を収録した作品集です。
な、なんと!装丁はセキネシンイチさん、推薦文を松本隆さん、石山さやかさんより頂戴いたしました!
何卒!
https://t.co/HoFZ1TZDGi pic.twitter.com/lEfGhllIWP— スズキスズヒロ:単行本発売中! (@suzuhirosuzuki) November 6, 2019
道を探そう
本作品の巻末にスズキスズヒロ先生が、漫画家になるきっかけとなった小学生の頃のエピソードが収録されています。子どもにとって、周りの大人が及ぼす影響は、自分自身で選択でできることが少ないからこそ大きく重たいものだなと感じてしまいます。
人が決めたスケジュールなんか 守らなくていいが 道を探すことはやめちゃだめだ そうすりゃちょっとずつでも 前に進むだろ 大丈夫 こんなオレでも三度のメシは食えている
『空飛ぶくじら』は、大人になってしまった大人が、ちょっと一休みして今までのこと、これからのことを考えてみる休憩所みたいな作品となっています。スズキスズヒロ先生の細かく、そして温かい人間観察の視点に驚きつつ、ぜひ1作品1作品味わってください。