松浦だるま / 著

イブニング新人賞出身の新しき才能が『美醜』をテーマに描く衝撃作!! 二目と見られぬ醜悪な容貌を持つ少女・累(かさね)。その醜さ故、過酷な道を歩む累に、母が残した一本の口紅。その口紅の力が、虐げられて生きてきた、累の全てを変えていく――。

作品概要

『累 -かさね-』は講談社発刊『イブニング』にて、2013年から2018年まで連載された松浦だるまによるヒューマンサスペンス作品です。幼い頃から醜い容姿によって蔑まれてきた主人公・淵累(ふちかさね)が母の形見である不思議な口紅の力を使い、美しい容姿を手に入れ演劇の世界へと身を投じる物語となっています。

2015年には第39回講談社漫画賞の一般部門へとノミネートされた他、「全国書店員が選んだおすすめコミック2015」で9位、次にくるマンガ大賞2015「これから売れて欲しいマンガ」部門10位。マンガ大賞2015では10位入賞など、数々の賞にもランクイン。2018年には実写映画化もされました。

あらすじ

本作の主人公・累は生まれながらにして類稀なる演技力を持ちながらも、その醜い容姿から日々大勢の人に蔑まれながら生きてきました。彼女の唯一の味方であったのは母・透世(すけよ)。ですが抜群の演技力と絶世の美貌を持つ大女優であった彼女も、若くして幼い累を残し早逝しています。その風貌が美しすぎる母親と似ても似つかない、ということも、累が周囲の人に虐げられる理由の1つでもありました。

そんな累が小学生の頃、学校行事の際にクラスで演劇をやることとなります。その舞台で彼女を笑い者にしようとしたとあるクラスメイトと、本番直前に2人きりの際衝突した累。どさくさに紛れて累は、美しい母の遺言に従ってある計画を企てます。それは、亡くなった母の形見である口紅を付け、ほしいものに口付けをすること。遺された言葉通りに、目の前の美しい顔のクラスメイトに口付けをした、その瞬間。なんと累と彼女の顔が、クラスメイトと綺麗にそっくり入れ替わってしまったのでした。

母の遺した口紅には、相手と自分の顔を入れ替えることができる、という不思議な力があることを知った累。しかしそこで同時に彼女はまた、ある事実に気付いてしまいます。この口紅を常に付けていた母親の顔が、本当の母親の顔ではない、という可能性に。こうして口紅の力を知った累は、その力を使いながら自身もまた、母と同じように演技の世界へと何かに導かれるように足を踏み入れていくこととなるのです。

登場人物紹介

淵累(ふちかさね)

本作の主人公。生まれながらにして、大勢から目を背けられたり嘲笑されるほどの醜い容姿を持つ少女です。大女優・淵透世の娘としてこの世に生を受けますが、母とは似ても似つかぬその容姿に自分を生んだ父親からは捨てられてしまった様子。母・透世とも彼女がまだ小学校にも上がらないほど幼い頃に死別しており、その後は母の遺産を狙う叔母の家で、見た目を蔑まれながらもなんとか暮らしていました。

母譲りの気質か元々演劇には強く興味を示しており、事実大勢の人の目を強く惹きつける高い演技力の素質も持ち合わせていました。小学校の頃に口紅で他者の顔を使い本人の代わりに演劇の舞台に立って以来、もう一度あのスポットの当たる世界で多くの人を魅了したい、と強く思うようになります。

その後母の法事で口紅の秘密を知る後の協力者・羽生田釿互と出会い、2人で女優として生きていくべく共同戦線を張ることに。丹沢ニナや異母妹である野菊の顔を利用しながら、彼女は光の輝くステージの上で生きていくために、血にまみれた業の道を母の口紅と共に歩いて行くこととなったのです。

淵透世(ふちすけよ)

累の母。類稀なる演技の才能とその美貌で舞台女優としての絶大な人気を手に入れた後、娘である累を残し若くして早逝。累に不思議な力を持った口紅を残した張本人です。

彼女の本当の名前は誘(いざな)。朱磐村という地域の出身で、昔は現在の累のような目も当てられないほどの醜い顔をしていました。村で口紅の原料となる物質を手に入れその後淵透世という劇団員と出会い、彼女の顔を借りるようになっていきます。最終的には彼女の人生をほぼ丸ごと乗っ取り、美しい顔の淵透世のままこの世を去りました。累に手を貸す羽生田とは村に居た頃からの知り合いです。

羽生田釿互(はぶたきんご)

累に手を貸す演出家。累とは彼女の母・透世の法事で出会いました。透世とは古い馴染みで彼女が持っていた口紅の力についても知っており、累が美しい女優として大成するよう彼女に顔を貸す人物を探すなど、協力者として累を手助けしています。

彼が累を助ける理由は、死ぬ直前の透世に「娘を暗闇から明るい光の元へと連れ出して」と懇願にもにた遺言を残されたから。また透世に心の底から心酔しており、累を通して再び透世のような女優が見たい、あるいは累が母のように美しさを武器に大勢を魅了する姿が見たい、という思いから、彼女の協力者として動いているようです。

丹沢ニナ

累が最初に本格的に顔を借りる事となった女性。多くの人をはっとさせるほどの美貌を持っており、元々劇団女優としても舞台に立っていましたが、とある理由から演技に集中できないでいました。その悩みを解決するべく累や羽生田と手を組み、累が「丹沢ニナ」として名を売り出すことに協力するようになります。

彼女が演技に集中できない理由は、「眠り姫症候群」を患っているから。幼い頃から突然前触れもなく眠ってしまい、数日~数か月目を覚まさないという奇病に侵されている彼女。日常生活もままならない中で気晴らしに訪れた演劇ワークショップで演出家の烏合と出会い、彼に自分の美しさを肯定されたことで生きる気力を取り戻していきました。累の力を借りて女優「丹沢ニナ」として活躍する事で、再び烏合に会いたい、彼と思いを通わせたい、というのが彼女の真の狙いです。

作中にも登場!演劇界の名作の数々

本作『累』の主題は演劇。その為主人公の累は、作中で数々の演劇界の名作を演じることとなります。ここではその一部を、作中の累が演じる役と共にご紹介しましょう。

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』

不朽の名作、宮沢賢治による『銀河鉄道の夜』。後世も様々な作品に影響を与えたこのお話は、ジョバンニとカムパネルラという2人の少年が、「本当の幸い」を探しながら夜空を走る列車に乗って旅をする物語です。本作では主人公の累が高校生の時、人生で二度目の顔の交換を行って主人公のジョバンニを演じ、美しい顔をした人間が持つ決定的な優越感をまざまざと実感する事になるのです、

アントン・チェーホフ『かもめ』

古典の名作とも呼ばれる『かもめ』はロシアの作家、アントン・チェーホフによる作品です。様々な人物の片想いの連鎖を描いたお話ですが、その物語の中心人物となるのが小説家への恋心と女優になる夢を抱えた少女・ニーナです。累が演じたのは、若手女優の登竜門とも呼ばれるこのニーナ役。丹沢ニナとしての本格的な入れ替わりを成功させ、その後彼女が丹沢ニナとして生きる道の始まりとなったのが、この作品となりました。

オスカー・ワイルド『サロメ』

演劇好きの間では知らない者はいないとも言われるオスカー・ワイルドの『サロメ』。踊りの褒美として自らに色欲を向ける父親に、自分の物になってくれない恋した男の首を所望した狂気の美しい踊り子・サロメ。彼女の物語を耽美的に描いたこの作品で、累は主役のサロメを演じることとなりました。これまでのどの役よりも演技力や彼女自身の狂気性を必要としたこの役。しかし累は母親の遺志ではなく自分の意志で人の顔を奪っても尚茨の道を歩くと決意し、見事役を演じ切って丹沢ニナとしての名を一躍世に広めました。

『累』には原作があった!?

本作『累』には実はモチーフとなるお話があったのをご存知でしょうか?それが江戸時代の怪談『累ヶ淵』となっています。

昔々、とある少女に「累」という名の亡霊が憑りつき彼女を苦しめました。亡霊は昔、少女の父親にその醜さを理由に殺されてしまった女だったのだそう。結果累は徳を積んだお坊さんによって祓われた、というお話が元ともなっているそうです。歌舞伎や落語の題材ともなっているお話なので、気になる方はぜひ詳細を調べてみて下さいね。

作者情報

松浦だるま先生は本作『累』がデビュー作ともなっています。これまで2009年と2012年の「イブニング新人賞」でそれぞれ優秀賞を受賞しており、満を持してのデビューとなった形です。既刊に『累』『いまかこ』があり、2020年12月現在は『ビッグコミックスペリオール』にて『太陽と月の鋼』を好評連載中。また本作『累』のスピンオフ作品で、累の母・透世の物語を描いた『誘 -いざな-』にて小説家としてもデビューしています。

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