『髪を切りに来ました。』は『いいひと。』や『最終兵器彼女』などで知られる、高橋しん先生の作品です。
沖縄の離島に引っ越してきた親子
物語の舞台は沖縄のとある離島。閑散としたこの島に引っ越してきたのは美容師の「陸」と小学生の息子「一星」。
島の離島留学制度を利用してやって来た2人。何となく訳ありな空気を醸し出すこの親子、のっけから気になります。
物語の序盤では、これから住むことになる家が10年間空き家でボロボロの状態で、なんとか住めるようにと奮闘する親子の姿や、島の人になかなか心を開いてもらえず苦労する様が描かれます。
離島、という時の流れの穏やかな場所の、どこか閉鎖的でもある独特の空気感をひしひしと感じることが出来ます。
花とゆめコミックス「髪を切りに来ました。」1巻 3/5発売記念 特典情報です!。https://t.co/wj4EsYsncZ pic.twitter.com/5dvMaHtcvQ— 高橋しん+しんプレ (@sinpre) March 6, 2020
光の描写が美しい
筆者が感じた本作の魅力は作中における光の描写です。2人が住む家には、屋根が壊れていて空が拝める(!)部屋があります。そこから差し込む月の光。沖縄の夜空に無数に輝く星の光。少し外に出れば太陽の光を反射して輝く海の光。
自然がもたらしてくれる優しさ、暖かさをマンガを通して存分に体感できる。ここになんとも言えない満足感を感じるのです。
メロディ様にて連載中の「髪を切りに来ました。」単行本1巻が発売となりました!沖縄の離島で新生活を始めた親子の温かなお話です。息子の一星くんの為に作られる日々のごはんもとても美味しそうで必見です(*^^*)ぜひお手にとってみて下さい。宜しくお願い致します!Mac班加藤 pic.twitter.com/mDxGUapqH7— 高橋しん+しんプレ (@sinpre) March 16, 2020
何もない、がある
作者の高橋しん先生が、巻末のあとがきで本作を「何も起こらないお話」と表現されていました。
確かに、本作では読者が驚くような事件が起こったりとか、過激な描写だったりがある訳ではありません。
だけど、何か懐かしい匂いがするんです。そう、「何もない」が、この作品にはあるんです。
初めて訪れた場所に対する緊張感と少しの高揚感。初めてクラスメート達と接する時のドキドキ感。人が自分を受け入れてくれた時の感動。そんな、言葉にすらしてこなかったけれど、確かに通り過ぎて来た大切な時間が、自分にもあったことを思い出すのです。
暖かくて、ちょっぴり切なくて
世の中、モノで溢れすぎていて便利ではある。けれど、何か空虚な気持ちになってしまう瞬間ってありませんか?
そんな時に手に取って頂きたいのが本作『髪を切りに来ました』です。男性でも大丈夫、主人公の美容師「陸」は理容師資格も持っています。
暖かくて、ちょっぴり切なくて。表面を恐る恐る触れてみると、ビックリするぐらい熱くて思わず身がまえてしまうけど、どっぷり肩まで浸かってみると最高に気持ちいい。そんな薪で沸かしたお風呂のようなエモさがあります。
本作はまだ1巻が発売されたばかり。2人の親子の、小さな小さな物語を、是非ご堪能くださいね。
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