HUMAN LOST 人間失格

髙城隆介漫画 MAGNET/スロウカーブ原作 太宰治原案

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『HUMAN LOST人間失格』人間合格か失格か。太宰治の文学がアニメ映画になって現代に復活!

HUMAN LOST人間失格』は、太宰治の名著『人間失格』を原案にしたダークアクションSFです。

2019年11月29日にアニメーション映画化、本作はそのコミカライズです。

無病長寿大国・日本

昭和111年の日本・東京。医療革命によって死が克服されたこの社会では、平均限界寿命が120歳。町は特権階級が暮らす環状7号線内「インサイド」と、インサイドからの汚染された大気に侵された環状16号線外「アウトサイド」とに分かれていました。

HUMAN LOST 人間失格

大庭葉藏(おおばようぞう)は、アウトサイドで暮らす暴走集団の一人、竹一(たけいち)と共にバイクでインサイドに突貫します。竹一は葉藏に絵を描くきっかけくれた友人でした。

HUMAN LOST 人間失格

突如としてロスト体と呼ばれる異形体に変化した竹一。葉藏は突入前に堀木正雄が事前に渡した薬が、竹一をロスト体にしたのではないかと疑うのでした。

HUMAN LOST 人間失格

原作に沿った人物設定

原作の『人間失格』を書き終えた太宰治は、一か月後に愛人の山崎富栄(とみえ)と入水自殺しています。原作の葉藏は太宰を思い起こさせる人物で、カフェの女給・ツネ子と心中しますが自分だけ生き残ってしまい、自殺ほう助の疑いをかけられます。本作でもバアで働く恒子という女性が出てきます。

HUMAN LOST 人間失格

また、本作ではバアのマダムが葉藏を二階に住まわせているのですが、原作にも葉藏を迎えるマダムが出てきます。

HUMAN LOST 人間失格

本作でキーとなる堀木正雄や柊美子(ひいらぎよしこ)ですが、堀木は竹一や葉藏に薬を配っているところ、美子は無垢な存在として描かれているところが原作の人物設定に沿っています。

HUMAN LOST 人間失格

また、国家機関「ヒラメ」の所長・澁田(しぶた)は、原作では葉藏の父の友人であり、目つきがヒラメに似ているためにヒラメと呼ばれている人物でした。

HUMAN LOST 人間失格

細かく人物を見ていくと、原作の人物設定が丁寧に踏襲されている感じがします。

原作があるからこそおもしろい

心中が多い原作を考えると、本作では普通の人が死なない無病長寿の世界観になっていて、その対比がとても興味深いのです。この世界観だと人々は死にたいと思っても、なかなか死ねないはずです。

HUMAN LOST 人間失格

葉藏が異形体となる時には「恥の多い生涯を送ってきました」というセリフと共に自らを刀で突き刺すのですが、刃で体を貫いても死ぬわけではなく異形の姿に変わるだけなのです。

HUMAN LOST 人間失格

死のうと試みるも何度も失敗し、最終的に「人間失格」の烙印を押された原作の葉藏と、自らに刃を突き立てつつも無垢な美子と共に世界を導こうとする本作の葉藏。そして『人間失格』を書きあげた後に心中を果たした太宰。葉藏の死がリアルと物語、そして過去と現在を繋ぐようです。

葉藏という非常に不安定な人物の核心が描かれているようで、原作にも興味が湧きます。死ねないのが当たり前の世界では、死ねることが価値のようにも思えてきますね。

原作小説が気になる方はこちらも

中田敦彦さんのYouTube大学では、太宰治の最高傑作として原作の『人間失格』が詳しく解説されています。

物語が書かれた当時の状況や他の作家のことなども合わせて紹介されているので、気になる方はぜひ見てみてください!

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HUMAN LOST 人間失格 (アフタヌーンコミックス)
MAGNET/スロウカーブ/著,髙城隆介/著