時速180kmでかっ飛ばしてみたい。誰しも一度はそんな願望をいだいたことがあるのではないでしょうか。週刊ヤングマガジンにて連載中の『MFゴースト』は、実在する公道での自動車レースを題材としています。通常であれば絶対かなうはずのない、そんな願望を体感させてくれるマンガなのです。
著者、しげの秀一先生は過去に『頭文字D』という公道最速を謳ったマンガを執筆しており、今作はその正統後継マンガと言っていいでしょう。しかし前作を読んでいなくとも、その魅力を十分に堪能することできる作品になっています。
公道を舞台に行われる最高時速180kmのカーレース
舞台は西暦202X年。車の自動運転が普及した、今よりもすこしだけ未来の日本。しかし技術が進んでも、人の心を熱くさせるのは、やはり人と人とのバトルです。現在と同じように人間がドライバーとしてハンドルを握り、最速の称号を目指し戦います。
違うのはレースが行われる場所が、わたしたちが普段走るような公道であるということ。規制をかけるため対向車はいないものの、もちろんそこはレース場のように整備された空間ではありません。砂埃などの路面コンディションへの対応、突然の豪雨に対応できない水はけの悪いアスファルトなど、その危険性は何倍も高くなってくるでしょう。
そんなレースが私たちの日常と地続きの場所で行われる。だからこそ生まれる臨場感がそこにある。それこそが『MFゴースト』の一番の魅力なのです。
車の知識がなくとも十二分に楽しめる
読者の方の中には、車の知識がないから楽しめないかも……と、不安になっている人もいるかもしれません。でも私自身、車のことなどほとんど知りません。主人公であるカナタ・リヴィントンが乗っている車トヨタ86や、ライバルたちの乗る海外の有名自動車メーカーの名前くらいは聞いたことがある、かろうじてその程度です。しかし今作は私のような車音痴でも、問題なく楽しむことができます。
なぜなら作中で描かれるレースは、すべて動画サイトで配信されている設定で、そこには解説の人がいるからです。度肝を抜くようなハイレベルな戦いがおこなわれていても、派手さがなく、素人目にそのすごさがなかなか伝わらない、ということは良くあることです。しかしそのすごさを、逐一解説してくれる人がいれば話は違ってきます。車に詳しい人はもとより、車のことを何も知らない人であっても、とり残される心配はありません。
描かれる絵そのままの迫力を感じ、そのすごさの裏づけとなる解説をかみしめる。この二つを同時に味わうことで、まるでその場にいるかのようにレースを体感することができるのです。
過去作『頭文字D』とのつながり
『MFゴースト』は、しげの秀一先生の過去作『頭文字D』の正統後継マンガであり、同じ世界観のまま、約30年後の状況が描かれています。そのため設定や登場人物につながりがあるのです。
例えば、主人公カナタ・リヴィントンの乗る車はトヨタ86という車。これは『頭文字D』の主人公、藤原拓海(ふじわら たくみ)が乗っていた車、トヨタAE86のコンセプトを受け継ぐ車です。他のライバルたちの乗る車に比べると馬力が低いのですが、そんな欠点をテクニックでカバーしていくところは、どちらの作品にも共通する魅力のひとつになっています。
また藤原拓海は今作にはまだ一度も登場していませんが、彼を知る周囲の人物の言葉で、すこしずつその来歴や活躍が語られていきます。『頭文字D』で活躍していたキャラクターたちのその後の姿というのは、前作ファンにとっては垂涎ものの情報と言っていいでしょう。
既刊10巻でまだまだ手を出しやすい
面白いマンガになればなるほど、連載は長く続き、巻数も増えてしまいます。週刊連載ともなれば2ヶ月に一冊のペースで刊行され、気がついたら何十冊と巻数が積みあがっていることも良くあることです。その点、『MFゴースト』の既刊は10巻であり、まだまだ追いつくことは難しくありません。手を出しやすい今のうちに、新公道最速伝説を目撃してください!
公道グランプリ再び!
本記事は、2021年度4月にアルのライターとして加入した新人の皆様の最初の記事をGWに一挙公開する「Golden Rookie Week企画」の一本として掲載されています。ニューカマー達の活躍を今後も見守ってあげて下さい!