昼夜問わず仕事をして、退社後は先輩や上司と一緒に庶民派の居酒屋で一杯。あの頃は、これが「普通」だったけれど今の時代は違う。
そんな時代と共に変わっていく「普通」に葛藤しながらも、力強く生きる1人のサラリーマンの悲哀を描いた物語『ティラノ部長』。
本作の主人公であるティラノ部長は、90年代に入社し仕事もプライベートも血気盛んな肉食スタイルで走り抜いてきたバブル時入社組。時は流れ、部長職に就き50代に突入したティラノ部長だが、自身のデジタル音痴や、今の時代の「普通」に追いつけないために、若手の頃以上に会社で頭を抱えることが増えていく。
「普通」が著しく更新される今
時代と共に、世の中の「普通」は更新されていく。特に、昔と比べて自分の意見が言いやすい職場の風通しの良さや、ティラノ部長にとっては「普通」だった一昔前の働き方が改善されていくのはとても良いことだ。
本作では、最初から新しい「普通」を享受している新入社員、そして器用に「普通」を更新している中年社員たちが登場するが、ティラノ部長は新旧「普通」の狭間で狼狽えている。
自分の「普通」が今の時代では通用しないと頭で理解しているからこそ、今の時代に寄り添いたいと必死に努力をする。けれど、適切な行動に移せず結局空回りしてしまうのだ。そんなティラノ部長の姿は哀愁が漂っていて、なんだか憎めない不思議な魅力を醸し出している。
これは近い未来のあなたの物語
ここまで見ていると、『ティラノ部長』を「バブル入社組のおじさんが今の時代についていけず不器用に生きる物語」だと感じる方もいるのではないだろうか?
けれど、これは決してバブル入社組のおじさん...過去の人の話ではない。
例えば「好きを仕事に」。この言葉に対してあなたは何を感じるだろうか。数年前から流通し始めたこの言葉は今の時代を象徴するような気もするが「Business Insider」によると、1990年後半頃〜2012年頃に生まれたZ世代たちはこの言葉に対して、不安や疲れを感じていてあまり良いイメージを持っていないようだ。
「好きを仕事に」の是非は置いておいて、これが「普通」だと感じていたのなら、あなたは既に『ティラノ部長』の物語に足を踏み入れている。
「普通」が著しく更新されていく今。ティラノ部長の姿はもちろん、「普通」の更新ができないティラノ部長に対する周囲の関わり方にも注目ながら読んでもらいたい。
近い未来、きっと誰しもが『ティラノ部長』になる。そんな時、あなたはどう振る舞い、どんな物語を歩んでいくのだろうか?
最後に『ティラノ部長』物申す!
先日、待望の単行本第1巻が発売された『ティラノ部長』。無骨だけれど温もりを感じる装丁と豪華フルカラーでお届けする一冊は、発売されるやいなやティラノ部長に心打たれる人続出で話題沸騰中! ...ですが最後にティラノ部長本人からメッセージが。
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©鈴木おさむ @Ryo Shitara/CORK