『おやすみ前にひとつだけ』そわそわする夜に物語を聞くのが大好きだったあなたへ 優しくてちょっぴり切ない短編集

2021年5月21日にMiyakoMiiya先生が初めて手がけた短編作品集『おやすみ前にひとつだけ』が発売されました。本作はpixivコミックにて連載されているMiyakoMiiya先生の短編マンガをまとめたもので、繊細かつ温かな筆致で描かれる優しくてちょっぴり切ないショートショートファンタジーです。

なかなか寝つけないお子さんに絵本を読み聞かせた記憶のある親御さんは多いのではないでしょうか。そんな時、本作のタイトルのように語りかけたのではないでしょうか?

仕方のない子ねぇ おやすみ前にひとつだけお話ししてあげましょう

引用元:『おやすみ前にひとつだけ』5ページから

本作はそんな思い出に懐かしさがこみ上げてくる方や、最近なかなかぐっすり眠れないことにお悩みの方にぴったりの作品なのです。

好きな物語を、どこから選んでも

短編集なので最初のお話から読んでも、気になったタイトルから選んでも楽しめます。なんといってもMiyakoMiiya先生が描くイラストのタッチが、とても優しく柔らかで作品の醸し出す雰囲気との親和性が非常に高いものとなっています。

どこか切なさを帯びた表情のキャラクターたちが元気いっぱいにコマの中を駆け回り、楽しくも心が穏やかになる癒し効果を発揮しているのがとっても魅力的です。

王道にちょっぴりアレンジを効かせたストーリー

どんなおとぎ話が収録されているのか、少しご紹介しましょう。

剣と魔法のファンタジーから、古き良き童話をモチーフにしたキャラクターが登場する物語まで、色とりどりの宝石箱のような本作。その王道にMiyakoMiiya先生の独創的なアレンジが加わり、物語の中で先生の優しさが光ります

「大昔王国のおばあちゃん」

勇者が魔物を退治するという王道の道筋。だけど「それって当たり前なの?」。勇者の気持ちって想像したことがあるでしょうか。ほんの数ページの中で、思わずぎゅっと抱きしめてあげたくなるような勇者像に出会えます。

「石の庭」

筆者一押しのお話です。しがない画家である青年の元に異様に背の高い貴婦人が訪れ花の絵を買っていくのです。画家の青年はある晩見かけた彼女の後をつけ不思議な扉を発見します。

その扉の先で画家の目に飛び込んできたものはあらゆるものが石化している光景でした。その原因は彼女自身。彼女は目にしたものを石化させてしまい花の色さえも楽しむことができなかったのです。

持ち帰った画家の絵を見た彼女がどんな表情をして、その表情を見た青年は何を思うのか。ぜひ皆さんの目で確かめてみてください。石化したものの姿しか目に映ることのなかった彼女が初めて発露したであろう表情にグッと引き込まれます


他にも、心癒される数多くのお話が収録されています。主軸となる出来事の裏側やキャラクターの心情にスポットを当てて、別の角度から物語を楽しむことができるのも本作の魅力です。MiyakoMiiya先生から湧き出る優しさの視点というスポットライトでどんな登場人物をも主役に変えてしまうのです。

また、各話ごとに後日談や登場人物の豆知識的な解説が収録されていて、「もっと浸っていたかった!」と思えるようなお気に入りのお話に出会った後、ちょっぴり物足りなさを感じてしまっても寂しくありません。

あなたの枕元に『おやすみ前にひとつだけ』を

おやすみ前のひととき、子供の頃は翌日に待っている予定が楽しみでなかなか寝つけなかったり、雷や幽霊の存在が怖くて目を閉じることしかできなかったりしたものです。

多忙を極め翌朝も疲労感が拭えきれない方、悩みを抱え不安でなかなか眠りにつけない方、大人になって私たちが眠れない理由は変化したかもしれません。けれども、どんな方にも等しく夜は訪れるものです。

そんな時、本作を開いてみてください。あなたを優しく穏やかな眠りに誘ってくれることでしょう。

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枕元に置いておきたい1冊

おやすみ前にひとつだけ (MFC)
MiyakoMiiya/著