ジャンプ+読切作品『わたしのアスチルベ』普通って、何ですか?

あむぱか先生による読み切り作品『わたしのアスチルベ』が2021年6月13日に少年ジャンプ+に掲載され話題なり4ヶ月が過ぎましたが、今なお私の心を小さく揺さぶり続けています。

『わたしのアスチルベ』は男性を好きになれないことに悩んでいる長和あおいが自分と同じ価値観を持つ女性、(かなで)に出逢いその考え方に触れる内に変化していく様が描かれています。公開から2日で早くも50万PVを突破した話題作でした。

マイノリティがテーマ

本作を語るに当たって重要なワードがアセクシャルアロマンティックです。

アセクシャルとは他者に対して性的欲求を抱くことが少ない、またはまったく抱くことがないセクシュアリティのことを指します。

そしてアロマンティックとは、他人に恋愛感情を抱かないセクシュアリティです。本作の主人公である長和あおいも奏にその言葉を教えられ、自身もそうなのではないかと考えます。

自分の中に押し込めていた感情

異性に対して恋愛対象としてみなければならないと思っていた。そんな価値観で固まっていたあおいに、奏は私には恋愛感情がない、と言い切ります。

それまでの自分の価値観の範囲の外に居るような気持ちになって苦しんでいたあおいは奏の言葉に救われます。2人はすぐに打ち解け毎週のように会うことになります。

自分に無理をしなくなったことでありのままの自分を解放することができたあおい。そんなあおい本来の持つ魅力に惹かれた社内の同僚、大桑ある飲み会の帰り道に告白されます。

自分は恋愛的な行為を他者に向けることができない人間であると伝え、友達としての関係を望むあおい。そんなあおいの気持ちを理解し、友達として接することを決めた2人。

その後も良好な関係を築き、友人として接していたつもりの大桑に対して、いつの間にか恋愛感情を抱いていることに気づいたあおい。自分の感情に蓋をしていたのは過去のトラウマが原因でした。

自分の本当の感情に気づき、自身の変化を、内に秘めていた感情を奏を伝えるも、奏から発された言葉は苦しさに溢れていました。

普通って何ですか?

女に生まれてきたら男を好きになるのが普通。それくらいの歳になっていれば恋人の1人や2人くらい居るのが普通。この歳までには結婚するのが普通。どこかでそんな価値観を植え付けられた経験がある人も少なくないでしょう。

でも、他者の普通と自身の普通は必ずしも一致するものではないのではないでしょうか。

人は変わっていくのです。ずっと同じままではいられないのもまた人間らしさです。

世間一般や社会という大きな存在と自分を比較するよりも、自分を他者の価値観に沿うように取り繕うよりも心から大切に思える人と気軽に声を掛け合えるような関係性こそが何より必要なことなのかも知れないと、本作品のキャラクターの言葉から考えさせられます。

何かを考えるきっかけに

本作品を読んだ後の感想は千差万別だと想像できます。とりわけ本作のようなセクシャルマイノリティーをテーマにした作品であれば尚更でしょう。

それでも、読後に何かを考えるきっかけとなればそれだけでも大きな意味を持つのでは無いでしょうか。今日も何処かで言いようのない生き辛さを抱えている人がいる。その事実を作中から感じて、自分なりに理解しようとするだけでも大きな一歩だと感じます。

読後に色々な想いが交錯している自分に出会える、感情に訴えかける作品です。

『わたしのアスチルベ』も掲載されている小年ジャンプ+で様々な作品と出逢うきっかけづくりに!

OGP画像は、少年ジャンプ+『わたしのアスチルベ』掲載ページより
https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496350690245