本レシピ記事はumebon(梅本ゆうこ)さん運営の「マンガ食堂」に掲載されたエントリーから寄稿いただき掲載されています。http://mangashokudo.net
「マンガ大賞」ノミネート作品(2017年)ということで手に取った『空挺ドラゴンズ』。龍を追って各地を旅する飛空艇(捕龍船)を舞台にした、冒険&グルメ漫画です。
ノスタルジックなタッチの絵や緻密な世界観など、昔のアフタヌーンを彷彿とさせて(good!アフタヌーン連載のようですが)、一発でハマってしまいました(毎年思うけどマンガ大賞ノミネート作品は、ほとんどハズレないです。大賞以外ももっと読まれて欲しい)。飛空艇暮らしの描写など、ジブリ、特にラピュタが好きな人にはたまらないはず。
ファンタジー世界を舞台にした『ダンジョン飯』と同様、本作も非実在食材がたくさん登場します。その代表格が「龍」。
第1話に登場するのは、「龍の尾身」のステーキをはさんだサンドイッチ。龍を仕留めて食べることに人一倍のこだわりを持つ主人公・ミカが作るメニューです。
さて、この龍の尾身。「龍の尾の付け根の肉」と説明されていますが、コマに描かれた絵を見ると、その名の通り輪切りにされたしっぽの周囲に、赤身の肉がついているような形状です。
当然こんな肉は現実に見当たりません。
エピソードの最後にお店で食べるステーキも↑こんな形ですが、これにそっくりなのはまぐろのテール。かといって、まぐろ肉で再現するのはちょっとしっくりこない……せめて陸の動物の肉で作りたいなー。
陸の動物で手に入りやすいのは、やはり牛のテールです。
しっぽがスパっと切断されたようなビジュアルは理想的だけど、可食部は少ないし筋張っていてステーキにするには不向きです。
一方、牛の臀部のうち、しっぽの付け根に近い部位として知られる肉が「イチボ」。焼き肉屋さんでもたまに見ますが、やわらかい食感からステーキにもよく使われ、今回のメニューにもぴったりの予感。
ただ、部位としてはふさわしいけど、これをそのまま焼いても単に「牛ステーキ」にしかなりません。どうにかして、龍を焼く気分を味わえないかしら……。
そこで思いついたのが、肉の魔改造です。イチボ肉+牛テール肉で理想の肉を作っちまおうという算段です。
イチボ肉の余分な脂をカットして(この部分は後でステーキを焼く際に使います)、中央を包丁でカットし、テール肉(小さめのもの)を隙間なく埋め込みます。はがれにくいように、テール肉の周囲には小麦粉をまぶしておくのがおすすめ。
これが牛肉から「龍の尾身(風)」に魔改造された肉である……。
なんか禁断の行為に手を出したマッドな気分になりましたが、よく考えたら大したことしてないですね。より魔改造度を上げるなら、牛+豚とか異種混合するのもアリかもしれない。
肉はラップにくるんでなじませ、焼く前に常温に戻して岩塩とコショウをしっかり両面に振ります。
岩塩の存在自体がファンタジーっぽい。
ラップにくるんで寝かせたおかげか、テールとイチボがの境目が馴染んで、ほんとにこんな肉がありそうな気がしてきた。
肉を焼いてゆきます。熱したフライパンに「龍の皮の脂(切り分けたイチボの脂身)」を溶かして
肉を投入し、強火で1分→弱火で1分。
裏返して、強火で30秒→弱火で1分半。
仕上げに「ワインウォッカ(=これは「ブドウの蒸留酒」と解釈してブランデーを使用)」をひとたらしし、アルコールを飛ばし完成。フランベしたら思ったより激しいことになった。
焼いた肉は3~5分ほど寝かせるとジューシーになる、というレシピページのアドバイスに従い、アルミホイルにくるんでしばらく放置。
その間にパンをあれこれします。
シンプルなサンドイッチなので、パンは奮発して美味しいものを用意しましょう(これはお気にいりのパン屋さんのカンパーニュ)。
数日経って硬くなったカンパーニュをスライスし、
切り口をさっと水につけて、そのままフライパンで片面だけ焼きます。
硬いパンがふっくらと柔らかくなりました。このワザ、普段も試せそう。
寝かせていた偽装龍肉がいい感じに仕上がったので、
包丁で薄くスライスしていきます。(テールの部分は、肉をこそいでおく)
ナイスピンク。
これをパンにたっぷりはさんで
(はさみすぎだろうか)
「龍の尾身ステーキサンド」の完成です。
食べた感想:
パンと肉、それ以外一切なし!の超男前サンドイッチは、ミカのキャラクターらしくシンプルでワイルド。
ステーキもジューシーでやわらかくて、そんなに高いお肉じゃなくても(今回のイチボは輸入牛です)、ちゃんとした方法で焼けばちゃんと美味しいんだなあ、と納得。
非実在食材だからといってあきらめずに、使えそうな材料を妄想しながら作るのも楽しいですね。
※ちなみに「龍の尾身肉」の代用品としてもうひとつ候補にして買ったのが、「オッソブーコ」という子牛の骨付き肉。部位はスネですが、いい位置(?)に骨があってビジュアルとしてはけっこう理想的。
焼くとこんな感じになります。
食べてみると肉は硬めで、やはり煮込み用なんだなと思いますが、非日常感のある食材だし、魔改造はちょっと…という方は、このお肉もいいかもしれません。
※アフタヌーンのサイトで試し読みできるようです。
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