ジャンプ+読切作品『16歳の身体地図』自分の身体を受け入れて進むのだ

モリエサトシ先生の読切作品『16歳の身体地図』が2021年5月31日に公開されました。女性向け雑誌を舞台に『星空のカラス』や『親愛なるA嬢へのミステリー』『私の正しいお兄ちゃん』ほか多くの作品を生み出してきたモリエサトシ先生、少年マンガの王道「少年ジャンプ+」に初登場です。

『16歳の身体地図』は、重い生理に悩む少女と高身長を活かしきれないバレー少女ふたりの友情と成長を描いた物語。本作のあらすじと魅力をご紹介します。

『16歳の身体地図』のあらすじ

重い生理に毎月悩まされている少女 桐花(キリカ)。彼女は小学生のうちに周りの誰よりも早く初潮を迎え、同時に身長が止まってしまいました。当時バレーボールチームでエースアタッカーをしていたキリカにとって、このことは自分の身体とバレーボールを嫌いになるきっかけに。その後キリカはバレーボールを辞めてしまいます。

一方バレー部少女 美都(みと)は、高身長ゆえに期待を受けてレギュラー入りするものの自分の身体をうまく活かせず悩んでいます。みとは体育の授業でキリカのプレーを見て小学生の頃憧れたプレイヤー本人であることを確信し、キリカに話しかけます。

身体の使い方に長けているものの自分の身体が嫌いなキリカと、高身長なのに自分の身体をうまく使えないみとの出会いによってふたりは変化していきます。

自分からはどうしても逃れられない

月経は成長にともない女性に必ずやってくる身体の変化。毎月の生理期間は身体の重さや痛みに襲われるだけでなく、ホルモンバランスが変化する影響で精神的にも不安定になります。

さらにいつ初潮がくるか?どの程度の痛みや出血があるか?どれくらいのサイクルで生理が来るか?などは本当に個人差があるもの。(ちなみに生理がきたら必ず身長が止まるわけではありません。キリカの場合そうだったというだけですよ!)

その辛さを誰かに代わってもらうことはできません。自分で自分の身体に向き合って毎月の変化や思い通りにならない自分自身を受け入れるしかないのです。それでも自分の身体に対する理解を深めることで、嫌々でなくもうちょっと前向きに受け入れることはできるかもしれない!

そんな少女たちの繊細な戦いを、特に身体が大きく物を言うバレーボールというスポーツを通して描いたのがこの作品。身長が低いと悩むキリカと身体をうまく使えないと悩むみとのように、悩みの中身はばらばらでも手を取り合って生きていけると教えてくれるところが作品の魅力です。

身体への向き合いは人間共通のテーマ

本作のもつ大きな意味のひとつは、少年に読まれることを前提とした場に生理や女性の身体変化という話題を持ち出したこと。長年タブー視されてきたものを「少年ジャンプ」という大きな土俵にあげたことには、モリエサトシ先生と編集部の方々の覚悟を感じずにはいられません。

少年に訪れるいろんな変化と同様に少女にも変化は起こっている。その実態を包み隠さず感情もひっくるめて伝えたことで、アプリの読者コメント欄では本作に対するさまざまな反応が見られます。

女性特有の現象が本作の素材になっているものの「自分の身体からは逃れられない」ことや「自分の身体を嫌いになりたくない」のは誰だって同じこと。「デリケートな話だ」「男性にはわからない」という視点を超えて、自分自身の身体への向き合いという人間共通のテーマとして読んでみてほしい作品です。

一緒に自分を生きていこう

OGP画像はジャンプ+『16歳の身体地図』掲載ページOGPより
https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496334621791