「ジャンプルーキー!」で2021年5月期シルバールーキー賞を受賞した庭の苔先生の読切作品『遠星』が2021年6月22日「少年ジャンプ+」にて公開されました。
美しい色づかいの扉絵がぱっと目を引く本作は、人間が地球を捨て去った後の地球でのできごとを描いた物語。期待の新人が描くSF読切作品『遠星』のあらすじと魅力をご紹介します。
担当させて頂いている作家さん・庭の苔先生の2021年5月期シルバールーキー賞『遠星』本日配信…❗️
可能性溢れる新鋭が放つ意欲あふれるSF読切。
是非にご一読を〜✨https://t.co/kXvx5dKaQ7 pic.twitter.com/YcgqqUUYap— 林士平(りんしへい) (@SHIHEILIN) June 21, 2021
地球へ送られてくる罪人たち
本作の舞台は地球。しかし私たちが今暮らしている地球とはまったく違う朽ち果てた世界です。地球を捨てどこか遠い星で暮らす人間は、罪人たちを送り込む場所として地球を選びました。主人公はそのひとりとして地球行きの宇宙船に載せられます。
船に積まれた1ヶ月分の食料を奪い合う戦闘で唯一生き残った主人公が地球(かつての東京)に降り立つと、母を失った少女サクラに出会います。サクラは名前を「忘れちゃった」という主人公に「まんまるの帽子かぶってるから」という理由でマルと名付けます。
過去のトラウマから決して素顔を見せないマルにもサクラは心を開き、ささやかな日々の暮らしをともにすることで仲を深めていきます。そんなふたりを待つ結末は…ぜひ作品で。
人間の存在を改めて問う
本作は「私たちの存在を規定するものはなにか?」というこれまでにも多くの作家が挑んできたテーマにしっかりと向き合った物語です。
『遠星』というタイトルが導く誰も見たことのない星のイメージ。理解の限界を超えた存在を恐れ危害を加えるものと決めつけて排除しようとする人間自身が地球にとっての「遠い星からきた異星人」になったとき、人間という存在の絶対性は失われます。
人間がたくさん住んでいる地球に宇宙人がやってくるのではなく、人間がほとんど住んでいない地球に人間がやってくるというシチュエーションを作ることで、宇宙に生きるあらゆる生物と同じ存在であることを強調し、私たち人間という存在の確からしさを曖昧にするのです。
作品世界に引き込まれる!
空白のコマや植物の生長で見せる時間経過の表現、言葉の意味と重みを際立たせるセリフ量やタイミング、またマルがサクラを「君」と呼び「君じゃなくてサクラ!」と訂正されるコマでマルが名前に執着しない生物である(=人間ではない)ことを表現し読者に小さな違和感を抱かせるなど、本作には読み手を作品世界に引き込んで離さないための工夫がたくさん詰まっています。
人間の存在を相対化した物語の名作は世の中にたくさんありますが、60ページたらずの読切で読者の心をつかむのは至難の業。
ルーキーとは…信じがたい…
マルとサクラそれぞれのバックグラウンドや作品世界における地球の状況、ふたりが出会ったかつての東京で起こるこれからの出来事、”普通”の人間たちの暮らしなどについてもっともっと知りたくなるこの作品。アプリのコメント欄にも「連載で続きを読みたい」という声が多く寄せられています。
これからの庭の苔先生の活躍に大注目!『遠星』まだ読んでいない方、無料で読めますよ。
人間も 相対的に 異星人
OGP画像はジャンプ+『遠星』掲載頁より
https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496367353122