新感覚ホラー『お化けと風鈴』がLINEマンガで連載開始!制作陣に聞いた「本当にあった怖い話」と恐怖へのコダワリ

2021年9月22日から「LINEマンガ」で連載がスタートした『お化けと風鈴』。

まずお読みになりたい!という方はこちらから!

主人公は、愛すると妻と可愛い娘と暮らすごくごく普通のサラリーマン・ヒロト。ある日、勤め先である不動産会社で「好条件だけれど何故か売れない物件」の内覧に行ったことから全てが始まります。

出典元:https://www.instagram.com/p/CPmXU6lrvBJ/

内覧に訪れた人たちを威嚇するかのように発生する不可思議な現象、そしてヒロトを呼び寄せるように鳴り響く風鈴の音...。この不気味な物件に誘われるヒロト、そして一人の女性の幽霊に翻弄されていく様子を描きます。

『お化けと風鈴』は、放送作家の鈴木おさむさんが原作を務め、制作は作家エージェント会社コルク所属のマンガ家によるチーム「コルクスタジオ」が担当しています。

コルク公式Twitterが「ラブホラーマンガ」と銘打つ大注目の本作ですが、今回は「LINEマンガ」での連載開始を記念して「コルクスタジオ」の3名にインタビューを実施しました。『お化けと風鈴』というホラー作品を制作するに3人が実際に体験した怖い話、そして注目して欲しいシーンとは...?

✍️プロフィール


やじまけんじ先生

ネーム担当。

Twitter|https://twitter.com/yajima_kenji


ホリプー先生

線画担当。

Twitter|https://twitter.com/horipu


わくまる先生

カラー、効果担当。

Twitter|https://twitter.com/w_tokushun

制作陣が語る、本当にあったい話

ーーまず「ホラー作品を手掛ける方は実際に怖い体験をしたことがあるのではないか?」と思っているのですが(笑)実際に怖い経験をしたことがある方は、当時の状況を踏まえながら詳しく教えてください!

僕は霊感などないのですが、1度だけ「それらしき声」を聞いたことがあります。


...あれは、僕が20代そこそこの頃のお話です。地元にある小児病院が廃病院になったので、友人と一緒に見にいこうという話になりました。


夜は怖いので、実際に足を運んだのはお昼すぎ、夕方前頃。そこは元々、大きな小児病院だったのでかなり敷地が広かったのですが、まったく人の気配はありません。


どこか入れそうなドアはないかと開いてるドアや窓を歩いて探しました。窓から中を覗くと、小児科らしく、かわいい壁紙に小さな机などが並び、書類のようなものが床に散乱していました。そして、しばらく周りをぐるっとまわり、非常口と思われるような金属の扉をみつけました。


今思い返すとなぜそう思ったのかは謎ですが、なんとなく開いてそうな気がして手をドアノブにかけようとした瞬間...


「おぎゃあああああああ」


と、長く叫ぶ赤ちゃんの声が聞こえました。もちろん廃病院ですし、すでに入院している子供がいるわけもなく、敷地が広いので病院の外からの声ではありません。ですが、明らかに「中」のほうから聞こえました。友人も同じ声を聞いたらしく、2人とも顔を見合わせ無言で走り出して戻りました。


...あの声の赤ちゃんは病院が廃病院になっても、そのままあそこにいたのでしょうか。

ーーいきなり「本当にあった怖い話」で映像化されてもおかしくないレベルの怖い話がきた...!他のお2人はいかがですか?

これは僕の実家の近くにある、とある公園の話なのですが...。


実家の近くに「地蔵公園」という名前の公園がありました。ブランコと滑り台しかない小さな地味な公園です。


実家を建てたのが僕が幼稚園のときだったのですが、引っ越してからよく夜中に子供の笑い声が聞こえてきて「こんな夜中に遊んでるのか…」と思い、ちょっと怖いねと家族と話しながらも、普通の公園として家族や近所の子と遊んでいました。


その後、小学生になってから学校の行事で「公園めぐり」というものがありました。それぞれの公園がいつできて、なぜその名前なのかを調べるというものです。地域の図書館に行って古い資料を見せてもらうと、大体の公園は「井戸木公園…昔小さな井戸があったことから」「梅田公園…梅の木が多く植っていることから」など他愛もない理由なのですが、自分の家の「地蔵公園」について調べてみると...


「戦時中死んだ人をたくさんの人を埋め、地蔵が置いてあったことからで地蔵公園という名になった」と書いてありました。


今は地蔵はなくなっていますが、この土地にたくさんの人の死体が埋まっているのかもしれないと思うとゾッとしました。


もしかするとあの子供の笑い声は…。

ーー今の「地蔵公園」の様子について聞きたいような聞きたくないような...。お化け以外の怖い話をお持ちの方はいらっしゃいますか?

個人的にはあれはお化けじゃないと思ってるのですが...。


大学生の時、東京に住んでいた僕はふと自転車で山梨に行こうと思って向かったんです。本当にふらりと。


ですが、思ったよりも時間がかかってしまいすっかり夕暮れ時になってしまいました。疲れたので、山道の途中にある縁石に腰掛けて休憩していると、突然周りの温度がぐんぐん下がっていって同時に冷や汗が吹き出してきたんです。


「あ、これはここから離れないとなんかヤバい」


そう思って急いで自転車にまたがると、後ろの藪から女の人が出てきて奇声をあげながら自分をめがけて走ってきました。


坂道でなかなかスピードが出ない中、一心不乱に自転車をこいでなんとか逃げきれたんですが、それ以降は自転車の一人旅はしてないです。


足もしっかりあったのでお化けじゃないと思うのですが、あれは、なんだったのでしょうか。

『お化けと風鈴』と肩を並べるほどの怖い話を持っていた3人。機会があったらぜひマンガ化して欲しいです!

参考にしたのはあのJホラー映画

ーー『お化けと風鈴』を制作するにあたり、参考にしたホラー作品はありますか?

今回『お化けと風鈴』を制作するにあたって、原作担当の鈴木おさむさんに『女優霊』という映画をおすすめしていただいたので視聴しました!


私はカラーリング担当なので、主に雰囲気とか色とか作品全体を包むムードみたいなものを『女優霊』から勉強して『お化けと風鈴』の世界観の下敷きのひとつにさせていただいています。

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僕も『女優霊』視聴しました!Jホラー独特の湿度を感じるすごく不気味な作品です。


ただ、最初間違えて『女幽霊』というエッチなB級感漂う映画をみてしまい、これは妙に生生しいHなシーンのある映画で「これを参考に...?」とエッチさを参考にするのかと思い込んでいました(笑)


自分の中で一番古い記憶に残っているホラー作品は、小学校3年生くらいのときに水曜の午後のロードショーで観た『チャイルドプレイ』です。殺人鬼の魂が入ってしまった人形「チャッキー」が人間の体を手に入れるために、たまたまその人形を買ってしまった男の子を殺そうとする物語です。


この映画の怖いところは、その人形自体も不気味なんですが、「人形がしゃべる」ということを周りの大人に信じてもらえず、その人形が起こした事件のせいで精神がおかしいと思われて精神病院に入れられてしまう。で、その病院の独房に入れられてるのですが、その少年独房の窓からアンディがのぞくと非常階段をカンカンと登ってくるチャッキー人形の姿が見える…


「チャッキーが!チャッキーが来てるよ!」


もちろん精神病院なので妄想だと思われて誰にも相手にされない。あの「誰にも信じてもらえない、子どもだけの恐怖」が当時同じくらいの年代だった自分にはすごく怖かったですね。


しばらくは怖すぎて逆に「やあ僕チャッキー、一緒に遊ぶかい?」という吹き替えを真似して茶化していました(笑)

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キャサリン・ヒックス/出演,クリス・サランドン/出演,トム・ホランド/監督

*以下『お化けと風鈴』のネタバレを含みます

『お化けと風鈴』は、ホラー、恋愛ものでありながら周囲の人が命を落とす描写や苦しんでいく描写も多々あります。

10話では、お化けの家で坂井が鈴に首をしめられ苦しんだ後、スッと立ち去り自殺してしまうシーンでは坂井の表情をあえて描かず、意思が感じられない演出をしました。


このシーンは『デスノート』で夜神月が死の瞬間の行動を操る力を使い南空ナオミを葬ったシーンを参考にして描きました。

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作中に自分を投影させる!?

ーーここからは『お化けと風鈴』についてお伺いします。最初に質問した「ご自身が経験した怖い話」を作品に投影させたことはありますか?もしある場合は該当のシーンとどのように反映させたのか詳しく教えてください。

怖い話ではないのですが、ヒロトの立ち振る舞いは人一倍気持ちを入れて仲間と意見交換して作り上げています。というのも、ヒロトと自分がちょっと似ている気がするんです。


物語の序盤で、ヒロトが柴田や後藤から嫌味を言われるシーンがあるのですが、あえて強く反論せず「笑ってごまかす」という描写を意識的に入れました。

出典元:https://www.instagram.com/p/CPmW3znrCXa/

それが彼の処世術になっていて、どんどん自分の中に溜めていく...。本当は辛くても表に出して言えないし、言いたくないというプライドもあります。そして、ストレスで限界がきた時にそれが大きな過ちに繋がったりしちゃうんですよね。


「わかるわかる」と思いながら描いてます(笑)

ヒロトみたいな人はたくさんいると思います。そんな人が溜め込んだ先にあるのが『お化けの風鈴』のような世界なのかも知れません。

*以下『お化けと風鈴』のネタバレを含みます

自分の恐怖体験をそのまま投影したシーンはまだないのですが、坂井が鈴の報復にあって歯が折れてしまうシーンがあって。それは自分が小学生のとき、友だちの振り回した箒によって粉々に砕けた歯を泣きながら拾ったという体験をネーム担当のやじまけんじさんに話したら採用してくれました(笑)

まだ、作品に直接的に反映はさせていませんが、今後の展開でもしかしたら「あ、これは前話していた…」ということもあるかもしれないです!

ーー『お化けと風鈴』を制作するにあたり一番苦労した、または現在進行中で苦労しているシーンとその理由を教えてください。

実際にお化けを見たことがないので幽霊の鈴を塗るのはまだ試行錯誤しています!

お化けって何色なんでしょう...?

*以下『お化けと風鈴』のネタバレを含みます

これは、苦労というかチーム全体で迷っていたところなのですが、そもそも幽霊との「不倫」という話しだったので「サスペンス」や「恋愛」が強い演出にしたほうがいいのかと思い、どのくらいホラー演出をしていいのか迷っていました。


迷いながら進む中で段々と答えが見えてきて、10話で坂井がああいう目に合ったので「あ、これはこういうホラー感のマンガなんだな」というのがクッキリ分かった気がして、今は容赦なくホラーとして描くようにしています。

今は慣れてきましたが、ヒロトを描くのに苦労しました。

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当初、冒頭の脚本のみを読んだ時、ヒロトは30代のキャラクターで家族想いということだったので、おでこを出してややつり目で自信もややうかがえるような表情で描いていました。


しかしその後、キャラクターデザインについて鈴木おさむさんに確認していただいたところ、「もう少し主人公らしく」「浮気や不倫をしそうにない雰囲気にする」「優しそうではあるが最終的には家族を守る強さを秘める」というアドバイスをいただきました。


その結果、前髪を下ろして目と眉を優ししつつ、強く描いたときにギャップが生まれるような今のヒロトのデザインを詰めていきました。ヒロトはお化けに操られたり、人間関係でどんどん弱っていって、現在はあまり強い顔を描いていませんが、終盤に向けて進化していくヒロトを描ければと思っています。

制作陣が語る、一番気に入っているシーン

ーー『お化けと風鈴』で一番気に入っているシーンとその理由を教えてください。

*以下『お化けと風鈴』のネタバレを含みます

2話でお化けの家の前に不思議なおばあさんが出てくるのですが、このシーンを描くのはとても楽しかったです。


読んでいただけると分かると思うのですが画面が黒いです。ホラーマンガにおける「黒」はただのスミベタではなく、深い闇、不可解さ、不気味さ、恐怖をはらんでいます。


実は、このおばあさんは僕らもまだ正体を知らないんです(笑)ただ、脚本には再度登場するような記述があり、また出てくるのであれば印象強くなるようにどうせなら怖く描いておこう...ということで、他シーンに比べても圧倒的に黒い影を強めに帯びさせました。今後出てくるのがとても楽しみです!

3話で、ヒロトは事故で車椅子生活になってしまい自分を責める奥さんに「人生で起きたことにはぜんぶ意味がある」と優しく抱きしめるんですが、そのあと会社でいびられて、上司に頭からコーヒーをかけられる悲惨なシーンがあるんです。


そして、自分の今の状況に対して「ぜんぶに意味がある…か」とトイレでポツリと呟くのですがこの一連のシーンはすごく気に入っています!


同じ言葉でも、誰が言うか、どんな状況で言うかによって意味合いが少しずつ変わってくるんです。この一連のシーンでヒロトに気持ちが乗れたように思いました。


この同じセリフを2回言わせようというのはやじまけんじさん、ホリプーさんと3人で話して決めました。その提案を鈴木おさむさんは快くGOサインを出してくれました。


チームでの制作が上手く回りだしたのもこの辺りかなとも感じており、それも相まってお気に入りのシーンです!

10話の後半で、坂井の顔面にドアがガツン!と当たって歯が折れるというシーンがあるのですが、このシーンをどうするか打ち合わせで話しているときに、わくまるさんが実体験で歯が折れた話をしてくれたんですよね。


先ほど、わくまる先生も話していましたが、友だちの振り回した箒によって粉々に砕けた歯を泣きながら拾ったというエピソードですね。


「パニクって折れた歯を拾っちゃう」という行動がリアルだな...!と思い坂井にも折れた歯を探させました。このシーンを挟むことで、見せゴマがより説得力のあるコマになったように思います。この前後のシーンは大好きです。

読者に一番注目してほしい「怖さ」とは

ーー最後の質問です。『お化けと風鈴』は、ヒロトの職場環境から垣間見る人間の怖さ、一見幸せそうな家族から漂う怖さ、不気味な物件に棲まう女性の幽霊の怖さなど色んな角度からの「怖さ」が詰まっていると感じます。読者に一番注目してほしいのはどの角度の「怖さ」でしょうか?

ヒロトの日常生活が幽霊の鈴と関わったことで崩れていくところですね。


それは色々なことを飲み込んで我慢しすぎてしまうヒロトの弱さにも原因があったりするんですが、そんな日常が崩壊していくハラハラ感もお化けの怖さと一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです!

ヒロトに重ねて、読んでいる自分の中に生まれるさまざまな感情が一番恐ろしいのかもしれません。


例えば、ヒロトのように職場の人間に対しての復讐心にも似た憎しみを抱いてしまったり、周囲の人間に不幸があったときに感じてしまう快感、不倫してしまうのも仕方ないと思える状況...。


これらに共感してヒロトを応援してしまう読者の巻き込み方がとても面白いのですが「いやあ、怖いなあ〜」と感じながら描いています(笑)

*以下『お化けと風鈴』のネタバレを含みます

今一番怖いと思うのは、10話以降で鈴がヒロトに代わって、彼の周りのイヤな人間に復讐をしていくのですが、だんだんとヒロトもその復讐に対して心が麻痺してきてしまうことです。


「悪いやつに悪いことが起きて当然だ…」と段々と自分の復讐を肯定するようになる、その心理が怖いです。ホラーコンテンツ目線で言うと「次は誰が幽霊にやられるのかな…」ってところも予想して楽しんでほしいです。

お忙しい中貴重な時間をいただきインタビューに応じていただいたやじまけんじ先生、ホリプー先生、わくまる先生に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました!

鈴木おさむ×コルクスタジオが挑むホラーに注目

出典元:https://www.instagram.com/p/CPmXU6lrvBJ/

『お化けと風鈴』は、「LINEマンガ」のほか掲載場所は鈴木おさむさんのInstagramで毎週水曜日に最新話が更新されています。最新話をいち早くチェックしたい方は、ぜひ鈴木おさむさんのInstagramをご覧ください。

👉鈴木おさむさんのInstagramはこちら

背筋にゾッと寒いものを感じさせる不気味なストーリー展開、そして絵から漂うおどろおどろしい空気感をぜひ体感してください。

『お化けと風鈴』は、2021年9月22日からLINEマンガで連載スタート。秋の夜長には怖い話が似合います。

ほんのり蒸し暑さが残る時もあるこの季節だから「怖い話」でも…!

OGP及び記事内の画像は、CORK許諾の元掲載してあります。快く許諾していただきまことにありがとうございます
©︎鈴木おさむ
©︎コルクスタジオ