きっと恋かもしれないし、そうじゃないかもしれない。学園を舞台にした百合マンガ5選

女性同士の人間関係を中心に描く百合マンガ。百合と聞くと女性同士の恋愛を想像するかもしれませんが、相手に抱く感情は必ずしも恋愛とは言い切れません。

今回は百合マンガの中でも「学園」というある種閉鎖的な世界で描かれる女性同士の人間関係を扱った作品を紹介します。

『マリア様がみてる』

百合を語る上で絶対に外せないのは『マリア様がみてる』、通称マリみて。

原作は今野緒雪さんによるライトノベル。1998年に集英社の少女向け小説レーベル・コバルト文庫から刊行され、2012年まで続いた大人気作品です。



2003年にマンガ化されたのですが、マンガ版は長沢智先生によるものと、小説の挿絵を担当したひびき玲音先生によるものの2パターンあります。アニメ化や実写映画化もされたので知っている人も多いのではないでしょうか?


マリア様がみてる
長沢智 (著) , ,今野緒雪 (著)


マリみての舞台は私立リリアン女学園高等部というカトリック系のお嬢様学校。そこではスール制度という、上級生が下級生にロザリオを渡すことで成立する1対1の姉妹制度があります。

これは姉であるグラン・スールが妹であるプティ・スールを指導することで学園の規律を維持するという目的で設けられています。

主人公の福沢祐巳はお嬢様学校に通うものの、家柄も容姿もザ・平均な高校1年生。 ある朝、「紅薔薇のつぼみ」と呼ばれる小笠原祥子にタイの乱れを直された事をきっかけに、スール関係となります。

ロザリオの誓いは、いわば結婚の誓い。思春期の女の子がどのような心情の揺れ動きを経て、ロザリオの授受を行うのか。また、スールとなった後、二人の関係性はどのように移ろっていくのか。とても繊細な心理描写も見所の一つです。

『青い花』

『青い花』は、第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した『淡島百景』の作者・志村貴子先生が描く、“ガール・ミーツ・ガール”ストーリー。


青い花
志村貴子


お嬢様学校の藤が谷女学院高等部に入学したあきらと、名門進学校の松岡女子高等学校に入学したふみ。二人はもともと幼馴染でしたが、ふみの引っ越しにより小学生以降は疎遠になっていました。しかし高校進学をきっかけに、ふみは地元に戻りあきらと再会します。

すぐに昔のように打ち解ける二人ですが、実は離れている間にふみは恋愛対象が女の子であり、初恋の相手はあきらであったという自覚が芽生えていました。

一方のあきらは、そもそも恋とはなんなのかがわからない状態でした。

お互いがお互いのことを大切に想い合っていた二人は、やがて恋愛としての「好き」を抱いて付き合うようになります。

しかし、女性との交際経験のあるふみと、未だ恋とは何か思い悩むあきらの間には、分かり合えない溝ができてしまいます。

不器用な二人の関係は、もどかしくも愛おしくあります。



繭、纏う』

新鋭のマンガ家・原百合子先生の初連載作品、『繭、纏う』。

森に隠されるように建つ星宮女学園高等学校。ここにはとある「秘密」があります。しかし、ある事件をきっかけに、その秘密が徐々に明らかになっていくのです。

繭、纏う
原百合子/著



寮の自室に篭る謎に満ちた「深窓の姫君」、そんな姫君に艶を含んだ視線を向ける「学園の王子様」、そして王子様の気持ちを知りながらも、ほのかな想いを寄せている主人公。

学園に隠された秘密とは?交錯する少女たちの想いの行方は?

ミステリアスな世界観にきっと魅了されるはず。

『秘密の花園』

藤井みほな先生が『GALS!』の前にりぼんで連載していた『秘密の花園』。

秘密の花園
藤井みほな著


日本有数の長距離ランナーとして将来を有望視される女子中学生の美園は、ある日偶然出会った朔耶に恋心を抱きます。しかし、実は朔耶は男装していた女の子だったのです。




もし好きになった人が同性だったと知ったら、その恋心とどう向き合うのか?そんな問いを投げかける作品です。

『紳士同盟†』

いわゆる百合マンガではありませんが、女の子に恋心を抱くキャラクターが登場するマンガもあります。

「りぼん」において2004年から2008年まで連載されていた、種村有菜先生の『紳士同盟†』(しんしどうめいクロス、通称紳クロ)もその一つ。

紳士同盟+
種村有菜/著

主人公の元ヤンキー・乙宮灰音は幼い頃からの想い人・東宮閑雅に近づくために、お金持ち学校の帝国学園に入学。生徒は実家の資産により「金」「銀」「銅」のランクに分けられています。灰音は最下位の銅ランク。一方閑雅は、学園唯一の「金」ランクかつ皇帝と呼ばれる生徒会長のため、話しかけることもできません。

しかしある事件をきっかけに、灰音は皇帝の恋人であり、特別な枠である「プラチナ」になり、生徒会にメンバー入りします。



そんな灰音に想いを寄せるのは、ヤンキー時代からの親友・天宮潮。

容姿端麗、頭脳明晰で男子生徒からは「紫陽花の君」と呼ばれ絶大な人気を誇っていますが、本人は男嫌い。

灰音の気を引くために複数の男性と関係を持ったり、不仲の父親に頼んでまで寄付金を払ってもらい生徒会に入ったり。また、閑雅と引き離すためにあえて嫌われるような行動をとるなど、その愛情表現は歪。

潮の灰音への想いは恋愛なのか、それとも。

それは、恋とは呼べないかもしれないけれど

ある日自分の中に芽生えた相手への感情は、恋なのかもしれないし、ただの憧れや愛おしさなのかもしれない。

恋と断言できない、揺れる感情を精緻に描いているのが百合マンガの魅力なのだと思います。