少女、薙刀と出会う
入学当初、主人公・東島旭(とうじまあさひ)は1年先輩の上級生・宮路真春(みやじまはる)の強く、美しい薙刀に惹かれ初心者にも関わらず薙刀部へ入部しました。
最初こそ未熟であれ、旭はめげずにひたむきに薙刀に打ち込んでいった結果、2年生になった時期の東京都での団体戦で優勝しインターハイへの切符を手にします。
こう表現すると輝かしい青春物語と捉えられそうですが、実際はそんな綺麗事だけではないのです。
「薙刀」を選ぶ宿命
「本当はもっと、高校生活は楽しい事があるのかもしれません。でも、私達はもうとっくに、後戻りできないところまで来てしまっているのです」
この旭の言葉は、薙刀という「武道」を選んだ登場人物全ての宿命を表している様に思えます。
インターハイ出場が決まったものの、試合中の事故で膝を故障した真春。エース不在で旭達はインターハイの団体戦に臨まなくてはいけません。
しかし旭達だけにハンデがある訳ではなく、全国の代表校の選手達もまた複雑な想いを胸に試合をします。
インターハイ編はその交錯する少女同士の信念が巧みに描写されており、一試合も目が離せません。
乃木坂46のメンバーによる舞台化・映画化
本作品は2017年に乃木坂46のメンバーがメインキャストとして出演し、舞台化・映画化されました。
あさひなぐ乃木坂46
舞台も映画も観ましたが、どちらも素晴らしかったです。
劇場版『あさひなぐ』のテーマ曲「いつかできるから今日できる」は歌詞がまさに旭を応援する内容なので、聴きながら読んでみてはいかがでしょうか。
物語の行く末
『あさひなぐ』の物語は、旭達が2年生のインターハイで終わることをダ・ヴィンチ 2017年10月号のインタビューにてこざき先生が明言しています。
連載中のスピリッツ本誌では決勝戦が開幕しており、そう遠い未来のことではありません。
『あさひなぐ』という作品は、過去に作中の舞台の一つである東京武道館付近で暮らし、実際に薙刀を携える高校生達を目の当たりにしながら生活していた私にとって身近な存在でした。
今は遠い東北の地で、彼女達の試合の行く末を見届たいと思います。
早朝の澄んだ冷たい空気は、どこか試合の凛とした空気に似ているんじゃないかと想像しながら。
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