ここは今から倫理です。

雨瀬シオリ / 著

「倫理」とは人倫の道であり、道徳の規範となる原理。学ばずとも将来、困る事はない学問。しかし、この授業には人生の真実が詰まっている。クールな倫理教師・高柳が生徒たちの抱える問題と独自のスタンスで向かい合う――。新時代、教師物語!!

作品概要

ここは今から倫理です。』は2020年現在グランドジャンプむちゃ(集英社)にて連載されている、雨瀬シオリ先生による作品です。現在累計発行部数は55万部を突破しているとのこと。とある高校で社会科の教師として教鞭を取る主人公・高柳先生。彼が専門としている科目・倫理の授業を通じて、生徒たちが自身の悩みや葛藤に向き合い、成長や変化を遂げていく学園ヒューマンドラマです。

あらすじ

春から高校3年生となった生徒たちが選ぶ選択授業。中には人気が高く抽選制のものあれば、授業の内容や先生の性格から生徒に敬遠されるものも。その科目の1つであった倫理。授業に集まった生徒は15人、40人程が入る教室にまばらに各々が着席している状態です。

チャイムが鳴り、教室に入ってきたのは教科を担当する高柳先生。彼が最初に放った一言は、「倫理は、学ばなくても将来困る事はほぼ無い学問です」という科目担当にあるまじき衝撃の発言でした。

戸惑う生徒たちをよそに、高柳は「倫理が役に立つ瞬間」がもしあるとするなら以下のようなことを考える場面だ、と言葉を続けます。

  • 信じられるものが無くなった時、救いを求める先…”宗教とは何か”

  • 人間関係が上手くいかない、上手く生きられない…”よりよい生き方を考える”

  • 悩みが絶えず苦しい、自分は何のために生きている?…”幸せとは何か”

  • 男は、女はこうあるべき、それって本当?…”ジェンダーについて”

  • 「死にたい」「いなくなりたい」、死が近づいた場面…”いのちとは何か”

「別に知らなくてもいいけれど、知っておいた方がいい気はしませんか?」それが初めて今回倫理という教科に触れる生徒たちへの、そして私たち読者への先生からのメッセージでした。

人が生きる、ということを、様々な視点から深く考えさせられる教科である倫理。高柳の授業を受ける生徒たちもまた、時に思春期特有の、時に私達読者と同じような。大小様々な悩みや葛藤を、皆一様に抱えている人間です。

彼らが授業で倫理を学び、時に先生自身の助言も受けながら。得た知識や思考で自分達の行動を顧みたり、いつもとは違う変化を起こしていきます。そうして少しずつ人として成長する生徒たちと、高柳先生の交流が描かれている作品です。

作品の魅力

作品の魅力は大きく2つ、まず1つは主人公である高柳先生のキャラクターです。整った顔立ちながらもどこか物憂げな雰囲気を纏う彼。口数もあまり多くなく、表情もどちらかといえば乏しいタイプの男性教師です。そのミステリアスでクールな見た目がすでに好き!という読者も、どうやら多いようですね。

終始物語の中心となるのは、彼の授業を受ける生徒たち。彼らが抱える高校生ならではの年相応の悩み、あるいは人間なら誰しも抱えるような葛藤。それを目の前にした高柳は、時に授業にも登場する哲学者の言葉を引用しながら、そしてその中に彼自身の考え方や思想を織り交ぜながら。たかが子どもと一切馬鹿にすることなく、彼らの心に真摯に触れようとするのです。

そんな両者の関わりの中で、少しずつ明かされる高柳そのものの人となり。最初は先生の見た目から入ったものの気づけば内面にも強く惹かれてしまった、という方もきっといるでしょう。

もう1つの魅力は、ずばり倫理という科目の魅力そのものが純粋に描かれている点。高柳の言う通り倫理という授業や、人間とは何かということについて深く考えること。それらは確かに私達の普段の生活で、さほど重要なことではありません。仕事や勉強、やるべきことを日々こなしてお金を稼いだりする方がよっぽど大事です。そうでなければ私たちは、毎日の生活すらままならなくなるのですから。

ですがそんな毎日を、何の感情も無く過ごせるほど人間は馬鹿な生き物ではありません。時には悩み、苦しみ、本当に自分はこのままでいいのか、と足が止まりそうになることもあるでしょう。そんな時に私たちを救ってくれるのは、漢字の読み方や世界情勢、数学の方程式の知識ではないのです。

これまで大勢の先人たちが考えてきた、人間とは何か、幸せとは何か、生きるとは何か。多くの生物の中でも一際大きな脳を持ち、考えるという行動のできる人間だからこそ生み出された哲学や思想。それらこそが、唯一人の葛藤を和らげたりそこから救い出してくれるものなのではないでしょうか。

そして同時にそれらを教えてくれる、倫理という教科の魅力。これが実に鮮やかに描かれているのが、『ここは今から倫理です。』という作品なのではないかと思います。

登場人物紹介 ―彼らが抱えた悩み―

高柳先生

本作の主人公、倫理の授業を担当する社会科教師。物静かながらも聴く者を引き付けるような語り口で、倫理の授業を受ける生徒たち一人ひとりの心に真摯に向き合おうとします。大勢の生徒の葛藤に寄り添いながらも彼自身も葛藤を抱えており、教師という身でありながらも悩んでいる人にしか興味を持てないという悩みをひょんなことから生徒に打ち明けたことも。

元々倫理を教える教師になったのは、大学生の頃に教えを乞うていた教授の影響が強い様子。また過去に離婚歴があり、結婚には懲りたので二度としないと考えていることも判明しており、以前は裏の社会の人間とも浅からぬ縁があったこともあるようで、彼自身の素性はまだまだ明らかになっていない部分も多いようです。

逢沢 いち子

倫理の授業を受ける生徒の1人。いわゆるヤリマン・ビッチと呼ばれるタイプの女子高生だったが、高柳に本気で恋をしたことから人生観が変わり、その後少しずつ自分の行動を顧みるようになっていきます。

あまり賢くはないが明るく、恋に恋する女子高生らしい女の子。しかし誰に対しても比較的はっきりとした物言いをしたり、自分の主張は曲げない気の強い一面も。それが仇となりクラスでいじめに合うが先生はそれを授業の題材と1つとし、逢沢自身を始めとした生徒たちに大事な気付きを新たに与えるきっかけとしました。

間 幸喜

倫理の授業の時間に寝てばかりいる問題児。不真面目な態度を高柳に注意され反抗したが、居眠りの理由はシングルマザーである母親が夜間家を不在にしており、1人の時間を持て余して夜遊びばかりしているから。自由の身である一方その自由に不安を抱えていた無意識の悩みを彼に指摘され、受けた助言から映画鑑賞が趣味に。以来先生とは時折見た映画の話をする仲となっています。

同じく倫理の授業を受ける山野亮太、近藤陸と仲が良くよく一緒につるんでいる様子。山野は自分自身がどこまでも普通の人間であることに悩み、近藤は裏社会の人間と関わりがあった兄のトラブルに巻き込まれるが、どちらも高柳の手によって人として正しい道へと導かれています。

八木 まりあ

朗らかで天真爛漫な、逢沢とは少しベクトルの違う明るい女の子。付き合っていた彼氏とその友人にレイプされ飛び降り自殺を計ろうとするが、高柳先生の説得により未遂に終わりました。

酒井 美由紀

頭がよく読書家で、テストでもいつも上位を取る秀才。それ故に自分以外の人間、親や教師、高柳先生に対しても見下したような態度を取っていました。しかし上記の八木の事件を直接目の当たりにし、本や勉強で得た知識だけでは得られない経験があることを知ります。

谷口 恭一

昔いじめられていた過去から、自分のようにいじめられている子どもを救いたいと教師になることを目指す男の子。理想の教師像として高柳先生に憧れていたが、彼の言葉をきっかけにいじめられていた時の事を共に思い起こし、善と悪の曖昧さやそれらを決めつけることの怖さを考えるようになります。

本田 奈津子

普段は大人しい性格の女の子ですが、自身の鞄に入っていた大事なものをクラスメイトに馬鹿にされたことで激昂します。倫理の授業を受けている高柳にだけは唯一、大事にしていたのはぬいぐるみのリュウくんであり、自分は彼に恋をしており彼の声が聞こえるということを打ち明けました。

深川 時代

大人の男を貶めたい、という捻じれた価値観を持つ女子高生。以前高柳を罠に嵌めようとして失敗し、今度は別の教師をターゲットにしていたところを彼に再び阻止されました。その際高柳にはその行為を、自分より目立つ姉に嫉妬し気を引きたいが為の稚拙な行動だと見抜かれてしまいます。

安村 麻由

普段は大人しい生徒ですが、SNSではフォロワー数千人を持つ少しアダルトなアカウントを持っている少女。投稿にハマりSNS依存症気味になっているところを高柳に見咎められ、正しく自分自身のペルソナ=人格を持つよう諭されます。

都幾川 幸人

保健室登校ですが唯一、高柳の授業にだけは参加している男子生徒。過去のトラウマから大声を出す人が苦手で、愛着障害を持ち懐いた相手には異常に距離感が近くなる子です。彼への対応に関しては、高柳自身も度々葛藤や悩みを抱えながら向き合っている様子が描かれています。

スマホのゲームをきっかけに同じ授業を受ける高崎由梨と仲良くなりますが、彼女が倫理の授業中にこっそりリストカットをしようとしたのを目撃してしまい、パニックとなってしまいました。

掲載誌・受賞履歴情報

『ここは今から倫理です。』は2016年11月号『グランドジャンプPREMIUM』から連載開始。その後同誌のリニューアルを経て現在は『グランドジャンプむちゃ』にて好評連載中です。

本作は『みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞2018』ネクストブレイク部門2位『次に来るマンガ大賞2018』コミックス部門7位。そして『#俺マン2017』第5位をこれまでに受賞しています。

メディアミックス情報

コミックス3巻が発売された際、主人公の高柳先生を声優・櫻井孝宏さんが演じたスペシャルムービーが公開となりました。

また2020年1月よりNHK総合にて実写ドラマが放送されることも決定。主演は俳優の山田裕貴さんが演じる形となっています。

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