ここは今から倫理です。

雨瀬シオリ / 著

『ここは今から倫理です。』倫理は人の心に触れ、 自分の心に触れてもらう授業です

ここは今から倫理です。』は雨瀬シオリ先生による倫理を題材にした作品です。2020年2月時点で累計販売数が55万部を突破しており、テレビドラマ化も発表されています。

本作を読んで思うことは、『ここは今から倫理です。』は知識としての倫理を伝えることを一番の目的にはしていません。倫理を使えば、今までと違う新しい視点で自分の心を見つめ直すことができる。そんなことを伝えてくれているのではと思います(私見です)。

倫理とは何か。『ここは今から倫理です。』を通じて学んでいきましょう。

物語の中心は教師と生徒の心の触れ合い

『ここは今から倫理です。』は高校の倫理教師である高柳先生と、倫理の授業を選択した生徒の交流を中心に描かれます。

倫理の授業を受けているのは、目立ちたいと考えトラックの前に飛び出してしまった生徒、学校で性行為をしてしまう生徒、決して言葉を発しない生徒、モノに恋愛感情を抱いてしまった生徒、SNSでの承認欲求に取り憑かれてしまった生徒など、問題行動を起こす生徒ばかり。

高柳先生はこれらの生徒を決して見捨てることなく、時に倫理や哲学を用いながら生徒の心に寄り添っていきます。

その姿勢や言葉に私たち自身が学ぶところは多いはず。それはきっと、生徒の問題行動の根本にある寂しさや満たされなさが、私たち自身も抱えるものだからです。

倫理とは何か

ここで改めて、倫理とは何かを説明したいと思います。ここでは、教科書的な倫理の説明をするのではなく、高柳先生の言葉を紹介します。

倫理は、学ばななくても 将来 困る事はほぼ無い学問です。 地理や歴史の様に生活する上で触れる事は多くないし、数学の様な汎用性も、英語の様な実用性もありません。 この授業で得た知識が役に立つ仕事はほぼ無い。 この授業で教えること "宗教とは何か" "よりよい生き方を考える" "幸せとは何か" "ジェンダーについて" "いのちとは何か"

引用元:『ここは今から倫理です。』1巻

倫理は人の心に触れ 自分の心に触れてもらう授業です

引用元:『ここは今から倫理です。』1巻

物理は”物のことわり” 倫理は”人間関係のことわり”を学ぶ授業です 石に水を投げ入れた時 何故 水面に波紋が生まれるのかを考えるのが物理で 人に言葉を投げかけられた時 何故 心が波立ち苦しくなるのかを考えるのが倫理です

引用元:『ここは今から倫理です。』2巻

つまり高柳先生が教えたい倫理とは、歴史上の哲学者や彼らの思想そのものではありません。それらを理解した上で、自分や他人の心に触れようとする姿勢を求めているのではと感じます。

生徒に対する深い愛情

私が思うこの作品のもう一つの魅力が、高柳先生の生徒に対する深い愛情です。

  • 傷つく生徒を守るためであれば、その生徒の担任や母親に嘘をつくことを厭わない

  • 声を発しない生徒には無理に話させようとはせずにただ寄り添う

  • 校則を守れない生徒には、校則を変える努力の可能性を提示する

作中で、みなさんに是非知って欲しい言葉があります。

人間を好きになれず、モノを愛してしまうことは悪いことなのか?という生徒の問いに対して言った、

対象が何であれ"愛する"という心があるのはよいことです

引用元:『ここは今から倫理です。』1巻

というこの言葉に、その生徒がどれだけ救われたのでしょうか。目の前の人を一人の人間としてきちんと尊敬する。そうすることで深い愛情が芽生えてくるのではと高柳先生を見ていると感じます。

『ここは今から倫理です。』を読めば、きっとあなたも高柳先生から何かを学べるはずです。先生の生徒と同じように

2020年8月時点で既刊4巻。倫理そのものや人の心、高柳先生の深い愛情に少しでも触れてみたいと思った人は是非手にとってください。きっとあなたの心に響く言葉が見つかるはずです。

最後に、雰囲気がわかる動画も発表されています!ぜひこちらもご覧ください。

自分の心に触れる準備はできましたか?

ここは今から倫理です。 (全4巻) Kindle版