2021年10月放送のTVアニメ『ブルーピリオド』のPV第1弾、公開されましたね。もう見ましたか?
🎨 2021年10月放送決定 🎨
TVアニメ『ブルーピリオド』第1弾PV公開❗
本邦初公開のアニメ映像!矢口八虎のキャラクターボイスも初解禁に。
八虎が未知の美術の世界へ身を投じる高揚感とともに、メインキャラクターたちがエモーショナルに描かれています。https://t.co/gzMx7NQMhA#ブルーピリオド pic.twitter.com/zXc1k25yVi— 『ブルーピリオド』公式 🎨 10月よりTVアニメ放送開始 (@blueperiod_PR) April 27, 2021
メインキャストの情報も公開され、Twitterではトレンド入り。公式HPではキャラクタービジュアルも掲載されているので、ぜひ覗いてみてください。
メインキャスト
キャラクター | CV |
矢口八虎 | 峯田大夢 |
鮎川龍二 | 花守ゆみり |
高橋世田介 | 山下大輝 |
橋田悠 | 河西健吾 |
桑名マキ | 宮本侑芽 |
2017年6月から「月刊アフタヌーン」で連載開始された本作は、2020年には「マンガ大賞2020」で大賞を受賞。
累計発行部数は300万部を突破している人気作であり、アニメ化をきっかけにますます勢い付きそうな予感です。
この記事では、『ブルーピリオド』の魅力を主人公にフォーカスして解説してみたいと思います。
目次
- 優等生のマイルドヤンキーが藝大受験に挑むストーリー
- 飲酒・喫煙が当たり前のヤンキー高校生に共感できるのはなぜか
- 思わず共感してしまう二つの凡庸な悩み
- 「美術」との出会いが悩みを解決へ導く
- 「努力の天才」は凡庸な悩みを捨てられない
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優等生のマイルドヤンキーが藝大受験に挑むストーリー
『ブルーピリオド』は、「遊びも勉強も全力で」という信条から、不良仲間と夜遊びしながらも学校では好成績を収めるという二面性を持つ高校2年生・矢口八虎(やぐちやとら)が主人公。
彼がとあるきっかけから絵を描く喜びに目覚め、日本唯一の国立美大にして最難関でもある東京藝術大学への合格を目指すというストーリーです。
作者の山口つばさ先生は東京藝術大学の卒業生であり、経験者の目線から説得力のある美大受験が描かれます。
飲酒・喫煙が当たり前のヤンキー高校生に共感できるのはなぜか
筆者はこの作品の際立つポイントとして、上述した主人公・矢口八虎というキャラクターの人間性に面白さを感じます。
夜は不良仲間と渋谷に繰り出し、スポーツバーで酒とタバコを嗜みながらサッカー観戦。大学生ならともかく、高校生にしてはなかなかの奔放さです。
一方で、勉強は欠かさずテストの順位は校内トップクラスの優等生。校内ではどんな相手にも明るく接するため、「不良だけど愛嬌があるいいやつ」として誰からも高い好感度を得ています。
総じてかなりハイスペックな八虎ですが、これらの情報だけを見ると読者が共感しやすい人物像とはあまり思えません。「なんだか鼻につく」という人もいそうです。
しかし、第一話を読むだけで思わず応援したくなる魅力が八虎にはあります。それは、彼が何事も高いレベルでこなせる能力を持つ一方で、とても凡庸な悩みを持っているからだと思うのです。
思わず共感してしまう二つの凡庸な悩み
誰の目から見てもうまくいっている八虎の人生は、彼の主観ではうまくいっていません。それは、二つのとても凡庸な悩みを持っているからです。
一つは「何かに本気で取り組んだことがないこと」、そしてもう一つは「周囲に本心を伝えられないこと」です。
強い興味がなくても付き合いだと割り切って夜通しサッカー観戦をし、帰宅すれば成績を落とさないために勉強する。そこに自分の意思はありません。
周囲に求められることをノルマのようにこなすだけの日々に、八虎は虚しさを感じているわけです。
これって、現代の日本に生きる人なら「あるある」な悩みだと思います。
そして、もう一つの悩み。明らかにコミュニケーション力が高い八虎ですが、会話もそつなくこなせるというだけで、本人からすれば相手と本心で分かり合えている感覚はないわけです。
仲のいい友人たちと接していても会話自体を心から楽しめず、そんな自分を俯瞰しているもう一人の自分がいる。
少しだけ踏み出して伝えたいことを言葉にしてみても、期待したような反応は返ってこない。
なんとも等身大で、凡庸な悩みではないでしょうか。周囲から見れば超人のように映る八虎はその実、誰もが思い悩むようなことでしっかりつまずく一人の青年というわけです。
何事も人並み以上にこなせる彼が人並みな悩みを持つからこそ、そのギャップにむしろ親しみが湧きます。
「美術」との出会いが悩みを解決へ導く
もう察しがつくと思いますが、そんな八虎の悩みを解決する糸口となるのが「美術」です。
きっかけは美術部の部長である3年生の森先輩との出会いです。うっかり置き忘れたタバコを取り戻しに美術室へ訪れた八虎は、そこで見つけた彼女の絵に強く引き込まれます。
森先輩との会話を経て、「高い評価を得やすい選択科目だから」というだけで受講した美術の授業への態度をガラリと変える八虎。
言葉ではうまく伝えられなかった「早朝の渋谷」の良さを絵で表現すべく、課題へと真剣に取り組みますが、満足のいく絵は完成させられません。
思い切って何かに取り組むも出鼻をくじかれ、不甲斐ない思いをするのは、多くの人にとって覚えのある経験だと思います。
それでも、八虎は友人たちに自分の伝えたかったことを絵で伝えることに成功します。
自分の意思で絵に本気で向き合った結果、大切な友人に自分の本心を伝えることができた。
どちらも八虎にとっては生まれて初めての経験で、それは彼にとってはとても大きな出来事で、無謀にも思える東京藝術大学への受験の道に足を進ませるわけです。
「努力の天才」は凡庸な悩みを捨てられない
と、ここまでが第一話の大まかな流れです。この後、八虎は東京藝術大学への受験を決心し、命を削るような勢いで絵に向き合っていきます。
ストーリーの詳述は避けますが、自分の持てる全てを絵の上達に注ぎ込む八虎は明らかな「努力の天才」として描かれます。しかし、彼は「絵の天才」ではないのです。
思うように上達できなければ当たり前に落ち込み、周囲とのコミュニケーションがうまくいかなければ人並みに傷つきます。
不良であり優等生、そして天才であり凡庸。この二面性こそが八虎というキャラクターの本質であり、最大の魅力だと筆者は考えます。
凡庸な悩みを抱えながらも、その時点での自分にできることを常に模索し、決死でキャンバスに向かい続ける。そんな八虎の姿に、読者は思いがけず胸を震わせてしまうのです。
コミックスを読んでアニメを待とう
というわけで、矢口八虎という主人公にフォーカスして『ブルーピリオド』の魅力を書いてみました。
コミックスの既刊は9巻。アニメの盛り上がりに備えて、ぜひ今から読み始めましょう。