メゾンとは、フランス語で家、建物の意味。
時代。
女性一人でマンションの購入なんて変ですか?ひとりで充実してるのはだめなのでしょうか?
昨今、多様性という単語が行き交うようになってきた。女性のキャリアや結婚観についても色々考えることができると思う。
どんな生き方をしても自由なのだけれど。
何故か寂しくて切なくて涙が込みあげてきてしまう瞬間がある。
そんな気持ちを抱えている方に『プリンセスメゾン』を読んで欲しい。
あらすじ。
”家”を購入しようと頑張る26歳、独身女性の沼越 幸。彼女は、ファミリー層向けの物件を購入しようとしていたので目立ってしまう。
彼女は、とても真面目に”家”の購入を検討していた。不動産仲介会社に勤めている伊達 政一はそれを応援し、要 理子は沼越 幸の”家”を購入するための努力に気づき、応援するようになる。
彼、彼女らを中心に様々な女性の人生を描いていく物語である。
感想。
初めて、このマンガを読んだ時に随分と挑戦的な作品だなと思った。なぜなら、テキストの量が極端に少ないからだ。込めた思いがどれだけ伝わるのかを試しているように感じられた。
また、同時に素直な作品だとも思った。著者の考える女性の生き方や人生への思い、ふとした瞬間に感じる感情などの全てを作品の中に凝縮させているからだ。
もしかすると、テキストでは語れない、語りきれないことなのかもしれない。あえて、文字では語らずに余白で語る。何とも言えない間をつくるところはマンガでないと味わえない。空気感や雰囲気といった言語化しづらいことでも伝えられる。そんな素敵な作品なのである。
特に女性なら多くの方々が共感できる良さだと思う。
女性の人生感や性の話題などはトレンドである。そういった内容を扱う作品は今読むべきだと思う。なぜなら、時代背景を感じながら読めるからだ。
加えて、リアルな空気とマンガの空気感が混ざり合って、印象深く作品が頭に残っていくからだ。
鉛筆のような道具で描かれ、優しい気持ちにさせられる。
主人公である沼越 幸は「”家”を購入する」という夢を持っている。お金で解決できるという意味では具体的に実現できる夢であるし、必要なのは自分の意思だけだ。
だから、「”家”を購入する」よりも他人の意思が必要とされる「結婚」の方がずっと難しいことだと思っているのではないだろうか。
一昔前ならマイホームにマイカー。定年まで勤めるサラリーマンに家庭的な主婦。さらに、一姫二太郎の組み合わせが幸せの方程式だったのではないだろうか。いや、今も変わらないのかもしれないが。
しかし、マイホームやマイカーなんて余計な出費だ!とする風潮が生まれ始めた。「独身貴族」という単語も生まれ、好んでお一人様を選ぶことが当たり前になってきている。
結婚して、子供がいないと幸せになれないなんて時代錯誤では?
そう思ってらっしゃる方々も少なくないと思う。別に好きに選べばいいと思う。みんなそう思ってる。本作品でもそう描かれていると思う。
でも、ふとした瞬間に込み上げる寂しさは避けられないものでもある。本作品でもそう描かれていると思う。
夢を追っているはずなのに、切なくなるコマ。
幸せについて。
「結婚」とは、幸せになるためのパワーワードの1つではないだろうか。
本作品では、「結婚」をするかしないかは自由。だけれど、家族がいる人を羨んでしまう。
結局、「結婚」はするべきなのかなぁと思わせるシーンがいくつもある。
要 理子というキャラクターがいる。彼女は難聴になってしまうかもしれないのに、大音量で音楽を聴き、刹那的に生きている。けれど、孤独は常に身近に存在していることを知っている。
恋ではなくても心を彩ることはできる。毎日を大切に過ごせば孤独が心を覆い尽くすことはないのだと要 理子は沼越 幸から学ぶ。
これは、著者がだした幸せになるための一つの結論なのではないかなと僕は思う。
女性向けの作品。
僕は男です。この作品はまだ2回しか読めていません。正直、まだまだ作品についても女性についても理解できていないことばかりです。女性の社会的背景をしっかり理解しているわけではありません。
それでも、この作品が多くの女性の心に響くことは分かります。
…どうして、上記のシーンで涙しているのか
どうしても分からないままです…
最後に。
アルのマンガ読書感想文では、いくつかの課題本があり、本作品を選んだことは僕にとっての挑戦でした。THE 女性向けの作品はあまり読んだことがないので。
課題本が男性向きと女性向きで別れているなと思ったので、あえて女性向けの作品を読み、感想文を書くことにしました。
とても新鮮で読み応えのある作品でした。女性の考え方や感覚、社会的な立場を少しは理解できたかなと思います。
色々な作品を読めば読むほどに、自分の中で世界が広がっていく感覚を覚えます。アルというサービスがあって、マンガを読む機会が増えました。読む作品の幅も広がりました。ありがとう。
イヤフォンをして、「海蔵亮太」さんが歌うカバーソングの「接吻」を聴きながら『プリンセスメゾン』を読んでいます。
優しくて切なくなる歌が作品と混じり合い、さらに作品の世界に惹きこまれていきます。
音楽を聴きながらマンガを読める幸せ。それもまた日常の些細な幸せですよね。ではまた。
【編集部から】 人の想像力に限りはありません。コマの中にある「白い部分」でさえ、そこには意図があり、マンガを読む者はそれを紐解こうと夢中になります。 声なき声を聴く力、絵なき絵を観る力。『プリンセスメゾン』はそれを要求し、kazさんはそれに一生懸命応えていました。 何年後か何十年後か、人生を重ねたkazさんが沼ちゃんが泣く理由に気付く時を待っています!その時はご一報下さいね! ご応募、ありがとうございました!
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