『ランウェイで笑って』は2017年から「週刊少年マガジン」にて連載されている猪ノ谷言葉氏の連載デビュー作である。2019年8月現在も絶賛連載中である。
ファッションを題材としており、トップモデルを目指す少女とファッションデザイナーを夢見る少年が、周囲から叶わないと言われながらも夢に向かって走り続ける姿を描く。
「これは君の物語 ―」
パリコレモデルを目指す女子高生、藤戸千雪と、同級生でファッションデザイナーを夢見る都村育人の物語。
2人の夢の前には大きな壁が立ちはだかっている。
千雪は、モデルにとって最低条件の身長に達しない小さな身体。育人は、子供4人を女手一つで育ててきた母や姉妹のため、デザイン学校へ通うお金も時間もない。
目の前に現れた自分
モデル事務所を経営する父親や、憧れのモデルからも「無理」と言われ続けてきた千雪。持ち前の強さでモデルを目指し走り続けてきたが、育人と出会い、彼を通して、
「目指したいものがあっても生まれ持ったモノがそれを許してくれない」
そう本心では自分も「無理」だと思っていることを悟る。
そんな、自分が吐き出してしまった思いを払拭するために、千雪は育人と前に進む決意をする。「私でもパリコレに出るのは(君でもデザイナーになるのは)無理じゃないって、わたしのためにも証明したいんだよ…」
自分に泣いて、自分に笑う物語
本作のテーマは、「家族愛」と「自分を生きる」だと思う。
「家族愛」については、主に育人と家族のお話。4人の子供を育てるために過労で倒れた母と、家族思いの姉妹達と、優しすぎる長男。互いに自分よりも相手を想う姿に、何度も何度も泣かされる。毎巻泣かされる。この1コマを見るだけで涙腺が崩壊する…。
「自分を生きる」については、夢や好きなことがあっても、他人の目を気にして自分自身に言い訳して諦めてしまう人がいる。自分には分不相応だ、身の丈に合わないことは恥をかくだけ。そんなことを考えて躊躇してしまう。
「モデルはランウェイじゃ笑っちゃいけない。そういう暗黙の了解だし…」作中の言葉だが、そんな暗黙の了解や周りの視線なんて全部無視して、笑いたくなったら笑っちゃえばいい。だって、そのランウェイでやっているのは「君の物語」なのだから。自分のためにやるものなのだから。
そんな、家族愛に溢れ、人生を応援してくれる魅力に満ちたマンガである。