「書を護ること、それ即ち世界を護ること也」
これは書と知を巡る冒険譚。そして私たちの背中を押してくれる物語。
あらすじ
ヒューロン族の小さな村に住む少年、シオ・フミス。勉強熱心で本が大好きな彼はしかし、混血による緑の目と金髪、そして長く尖った耳という特長的な外見から周りの子どもたちにからかわれ、大人たちから無視され、また貧民街に住むというだけで図書館に入ることすら許されず窮屈な日々を過ごしていた。
それでも必死の稼ぎで彼を支える姉のため、そして大好きな本のため学校に通い続けているシオ。彼は夢見ていた。いつか物語の主人公がやってきて、自分を救い出してくれる日が来るとー。
そんなある日、大陸中央の街、本の都「アフツァック」から魔術書の調査として「司書(カフナ)」の一団が訪れる。アフツァックの中央図書館には大陸中の本が集まると言われ、そこで数多の本を護るカフナは超難関の試験を勝ち抜いたエリートたちであった。
村を訪れたカフナの1人、セドナと言葉を交わすシオ。飄々として自信に満ち、心から本を愛し、そして魔術で自由に風を操るセドナにシオは憧れていた主人公を重ねる。しかしこの出会いによって彼は理解する。待つだけでは何も変わらないのだと。そして自らもまたカフナを目指すことを決意するのだったー。
一歩踏み出したくなる物語
セドナと出会い、シオの物語は大きく動き出します。それと同時に、シオの活躍を追うあなたの人生も少し違ったものになっていくかもしれません。
仕事や学業に追われ、無為に日々を過ごし、漠然と時間を消費する…忙しく過ぎる現代社会において、気付けばそんな生活を過ごしている人も多いのではないでしょうか。『図書館の大魔術師』にはそんな毎日を振り返り、活力を与え、人生の主人公は自分自身なのだともう一度気付かせてくれる、物語と言葉の力が溢れています。
長ったらしい説明など野暮。ここでは雄弁なコマたちに語ってもらいましょう。
表紙に隠された謎
原作: 「風のカフナ」
著: ソフィ・シュイム
実はこのマンガには原作があり、これを「濱田泰斗」さんが翻訳し、泉光先生が作画を担当しているという形になっています。
しかしこのソフィ・シュイムも「風のカフナ」も、私たちの世界には存在しない、少なくとも記録には残っていない名前。そう、これはシオたちが生きる世界の誰かが後に書き残した冒険譚を、マンガという形で現代の世界に翻訳したものなのです。
ではソフィ・シュイムとは誰なのか?少しだけ考察してみると…
「風」のカフナという題名
*シオは今のところ風ではなく水のマナ属性が強いとされています。冒頭に出てくる、「この物語を 私の英雄のために」という献辞
謎解きの基本であるアナグラム
これらの手掛かりを考慮すれば、本当の作者が誰なのかもうっすらと想像がつく気がします。
ただこの物語の懐の深さを考えると、単純な謎解きには収まらないさらに深い真実が隠されていても全く不思議ではありません。これらの謎を解くには、繰り返し頁をめくり、世界に入り込み、冒険し、自らの知と意志で考えていく必要があるでしょう。
今こそ冒険の時
さあ、ただ運命の迎えを待つ時間は終わりました。
まずはその手で表紙をめくることから始めましょう!
「本の知識とは偉大なものだが、経験に勝ることは決してできない」
ー2巻冒頭よりー