大奥

よしながふみ / 著

男子のみを襲う謎の疫病が国中に流行り、男子の数が激減。男女の立場が逆転した世界に生まれた貧乏旗本の水野は、大奥へ奉公することを決意する。女性の将軍に仕える美男三千人が集められた女人禁制の場所・大奥で巻き起こる事件とは…!?

作品概要

よしながふみ先生の『大奥』は、2004年から2020年12月28日発売の白泉社「MELODY」2021年2月号まで連載された、男女逆転した徳川家と大奥を描く歴史ドラマです。2010年に二宮和也さん、柴咲コウさんの出演で実写映画化、2012年には堺雅人さん主演で、続編となる映画やドラマが公開されました。

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あらすじ

全国に蔓延した疫病・赤面疱瘡(あかづらほうそう)により、若い男性の死亡率が上昇。治療法は見つからず、八十年ほどの時を経て、男性の人口は女性の四分の一ほどで落ち着きます。この間に男女の役割が逆転し、家を継ぐのも女性が主体となり、婿を取れない貧しい女たちは、花街で男を買って種をつけてもらって子どもを産むようになったのです。

代々、男が継ぐことになっていた徳川将軍家も例外ではなく、三代将軍家光の頃から女性が将軍職を継ぐようになりました。そして、将軍に仕える大奥には、色男のみが八百名近く集められたのです。

男性限定の大奥には、特殊な決まりもありました。未婚の将軍の初めての相手をする男子は「ご内証の方」と呼ばれ、夜伽の手ほどきをするという役目を授けられます。しかし同時に、将軍の体を破瓜(はか)して傷つける大罪人でもあるとされ、勤めを終えた十日後には内々に打ち首にされるのです。大奥に入った若者たちは、この決まりを知らずに、将軍から声がかかるよう競い合っていたのでした。

作品の魅力

男女逆転の世界観でありながら史実に沿って物語が展開し、女性将軍と大奥に仕える男たちの愛や苦悩、権力争いが描かれているところが魅力です。登場人物も女性名が男性名に変わっていたり、実際にあった歴史上の出来事が男女逆転のまま描かれていたりなど、もう一つの日本の姿を見ているかのようです。

受賞歴

2005年

第5回センス・オブ・ジェンダー賞特別賞

2006年

第10回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞

2009年

第13回手塚治虫文化賞マンガ大賞

2010年

2009年度ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞

2011年

第56回小学館漫画賞少女向け部門

2020年

10月累計発行部数600万部を突破

作者情報

よしながふみ先生は1971年生まれの東京都出身で、1994年に『月とサンダル』でデビューされました。『西洋骨董洋菓子店』で第26回講談社漫画賞少女部門、『大奥』で第5回センス・オブ・ジェンダー賞特別賞、第10回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第13回手塚治虫文化賞マンガ大賞、2009年度ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞、第56回小学館漫画賞少女向け部門を受賞。『きのう何食べた?』が2019年にTVドラマ化。代表作は他に『愛すべき娘たち』『愛がなくても喰ってゆけます。』『フラワー・オブ・ライフ』など。

実写化情報

大奥

2010年10月1日に映画『大奥』公開

出演

水野祐之進:二宮和也
徳川吉宗:柴咲コウ
お信:堀北真希
大倉忠義:鶴岡
玉木宏:松島
水野頼宣(水野の母):倍賞美津子
加納久通:和久井映見
杉下:阿部サダヲ
藤波:佐々木蔵之介
副島:ムロツヨシ

スタッフ

監督:金子文紀
脚本:高橋ナツコ
エグゼクティブプロデューサー:豊島雅郎 濱名一哉

大奥〜誕生[有功・家光篇]

2012年10月から12月までTBSでドラマが公開されました。

👉TBS公式サイト

出演

万里小路有功 (までのこうじありこと):堺雅人
徳川家光 (とくがわいえみつ):多部未華子
玉栄 (ぎょくえい):田中聖 (KAT-TUN)
稲葉正勝 (いなばまさかつ):平山浩行
雪 (ゆき):南沢奈央
村瀬正資 (むらせまさすけ):尾美としのり
松平信綱 (まつだいらのぶつな):段田安則
澤村伝右衛門 (さわむらでんえもん):内藤剛志
春日局 (かすがのつぼね):麻生祐未

スタッフ

脚本:神山由美子
プロデューサー:磯山晶、荒木美也子(アスミック・エースエンタテインメント)

主題歌

『DEEPNESS』MISIA(Ariola Japan)

大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]

2012年12月に映画『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』公開

👉TBS公式サイト

出演

右衛門佐:堺雅人
徳川綱吉:菅野美穂
柳沢吉保:尾野真千子
秋本:柄本佑
玉栄:田中聖
伝兵衛:要潤
御台所・信平:宮藤官九郎
桂昌院:西田敏行
牧野備後守成貞:市毛良枝
阿久里:榎木孝明
水無瀬権中納言氏信:由紀さおり
隆光:堺正章

スタッフ

監督:金子文紀
脚本:神山由美子

豆知識

2021年2月16日に最終19巻が発売されます。最終巻は通常版と特装版があり、特装版では、よしながふみ先生と堺雅人さんの対談も収録されています。

堺雅人さんは『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』で共演した菅野美穂と2013年に結婚。作品がビッグカップル誕生のきっかけにもなりました。

登場人物紹介

徳川吉宗(とくがわ よしむね) / 信(のぶ)

質素倹約を旨とする八代将軍。婿のもらい手がすぐに見つかるであろう三十五歳以下の眉目秀麗な男子全員に暇を取らせるなど、大奥の大改革を行いました。仰々しい夜伽の作法を嫌い、庭で男を襲うような一面も。大奥のできごとの全てを記録する役職、御右筆頭(ごゆうひつがしら)の村瀬を訪ね、将軍家と大奥の歴史を紐解きます。

水野祐之進(みずの ゆうのしん) / 進吉(しんきち)

貧乏旗本の息子ですが、家族からは客を取らされることなく、好意でお金のない女たちに種付けしていました。婿に行きたくないがために、自ら大奥入りを決め、吉宗に夜伽を命じられます。「ご内証の方」として打ち首になるはずでしたが、吉宗の裁量によって進吉として生かされ、お信のもとに戻ります。剣術の達人。

お信(おのぶ)

薬種問屋の田嶋屋の跡取り娘で、祐之進の幼なじみ。祐之進とは密かに愛し合う仲でした。

加納遠江守久通(かのう とおとうみのかみ ひさみち)/おみつ

幼い頃から吉宗に仕えてきた吉宗の片腕的存在。吉宗を将軍にするために、本人の知らぬところで暗躍していました。

徳川家光(とくがわ いえみつ)

幼い頃から病弱で女にほとんど興味を示さず、赤面疱瘡により三十一歳で死去。

千恵

家光が市中で見つけた女・お彩(さい)を戯れに手ごめにしてできた娘。家光亡き後、徳川家の血筋を伝える唯一の存在として、春日局に連れ去られ匿われていました。十五歳の時に男に襲われ妊娠しますが、生まれてすぐに亡くなります。襲った男はその場で手打ちに。澤村に命じて江戸の女たちの髪を切らせていました。お楽との間に千代姫を授かります。側室は他に、お夏、お玉。不幸な生い立ちではありましたが、類まれな政治手腕を発揮します。

春日局(かすがのつぼね)

大奥の日記「没日録」を付けるように命じた大奥総取締の女性。「没日録」は、この国が滅びる行く末を見届けよという意味でつけられた名前で、のちに吉宗によって閲覧され、将軍家と大奥の歴史が紐解かれることになります。江戸城では将軍の生母に等しい権勢をふるっていました。また、男性ばかりの大奥はもともと、江戸城に敵が攻め入った時に将軍を守る砦として生まれたもので、男性たちは兵士の役割を持っていました。

万里小路有功(までのこうじ ありこと)/お万の方

公家・万里小路有純卿の三男で、慶光院の新院主となった際に跡目相続の御礼を伝えるために、玉栄と共に江戸へ向かいます。美形の有功を見た春日局に、還俗(げんぞく)を強要され、大奥に入ることに。やがて「お万の方」と呼ばれ、千恵の苦しみに気づいた後は相思相愛の仲となり、千恵を支えます。やがて大奥総取締として大奥を取り仕切り、礎を築きます。

玉栄(ぎょくえい)/ お玉

有功について江戸にきた小僧で、両親に死なれて身寄りのないところを有功に助けられて恩義を感じています。有功と共に還俗し、大奥に入って有功を守ろうとしますが、逆に大奥の角南重郷(すなみしげさと)らに襲われます。千恵から有功に贈られた猫の若紫を斬り、犯人を重郷に仕立て上げて切腹に追い込みます。有功に頼まれて千恵との間に徳子(五代将軍)をもうけます。千恵の死後は桂昌院(けいしょういん)と名を改めます。徳子に子ができないのは、自分がかつて猫を殺したせいではないかと考え、これが生類憐みの令が制定されるきっかけとなります。

稲葉正勝(いなば まさかつ)

春日局の実子で、家光公が亡くなって千恵が将軍職を継ぐまでの間、春日局の命で影武者として家光を演じます。千恵の死の後に殉死。

徳川家綱(とくがわ いえつな) / 千代姫(ちよひめ)

家光(千恵)とお楽の娘で四代将軍。政治に関心がなく、左様せい様と呼ばれるほど。有功を好いていましたが、子を成さずに死去。

徳川綱吉(とくがわ つなよし) / 徳子(とくこ)

五代将軍で家光と玉栄の娘。牧野成貞の夫を寝取り、息子の貞安も誘惑。父の桂昌院を満足させるため、閉経してもなお、子づくりに励みます。

柳沢吉保(やなぎさわ よしやす) / おもと

綱吉の側用人で、綱吉に恋をしていました。

牧野邦久(まきの くにひさ) / 阿久里(あぐり)

牧野成貞の夫ですが、綱吉に女名である阿久里と名付けられ、関係を強要されます。

徳川家宣(とくがわ いえのぶ)

六代将軍で家光(千恵)の側室お夏の方の孫。

間部詮房(まなべ あきふさ) / おふさ

6代将軍家宣と7代将軍家継の側用人を務めていた女性ですが、贅を尽くした衣服を吉宗に献上して怒りを買い、暇を申し付けられます。元は猿楽師。仏門に入り月光院となった左京の方に惚れこまれます。

徳川家継(とくがわ いえつぐ)

勝田左京(左京の方)と家宣の娘。7代将軍ですが、病のために幼くして亡くなります。

田沼意次(たぬま おきつぐ) / 龍(たつ)

吉宗の長女、身体に障がいをもっていた徳川家重の側近。

平賀源内(ひらが げんない)

田沼意次の命で赤面疱瘡撲滅のために研究を続ける女性研究者。赤面疱瘡の予防のために種痘ができる毒性の低い患者を探すために全国を巡ります。暴漢に襲われた際に梅毒をうつされて死去。

吾作(ごさく) / 青沼(あおぬま)

金髪碧眼の青年。源内と共に赤面疱瘡の治療法を確立させるために尽力します。石鹸を使った衛生管理を大奥に広めます。人痘が成功し、大奥に広めましたが、副作用で松平定信の甥が死亡し、後ろ盾であった田沼の失脚もあって死罪に処されます。しかし、この人痘摂取により、国内の男子の人数は急速に回復していきます。

徳川家斉(とくがわ いえなり)

11代将軍。2代将軍秀忠以来の男将軍ですが、実権は母の治済が握っていました。

徳川治済

家斉の実母で気に入らない者を排除しまくる怪物。

松平定信(まつだいら さだのぶ)

蘭学を禁止する「寛政異学の禁」を発布。

黒木良順(くろき りょうじゅん)

かつて青沼らと蘭学を学んでいた村医者。家斉の命で極秘裏に赤面疱瘡の撲滅に取り組みます。

徳川家慶(とくがわ いえよし)

12代将軍。娘の祥子(家定)を溺愛。

徳川家定(とくがわ いえさだ)/祥子

13代将軍。父からの度重なる性的虐待に苦しんでいましたが、老中・阿部正弘の尽力で父を遠ざけます。御台所は島津胤篤(のちの天璋院篤姫)。

徳川家茂(とくがわ いえもち)

14代将軍。孝明天皇の弟である内親王・和宮と婚姻しますが、和宮はニセモノで、親子(ちかこ)が身代わりとして降嫁していました。

徳川慶喜(とくがわ よしのぶ)

15代で徳川家最後の将軍。

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