太陽と月の鋼

松浦だるま / 著

『太陽と月の鋼』刀に触れられない武士と美しい嫁の怪異譚

累-かさね-』の松浦だるま先生による『太陽と月の鋼』は、近づいた金属がぐにゃぐにゃになるという奇怪な体質のために、刀を持てない武士・竜土(りゅうど)鋼之助と、彼のもとに多額の支度金を持って嫁ぎにきた月という名の女性を巡る怪異譚です。

本記事には第一話及びそれ以降のネタバレが含まれています。よろしければ先に第一話の試し読みをどうぞ。

金属に触れられない男

鋼之助は幼い頃から、体に近づいたあらゆる金属が全てひん曲がってしまうという特殊な体質の持ち主でした。そのため武士でありながら刀を持つこともできず、せめて武士らしく斬られて死のうと、自分をからかう武士たちにケンカを売ります。しかし、斬りつけられる直前に相手の刀がぐにゃぐにゃと曲がってしまい、死ぬことすら叶わずにいました。

持ち込まれた美女との縁談

金属に触れられないために仕事ができず、貧しくなるばかりの鋼之助のもとに、ある日、異様なまでに美しい女性・月との縁談が持ち込まれます。さらに彼女は、支度金として百両を持参したというのです。

貧しさから一度は縁談を受けた鋼之助ですが、武士なのに刀を持つこともできない惨めさから、すぐに離縁を申し出ます。しかし月は頑なに離れようとせず、従者の乙吉に聞きながら家の掃除や炊事をこなすようになります。

守れなかった母の呪い

鋼之助は幼い頃、ゴロツキに襲われて母を守れず失ったことがありました。このことが「真剣を持てなければ大事な人を守れない」という呪いとなって、長い間、鋼之助を苦しめていました。ですが、刀なしに月を暴漢から守った後、刀のあるなしに関わらず、もう立派な武士じゃないかと月から諭され、月を大事に想うようになったのでした。

水を操る陰陽師

ようやく仕事をもらうことができ、月との生活も安定しそうだと思われたところで、鋼之助の家に陰陽師の夜刀川瞠介(やつがわどうすけ)という者が現れます。瞠介は周囲の水分を奪う通力によって屋敷全体に呪いをかけ、月を連れ戻しに来たと鋼之助に言い放ちます。

太陽は何を意味するのか

鋼之助と月の夫婦を追いながら物語は進んでいきますが、気になるのはタイトルにある「太陽」です。鋼之助と月だけであれば、「月と鋼」や「月の鋼」などでも良さそうなのに、最初に太陽がきているのは、なぜなのかがとても気になります。物語が進むにつれて、太陽が意味するものも明らかになってくるのでしょうか。

宿命の女・月の正体とは

月は、鋼之助と出会う前から鋼之助のことを知っていたようなそぶりがあります。また、通力を使うような奇怪な者たちと近い存在のようです。

月は、右目の下にほくろがあるキレイな女性なのですが、瞳の描写がとても美しいので、ぜひ注目してみてください。わずかに細めた視線に鋼之助への愛情が感じられたり、大きく見開いた瞳に意志の強さが感じられたり。初登場時の白無垢姿の月の照れたような笑い方は、とても愛らしいです。

愛した人を守り切れるのか

刀を持てない鋼之助は、武士として月を守り抜くことができるのか。二人の今後が見逃せません!

太陽と月の鋼(1) (ビッグコミックス)
松浦だるま/著