終末のワルキューレ

アジチカ / 作画 梅村真也 / 原作 フクイタクミ / 構成

『終末のワルキューレ』で人類の極致による神殺しを目撃すべし!

普通どんなバトルマンガも、最低限の条件があると思うんです。それは「主人公が何とかすれば敵に勝てるんじゃないか」という希望があること。例えどんな敵であっても、主人公が怒りに目覚める、修行期間を置く、何かしらの覚醒イベントがある、たぶんそうすれば敵に勝てる、そして物語は大団円を迎えるだろう――。

終末のワルキューレ
アジチカ/著 梅村真也/著 フクイタクミ/著

終末のワルキューレ (全4巻) Kindle版

いやでも、神に勝つのは無理じゃない?

そんな不安を覚えるくらい、少年漫画的な一切の希望と設定をかなぐり捨てているにも関わらず『終末のワルキューレ』は、どこまでも少年漫画で、本当に面白い。神の精鋭 VS 人類の精鋭の13名が神界で全力バトルを繰り広げるマンガです。

最新4巻までは下記のような興奮必至の対戦カードでした。

<第一戦>
北欧神話最強の雷神・トール
VS
三国志最強の武将・呂布奉先

<第二戦>
神筆頭の全能神・ゼウス
VS
人類筆頭の最初の男・アダム

<第三戦>
原初からの完全無欠・ポセイドン
VS
敗者からの天下無双・佐々木小次郎

……いや、やっぱり無理じゃない?

勝てるわけがない。相手完全に神だし。そう思いますよね。「アダムって何できるんだよ。だいたい何で小次郎なんだよ。そこは宮本武蔵だろ」って思うじゃないですか。そう思ってしまったあなたは、もう完全に『終末のワルキューレ』マジックの虜になってしまうでしょう。

両陣営13名は「それなー!」と唸ってしまうメンツ。

神 VS 人類の無謀すぎる戦い

物語は神々の会議、「人類存亡会議」のシーンから始まります。世界各国の神々による1000年ごとに開かれるこの「人類存亡会議」にて、次の1000年、人類を存続させるかの是非が決定されるのです。人類の知らないところで。

しかし人類の堕落的な営みを見て、次の1000年存続へ「NO」を次々と突きつける神々。その一方的な断罪が決議されようとする瞬間、半神半人であるブリュンヒルデが強行に異議を申し立てます。

人の魂の導き手、戦乙女であるブリュンヒルデは、他の神々よりも人間との絆が強く、人類を滅ぼすことをおめおめと看過できなかったのです。

そこで、神 VS 人類のタイマン13番勝負、「ラグナロク」を強引に可決させ、神の精鋭と人類の歴史上の代表13名が戦うという無茶振り甚だしい戦いの幕が上がりました。

神々を煽りに煽るブリュンヒルデ。

アダムが見せる圧倒的父性愛

『終末のワルキューレ』は現在の最新刊4巻まで刊行されています。その中でも僕が本当に好きなベストバウトはゼウス VS アダムの一戦です。ちなみに公式アカウントでおこなわれた、読者へ好きなシーンのアンケートの結果が下記でした。

みんなもアダムが大好きッッ!!

それもそもはず。この戦いは全人類にとってメチャクチャ熱いんです。読者はまず「アダムは何ができるんだ?」と思っていたはずなんです。バトルマンガですもんね。人類最初の男はいったい何ができるんだ? 言うなれば、アダムを侮っているはずです。

しかし一度読めば誰もが気づくでしょう。アダムが男であると同時に、父であることを。そして思い出すはずです。「誰にとっても父は強い存在なのだ」ということを。そして「アダム勝ってくれ!」と願わずにはいられなくなる。

キモいゼウスにアダムは飄々と対峙する。

圧倒的力技で人類の底力が描かれる

もちろんアダムは、実は神に対抗しうる能力を引っさげているからこそ参戦し、そしてその戦いざまは圧巻です。しかし、それよりもキャラクターから匂い立つ「なぜ戦うのか?」という理由が、戦いを、マンガを、力強く脈動させています。

そう、『終末のワルキューレ』は、強さが全てのただのバトルマンガではないんです。偉人の、その個々の背景がバトルを支える骨子となり、その偉人に関する前提知識が惜しむことなく披露され、人類共通の感情と、人類読者の誇りを掘り起こすマンガなのです!

バトルのリングアナウンサーの言葉選びが秀逸であったり、観客として出演する他の偉人の言動に共感したり、まるでミュージカルのようなテンポの良いコマ割り、あと戦乙女が何をしているかなど、まだまだ語り足りないのですが、全部マンガでご確認ください!

『終末のワルキューレ』は人類存亡を賭けた「無茶」振りの極致だけれど「無理」じゃない! 「人類TUEEEE!」を心ゆくまで堪能するマンガです! ぜひどうぞ!

なんと一話はTwitterで全公開されていますので必読です!

終末のワルキューレ (全4巻) Kindle版