あらすじ
少女小説家である高代槙生(こうだい・まきお)は、姉夫婦の葬式で、遺児の田汲朝(たくみ・あさ)を引き取った。朝との同居生活がはじまるも、槙生は「家の中に自分以外の誰か」がいることに困難を感じるように。槙生の人見知りは、亡くなった姉である実里(みのり)と深く根付いていた。そして朝もまた、15歳という多感な時期に、自分の中にある母・実里の記憶と葛藤していた。
槙生は、少女小説家として培った「言葉のちから」によって、朝の苦しみをひとつひとつ解いていく。それは実里に苦しめられていたかつての自分への救済でもあった。
「人と隔絶して生きることを選んだ」槙生と、「ある日突然孤独になってしまった」朝、異なる孤独を抱えた二人は、同居をきっかけに、人との繋がりを取り戻していく。
豆知識
槙生が朝の親友・えみりに貸したDVDのタイトルは『フライドグリーントマト』。
朝に勧めたのは『マッドマックス 怒りのデスロード』
受賞歴
・このマンガがすごい!2020 オンナ編:第10位
・このマンガがすごい!2019 オンナ編:第4位
・俺マン2019:第4位
掲載誌
祥伝社の「フィール・ヤング」にて2017年から掲載
作品の魅力
主人公の槙生(まきお)はとても人見知り。読んでいる私たちの中にも、程度の差はあれど「槙生」がいます。
現実に生きる私たちも、人とうまく付きあえなかったり、それを責められてさらに心を閉ざしたり、ということをしばしば経験しますよね。まして、朝と同じ15歳の頃には、人からすれば些細なことに、深く傷ついたり…
少女小説家である槙生が、15歳の朝に向けた、まっすぐで柔らかい、言葉たち。私たちのだれもが経験する多感な時期の、蓄積された心の”澱(おり)”を、丁寧に掬いとってくれます。
槙生の言葉は、いつも解決策を教えてくれるわけではありません。ただ、あるがままを提示するだけだったり、ときには槙生本人も分からなくてぐるぐるしたり。それでも、槙生が選んだ言葉たちは、私たちの心の孤独な部分を、ほんのりと照らしてくれます。
作者情報
作者のヤマシタトモコ先生は、「ねこぜの夜明け前」で2005年アフタヌーン四季賞(夏)を受賞。
『FEEL YOUNG』等の女性誌、『月刊アフタヌーン』等の青年誌で、作品を執筆している。