重版出来!

松田奈緒子/著

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『重版出来!』マンガ愛が詰まった編集者お仕事マンガ

「重版出来(じゅうはんしゅったい)」という言葉は、本が売り切れ再度刷ることを「重版」と呼び、重版が出来たことを意味します。

重版出来!

マンガや本が好きな方は見聞きしたことがあるのではないでしょうか?

その言葉をタイトルにした作品『重版出来!』はマンガが重版出来する為に日々努力するマンガ編集者をはじめとするマンガ・出版業界で働く人々の奮闘記です。

あらすじ

大学まで柔道一筋で生きて来た主人公・黒沢心

重版出来!

怪我によりオリンピックの道が絶たれてしまった彼女はこれから自分が何をしたいか考え、柔道を始めたきっかけや辛い練習の支えであったり、海外選手とのコミュニケーションのツールとしていつも身近にあった存在・マンガに携わる仕事をしたいと思い出版社にマンガ編集者として入社します。

スランプに陥った大御所マンガ家・三蔵山の危機を救ったり、

重版出来!

営業の小泉と共に書店行脚し作品を広めたりとマンガを売る為の努力を惜しまない姿勢で仕事を全うしていきます。

重版出来!

時には失敗したり、初めて担当することになったマンガ家志望者の東江中田と上手くいかず一時期袂を分かつことになったりと苦い経験もしますが、失敗をバネにして挽回していく成長物語です。

重版出来!

マンガを支える人達の裏側

編集者の黒沢以外にも様々な職種の人物が登場し、マンガが出来て読者の手に届くまでの過程で多くの人々が関わっていることがわかります。

重版出来!

営業、本屋の店員、製版所のDTPオペレーター、表紙のデザイナー、校閲者等の人々の活躍を垣間見ることでよりマンガのカバーや単行本に愛着が湧いて来ます!

重版出来!

作者の松田先生と担当編集者の山内さんによる職人・各業界への徹底した取材を元にエピソードが制作されていることで成立するエピソードが満載です。

また、「アル」では担当編集者の山内さんのインタビューを読むことが出来ますのでこちらも併せて読むとより世界観への理解が深まりますよ!

▼担当編集者・山内さんインタビュー

登場人物達の悲喜こもごも

個人的に黒沢がスポーツを辞めて編集者になったり、マンガの為に奔走する姿を見ているとかつて土田世紀先生が描いた名作『編集王』を思い出し胸が熱くなってきます!

黒沢の入社先の興都館の社長の本への並々ならぬ感謝と恩返しをしたいという気持ちが描かれたシーンも胸を掴まれました。

重版出来!

そんな出版業界への情熱が描かれる一方で、ある事件を境に情熱を喪い冷徹なマンガ編集者になってしまた安井

重版出来!

幼い頃親に虐待されマンガの存在だけを心の支えにし絶対にマンガ家になると決めた中田の感情の不器用さ、

重版出来!

アルコール依存症になってしまった元人気マンガ家を父に持つアユの心を閉ざした様や

重版出来!

中田のマンガの才能・執念に圧倒され自分の限界を認識しプロの道を断念することにした三蔵山のアシスタント・沼田の姿といった悲しさを背負う人々にも焦点を当てています。

重版出来!

彼らがこれからどの様に前進していくかということにも注目して読んで欲しいです。

そして実は黒沢の先輩の編集者・五百旗頭(いおきべ)は『重版出来!』より前に別の作品『少女漫画』で離婚経験をしている少女マンガの編集者として登場している人物なので本作で新しい春が迎えられるのかも個人的に気になっています!

重版出来!

マンガの技術も盛りだくさん!

作中にはマンガ家も数多く登場し、マンガを制作する上でのテクニックも満載です。

特にマンガ家・高畑が紹介している電子書籍で読まれることを意識したコマ割りや

重版出来!

食事シーンを描く際の「箸あげ」表現について等のテクニックは実際にマンガを制作する人達にも参考になる内容なのではないでしょうか?

重版出来!

マンガ制作の参考書としてもオススメしたいです!

マンガ業界は変わり続けても

連載が掲載されている『月刊!スピリッツ』本誌では紙媒体の雑誌、単行本に関する内容に留まらず電子書籍やイラスト・マンガ制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」についてのエピソードが公開されており、マンガに関するサービスやコンテンツがデジタルに移行しつつある現代の様子も正面から描いています。

それ故に『重版出来!』の最後、そして出版業界の行く末がどうなっていくのか知る由もありません。

ですがこれからもマンガが好きで読む人、マンガを描く人、マンガに携わっていく人のアツいマンガ愛は消えることは無いのだということをこの作品は伝え続けてくれます。

重版出来!

▼第1話試し読み

重版出来!
松田奈緒子/著