26歳になった菜穂には、後悔していることがある。高校生の頃に好きだった人・翔(かける)の「死」を防げなかったこと。
菜穂は10年後の自分からの手紙を受け取る。そこにはこれから起こる未来と、翔のことを救って欲しいという願いが書かれていた。
『orange』は出版社が変わりながらも連載は続き、実写映画やアニメ化などマルチメディア展開も成功、今なお高い人気を誇る作品です。
弱虫な自分との決別
最初は半信半疑だった菜穂も、手紙に書かれた出来事が実際に起こることで、手紙の内容を信じ始める。ソフトボールの代打を断ること、翔にお弁当を作らなかったこと、心に刺さりつづけていた小さな後悔が、16歳の菜穂によって1つずつ解消されていく。その過程で菜穂は、臆病だった自分を変える勇気を身につける。
縄手通り、横 pic.twitter.com/2jW255pKvq— 高野 苺 (@ichigo_takano) August 7, 2019
母の死を悔やみ続ける翔
「翔がかなしそうにしていたら、いつでも助けてあげてほしい」
菜穂は手紙の言葉に従い、勇気を出して翔に声をかける。始業式のあと2週間、 翔は学校に来なかった。その理由は翔の母の自殺だった。
手紙にも始業式のことは書かれていたが、菜穂はまだ手紙のことを信じていなかった。
そして「翔を誘うな」という手紙の言葉に従わず、みんなで遊びに行ってしまったのだ。
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翔の死は本当に事故だったのか
17歳の冬に事故で死んだ翔。彼の死は本当に事故だったのか。
始業式の日、翔は母親に付き添って病院に行くはずだった。約束を破ったことが、母を自殺に追いやったんじゃないか。翔はずっと自分を責め続けていた。
みんなで遺した未来の自分への手紙にも、翔は自分のことを書いていない。まるで、未来に自分がいないことを知ってるかのように…
そして、運命の日。
「一口ちょうだい」 pic.twitter.com/SXUOMIrDir— 高野 苺 (@ichigo_takano) August 5, 2019
「死」という重いテーマと対比して、当たり前の日常がより輝いて感じられるところが『orange』の魅力。
カルピス味のソフトクリーム、友達とおそろいのショートパンツを買ったこと。
一度読み終わった後にもう一度読み返すと、過ぎ去った毎日の大切さに胸がしびれる。
翔が生きていることで失われるもう一つの未来
菜穂を想い続けていた須和。翔が亡くなった世界では、須和は菜穂と結婚し、子どももできて幸せに暮らしている。翔のことが好きだった菜穂は、翔が生きている世界で須和を選ぶだろうか。
誰かが叶えられた未来の裏に、誰かの叶わなかった未来がある。
未来の須和が10年前の自分に残した手紙には、一枚の写真が添えられていた。
大切な人 pic.twitter.com/7g1hBaTouQ— 高野 苺 (@ichigo_takano) January 28, 2019
大切なものはいつも、なくしてから気づく。
「大切なものを失わないで」
未来からの手紙は、あなたに届いてますか?