いつも憂き世にこめのめし

にくまん子 / 著

『いつも憂き世にこめのめし』普通のはずの日常に見え隠れする生々しさの塊

恋煮込み愛つゆだく大盛り』などで、世間の心をわしづかみにしたにくまん子先生の最新作『いつも憂き世にこめのめし』が2021年8月12日に発売されました!

アラサーは通り越し、付きあってからもう3年。結婚はしていない。そんな恋人との何気ない同棲生活をきりとった日常マンガです!

アラサーを過ぎた男女、居心地がいいだけの同棲生活

いつも憂き世にこめのめし』は、にくまん子先生が過去に書かれていた同人誌に大幅な描き下ろしを加えて出版された作品です。短いものは1ページから。長くても数ページ程度の短編が多数収録されています。

お互いにいい年だし、3年付きあって同棲もしている。まわりには「結婚しないの?」と聞かれるけれど、別に結婚しないことにはこれといった理由はありません。でもまったく考えていないわけでもありません。ただ今は一緒にいて居心地がいい。だから一緒にいる。そんなどこまでも自然なふたりの日常が描かれています。

生々しさの源泉はどこにあるのか

面白くてかわいいのに、どこか生々しい。それが『いつも憂き世にこめのめし』をはじめ、にくまん子先生のマンガに共通する魅力ではないでしょうか。そしてわたしたちは、いったいどこにそんな生々しさを感じてしまうのでしょう。

一見ポップな表紙のイラストのなかにも生々しさが垣間見えます。男性と女性が囲んだテーブルに落ちてきているのは、ハサミやティッシュ、ハンガーなどの雑貨、パンやお菓子などの食品だけでなく、ブラジャーやパンツそれにコンドームなども描かれています。

それらは男女が生活していくなかで、あたりまえに存在するであろう雑貨です。しかし通常であれば、世間に公開する際には見せられるもの・見せられないものを選別して提示していくものです。にくまん子先生のもつ、見せる・見せないの線引きの独特さ。それがこの生々しさの源泉になっているのではないでしょうか。

また限られた少人数で生活していると、そこで行われる会話ややり取りはその空間で生活することに最適化していきます。みなさんも普通のことだと思っていたら、自分の家族だけのルールだったという経験がありませんか。

よく言えばそれは阿吽の呼吸というものでしょう。通常であれば、それはそこにいる人にしか理解できないやり取りであって、不特定多数の人が見ることはありえません。しかし『いつも憂き世にこめのめし』には、むしろそういった阿吽の呼吸にあふれているのです。

妹を心配しているのかと聞かれて、自分も年金を納めていると答えたり、高級店と大富豪の話をしていたのに、急にコンビニの冷やし中華の話が出てきたり。外から覗き見ている人にとっては驚くべき阿吽のやり取りが描かれているけれど、それこそがこのふたりのリアルな日常なのです。

独特の線引きをもって、ありのままのふたりの普通の姿を描く。その姿勢こそが『いつも憂き世にこめのめし』のもつ生々しさであると同時に、最大の魅力なのではないでしょうか。

にくまん子先生の作品を布教できる!

にくまん子先生は、現在「Ambass(アンバス)」というプラットフォームに登録しており、先生の作品を購入するだけでなく布教することもできます!

現在登録作品は『もしかしてたぶんそうかもねきっと』だけですが、今後どんどん増やしていくつもりのようです。詳細はこちら

また、にくまん子先生の過去作『恋煮込み愛つゆだく大盛り』のLINEスランプも発売されたばかりです!

いつも憂き世にこめのめし』を読んで、にくまん子先生を布教したい! と思った方は、作品そのものやLINEスタンプを送ってにくまん子先生の沼を広げていくのはいかがでしょうか!

生々しい!(良い意味で)

いつも憂き世にこめのめし (ビームコミックス)
にくまん子/著