男女性別問わずの恋模様や心の機微を描く名手、志村貴子先生。そんな先生が描く『おとなになっても』の最新刊第5巻が2021年9月13日に発売されます。ともに大人女子・綾乃と朱里の少しビターな恋模様を描いた作品です。
2人の恋は順調に進むどころか波乱だらけ。そして最新刊で物語は新たな局面を迎えます。綾乃の義妹・恵利の恋をきっかけに、綾乃夫婦と朱里は恵利をまじえて今後についての話し合いをすることに。
今回はそんな『おとなになっても』についてご紹介します！
ふいに動きだす女同士の恋
登場人物は小学校教師・綾乃とバーで働く朱里。綾乃は行きつけのバーで朱里と出会い、初対面ながら意気投合。朱里のアプローチがきっかけで、2人はなんとなく良い雰囲気になります。
しかし2人の恋はこのまま順調に…とはいきません。なぜなら綾乃は既婚者。2人の恋を進めるということは、不倫にあたります。そのうえ2人は同性同士。
突きつけられる現実に2人は心乱され、葛藤し、それでも少しずつ距離を縮めていきます。結末が見えない2人の恋物語に目が離せません！
周囲を巻き込み大波乱の恋
物語の見所はやはり、綾乃と朱里の恋模様。たび重なる偶然により2人の関係は少しずつ周りも巻き込み、複雑な関係へと進んでいきます。
朱里が綾乃夫婦（＋姑）の近所に引っ越してしまったり、その流れで綾乃夫と知り合いになってしまったり。話の流れで朱里の元カノ（既婚子持ち）主宰のバーベキューに朱里、綾乃夫婦で参加したり。…と読者も真っ青のドロドロな状況。
そのうえ2人の周りにはやっかいな姑に引きこもりの義妹、訳あってギクシャクしている生徒たちと何かありそうな人たちばかり。だからこそ2人を取り巻く人間関係、とても面白いです。この組み合わせで会話しちゃうの！？という意外な展開も楽しいです。
ともすれば昼ドラのような読み味になりそうですが、そこは『青い花』や『放浪息子』など数多くの名作を上梓され、デビュー以来多くの人に作品を支持されている志村先生。巧みな筆致によって綾乃と朱里の恋模様をみずみずしく描きます。そのおかげか本作も気持ち良くスッと読めてしまうから不思議です。
恋にもがく2人を応援したい
綾乃と朱里はどちらも35歳。それなりに長く生きてきたはずなのに、2人の恋は順調にはいきません。ふとした言葉や態度に心が揺さぶられ、葛藤し、うだうだしながらも少しずつ関係を進めていく2人。その心の揺れ動きが面白い！
志村先生の書かれるモノローグは量があってもよどみなく読ませてしまう力があるので、読み進めるうちに自然と登場人物たちを応援したくなります。2人の恋だけでなく、2人を取り巻く周りの人たちも、です。
それぞれのキャラクターに立場や信条があり、誰もが各々の正しいと思うことを口にします。だからこそ綾乃と朱里の恋はややこしく、少女マンガのように甘い展開に落ち着くとは到底思えないのです。だがそれが良い…！乗り越える障害があってこそ盛り上がる大人の百合！
密やかな恋は新たな局面へ
『おとなになっても』は講談社「Kiss」で連載中。大人になってもままならない2人の恋。その行末を是非、あなたも見届けてみませんか。
