月刊ミステリーボニータで連載されていた、吟鳥子先生による『きみを死なせないための物語』。2016年に連載開始されたこの作品が、2020年9月についに完結となりました。
遠い未来、地球に住めなくなり、宇宙の狭いコミュニティに追いやられた人類。彼らが幸せな生き方を模索する物語として、これまでに「このマンガがすごい!2018」オンナ編第7位を獲得したこともある作品となっています
通常の何倍も長生きする運命を課せられた新人類“ネオテニイ”の主人公・アラタ
いよっ アラタさん、肌色が入っていい感じになってきたね、ヒーローしてるよ!光ってる!きみはスタアだ!星空に光るアイコニック!キレてる!キレてるよ!このまま塗ろう!……と励ましながら続ける絵仕事 pic.twitter.com/6Vk7kLeBB0— 吟鳥子@8巻12/16発売「きみを死なせないための… (@gintoriko) September 5, 2019
この物語の主人公となるのは1人の日本人の少年・アラタ。しかし少年と言っても、アラタは選ばれし特別な人類である新人類“ネオテニイ”という存在なのです。
新人類“ネオテニイ”とは、普通の人に比べて何倍も寿命が長い人間のこと。まだまだ人類全体の母数として、“ネオテニイ”は数少ない希少な存在です。しかし彼らは人類が地球を追いやられ宇宙で暮らし始めてから、その生態系に順応すべく生まれてきた「進化した人類」とでも言うのでしょうか。
UCU(国連大学コクーン)で、幼なじみ4人や、ターラちゃんとアジアちゃんがよく食事をしたりお茶をしたりしているカフェテリアは、実は東京都立大学さんの食堂カフェテリアの風景そのままだったりです…… pic.twitter.com/EUBHGqCDGd— 吟鳥子@8巻12/16発売「きみを死なせないための… (@gintoriko) August 26, 2020
主人公のアラタ、そして彼の友人であるターラ、シーザー、ルイ。彼らは皆生まれや国籍こそ違えど、アラタと同じ“ネオテニイ”です。
先述の通り、地球を追われ人類は宇宙に居を移して以来、非常に狭く小さな空間の中で暮らすことを余儀なくされています。そこでの平和な暮らしを存続させるべく、このコミュニティに暮らす人々は非常にシステマチックな様々なルールで管轄されていました。
そんな近未来の社会で生きる4人は、ある日この世界にとって非公式な存在である緑髪の少女・祇園と出会います。彼女との出会いが、これから人間として生きていく4人の長い長い時間を、大きく変えていくこととなったのです。
宇宙や人類の幸せな生き方…壮大なテーマが作品の魅力
この物語の舞台となっているのは、私たちが今生きる現代からずっと遠い未来。人類は皆地球を追いやられ、宇宙に浮かぶ居住施設・コクーンで日々暮らしています。
そのコクーンでの人々の暮らしや、居住スペースから見える壮大な宇宙の景色など。近未来感やサイバースペース感満載の描写は、宇宙というテーマが好きな方にとってはたまらないものとなっているのではないでしょうか。
アラタさんが弟の大地にくっついていることが多いのも、一種の外界との遮断ですね(子ども時代の大地は、体温が高くて、割と安定した抑揚のない声の低めのタイプですね pic.twitter.com/fIK0c8MRaj— 吟鳥子@8巻12/16発売「きみを死なせないための… (@gintoriko) October 21, 2019
その壮大な住環境の中でも、人類の悩みは数千年、数万年経ってもきっと今と変わらないものもあるのでしょう。
アラタたちの生きる時代では、彼らのような”ネオテニイ”はいわゆる「普通の人類より優れた存在」としての扱いを受けています。多くの人の憧れの的である長命の”ネオテニイ”。ですが当然ながら人より長く生きてしまうということは、1人残らず大切な人の死を見届けることになる、ということでもあるのです。
ルイ猫の画像、ほかになかったっけ……と検索していて、単行本1巻発売当時のルイさんのイラストが出てきて、いまと色々テンションが違ってほほえましいような懐かしいような pic.twitter.com/JHyzwp3Pf2— 吟鳥子@8巻12/16発売「きみを死なせないための… (@gintoriko) June 25, 2020
またアラタたちのような新人類が今後大勢生まれてくるようになると、コクーンの中にはあまりにも多くの人が溢れかえってしまいます。それを防ぐための無情な命のルールも、このコクーンの中には定められているのです。
しかしこれらのルールは全て、このコクーンの中で大勢の人々が穏やかに暮らしていくためのもの。その中で自分達人類が本当に大事にしなければならないものは、一体なんなのか。主人公のアラタたちと共に、私たちも人の生き方や命について考えさせらる作品です。
連載が終わっても、彼らの物語は終わらない
5/15に『きみを死なせないための物語』7巻が発売されます、よろしくお願いいたします〜!
命の選別をされてしまう残酷な未来で、大切なひとを守るためにひっしに駆けてゆく永遠の子どもたちのお話 pic.twitter.com/13AxVcc19d— 吟鳥子@8巻12/16発売「きみを死なせないための… (@gintoriko) May 1, 2020
2020年9月に連載が完結し、12月に最終巻となる8巻が発売となる本作。しかし月刊ミステリーボニータ2021年2月号からは、この物語の番外編がスタートすることも告知されています。
ぜひこちらもあわせてチェックして、彼らの生きる世界に想いを寄せてみてはいかがでしょうか?