©INA/リイド社
パンクに生きる人、パンクス。
破れた服に革ジャンを羽織り、毎夜地下のライブハウスで轟音のなか暴れる人。もしくは酒とタバコ、性、薬にまみれ青ざめた顔で退廃的に暮らす人でしょうか。
2021年9月25日発売、INA先生のエッセイマンガ『つつがない生活』に描かれた地方20代夫婦の毎日は、そんなイメージとはかけ離れている。しかし先生はまごうことなきパンクスです。
大切な気持ちを忘れないために
ハードコア・パンクバンドMILKでギターを弾くシン(作者のINA先生)は、妻ユウと愛知県でふたり暮らし。フリーランスで働くユウの稼ぎを主な収入源として、こまめな記帳の欠かせない生活を送っています。
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必死に生きる毎日のなかにあるユーモア。ユウの妹カナミとのかけがえのない時間。アメリカツアーで音楽に身を委ね、異文化と交ざり心を震わせた記憶。一生に一度のフランス新婚旅行……。『つつがない生活』は、すべてのエピソードが自分の大切な気持ちを忘れずにいるために描き残されたようなエッセイマンガです。
つつがない=問題がない、無事である
「日常は尊い」というメッセージは、今やどのジャンルの表現においても常套句。マンガにも日常系というカテゴリがあるほど、何事もない生活を賛美する作品にあふれています。
裏を返せば、日常が脅かされる現実がいつもあるということ。貧困や病、差別……あらゆる問題が、つつがない生活を妨げます。病気にならず、事故にも遭わず、ずっと安心して生活できるだけの収入があり、一切肩身の狭い思いをせずに暮らしている人は果たして世界の何%なのでしょうか。
パンクは姿勢、スタイルじゃない
Punk is attitude, not style.
初期パンクを牽引したバンドThe Clashのボーカル ジョー・ストラマーの言葉。パンクとは姿勢。姿勢とは態度やあり方。パンクとは奇抜なファッションや歪んだギターをかき鳴らす音楽、破滅的な生活スタイルのことではありません。
「パンクスピリット」とは反骨精神、つまり日常を圧迫するものへの反抗心です。
『つつがない生活』第11話、アメリカのライブハウス。世間から押し付けられる年齢・性別・職業・人種、すべての役割を拒否する曲「ROLE」をMILKが演奏するシーンに、心臓をぐっと掴まれます。
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小さなライブハウスでどんなに人権や社会問題を訴えても直接誰かや自分を救うことにはならない。しかし非情な現実に抵抗する姿勢、自分たちが感じる大切な気持ちを何度でも確認し、パンクスピリットを絶やさない。そのために彼らは叫びます。
問題だらけの世界では、自分の「つつがない生活」を守っていくことさえ容易ではありません。もっと過酷な状況にある人びとを思いながら、自分自身の生活をただ必死に生きる。自分のできる範囲で差別や偏見に反抗していく。それが私たちにできるギリギリ。そしてそんな暮らしをつづける人こそがパンクスです。
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あなたもパンクスになれる
『つつがない生活』は、パンクスピリットを持って生きる人の日常記録。誰もがつつがなく生きる世界を決してあきらめず、絶えず考え、必死に暮らす人はみなパンクスです。あなたもパンクスになれる。もしくは、すでにパンクスかもしれません。
つつがない生活の単行本が9/25に発売になります!今まで読んでくださった皆様本当にありがとうございました😊宜しくお願い致します! pic.twitter.com/QFHK0YHtfr— INA (@bbsslls) September 14, 2021
もちろん私もパンクスさ!
OGP及び記事内画像はトーチ編集部の許諾の元掲載しています。快く利用許諾を出していただきありがとうございます。
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