ぼくトンちゃん
いつも困り顔の、ユーモラスなブタ仙人の下での修行は、ごはんを作ったりランニングしたりと、どこか牧歌的である。そして、ポーズをつけて「お師匠」などとしゃべるトンちゃんがかわいらしいので、まったりとした印象を与える。…と思っていると、不意打ちのように痛切なセリフが語られ、読者の心を突き刺す。このあたりの呼吸の妙こそ、いましろたかし作品の醍醐味(だいごみ)といえるだろう。たとえば、途中から登場する、宇宙から何かの手違いで仙界にやってきてしまった教育ロボット、ロボ仙人。彼が、自分の教えが理解できないという弟子の田村に対し、「私は 孤独だ」と本音をつぶやくシーンなどは、静かであるにも関わらず衝撃的だ。たとえ、現実世界ではない異界が舞台であっても、いましろ作品の登場人物の苦悩がなくなることはないのだ。
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