柔らかい絵柄で描かれる島でのスローライフ
主人公の三宅飛鳥は新卒で入社した東京のブラック企業で働いていたが、心身ともに限界が来て倒れてしまう。そのまま仕事を辞めた彼に友人が勧めてくれたのは、離島「月輪島」で郵便局長として住み込みで働くことだった。
島でゆっくり流れる時間と、女子高生の日和子をはじめとした島民たちに癒やされながら三宅の新しい生活が始まるーー。
こうして物語は始まります。
とにかく絵柄が柔らかくて、読んでいるだけでも癒やされるのが『やさしいヒカリ』の素敵なところです。
ヒロインの日和子が可愛いので、「三宅くんの理性、どうなってるんだ…?」と思わざるを得ないシーンもちらほらありますが、いやらしさも全く無いのが中村ひなた先生の絵柄の魅力なのでしょう。
「逃げる」ではなく「選ぶ」
この物語は、三宅くんが東京での辛い生活から「逃げて」離島に来る選択をして始まる……のではなく、彼は1話の終盤で島にいることを「選び」ます。
この作品を読むうえで大事なのは「選ぶ」結果として、島でのゆったりした生活がある、という所でしょう。
7話(2巻収録)で、日和子の中学生の従姉妹・千代が家出をして島に来た時に三宅くんが言った「どうしようもなくなったとき今いる場所だけじゃなくて別の場所もあるって知ってるのってすごいことだよ」というセリフは大人にこそ染みるのではないかなと。
そして、日和子が進路を「選ぶ」日も少しずつ近づいておりーー。
ちゃんと前へ進んでいく物語
島でのスローライフが描かれてはいるんですが、物語の進行はかなり早く、春に始まった物語が2巻の後半ではもう10月になっています。
流れている時間の中で日和子は大きな決断をしていますが、それはぜひ皆さんの目で確かめてほしいです!
日和子もまた三宅くんに出会って大きく変わろうとしているのは物語の大きな要素なので、2人の関係が最終的にどうなるのかは、やはり見どころでしょう。
草食系男子の三宅くんは、日和子から出ている矢印に気づくのか!?気付いたとして行動に出るのか!?という点には最終巻である3巻の最大の注目ポイントです。
まだまだ読んでいたい物語なので終わるのは悲しいですが、読者も前に進みたくなるような、綺麗で「やさしい」終わり方になると信じています。