何気ない日常を愛おしく感じる、読む人たちをそんな暖かい気持ちにさせてくれる作品『よつばと!』。
5歳の少女・小岩井よつばと彼女の周囲を取り巻く人たちとの日常を描いた本作は、幅広い層の読者層から支持されています。そんな『よつばと!』ファン待望の新刊15巻が2年10ヶ月ぶりに発売されることが決定しました。
来る発売日の2021年2月27日に向けて改めて1〜14巻まで読み返した筆者が改めて気付いた事は、本編と同じくらいに単行本の帯に注目したい、ということでした。
何気ない日常が愛しくなる
『よつばと!』は、5歳の少女・小岩井よつばが、育て親のとーちゃんやご近所さんたちに暖かく見守れながら成長していく、そんな彼女の日常を描いた作品です。
よつばを通して子ども特有の行動や発言をリアルに描き、思わずくすりと笑わせてくれるギャグマンガとしての姿を持つ一方で、とーちゃんがよつばを対等に扱い叱るシーンは教育マンガとして考えさせられる一面を持ちます。
そんな日常系マンガに留まらないストーリーの深さで幅広い層の読者から支持を得ている本作は、2016年に第20回手塚治虫文化賞で大賞を受賞しました。
よつばとキャッチコピー
ストーリーはもちろんですが、『よつばと!』にはファンを熱狂させるとある仕掛けがあります。
それが、単行本のキャッチコピー。
単行本の書籍版にのみついてくる、シンプルながらも胸を打つキャッチコピーの数々。読む前にはそのストレートさに思わず目を奪われ、読了後にはその巻の全てを表現したかのような秀逸さに唸ってしまいます。
既刊の1巻〜14巻のキャッチコピーから、よつばのストーリーを振り返ってみましょう。
いつでも今日が、いちばん楽しい日。
よつばがとーちゃんと一緒に一軒家に引っ越しするところから物語は始まります。
まるで世界を初めて見るかのように純粋な反応を見せるよつば。そんなよつばを見守るとーちゃんや、お隣に住む綾瀬家の姉妹たち。登場人物たちの暖かさを感じる1巻です。
ただ、ここにいるだけのしあわせ。
よつばのお隣に住む綾瀬家の三女・恵那の友人、みうらが登場します。
恵那とみうらは、よつばより少し年齢が上。そのため恵那はお姉さんらしい言動が多いのですが、みうらはストレートな性格ゆえに、よつばと近い目線で遊ぶことができるキャラクターです。
みうらの登場でよつばの世界はまた一つ広がります。
どこかで見た、どこにもない場所へ。
とーちゃんの友人・ジャンボが働く花屋さんで「花キューピット」になったり、とーちゃんと一緒に行く動物園...。日常の何気ないものから週末の特別なものまで、またまた新しいイベントがよつばを待ち受けます。
思わず童心に帰るようなイベントの数々に、読み手である私たちも心の中にある"あの場所"に思いを馳せることでしょう。
いつかおとなになるこども。と、かつてこどもだったおとな。かわらないまいにち。
公園遊びや釣りなど、よつばと一緒にやると大人たちも子どもように一生懸命になってしまうところが読んでいてとても微笑ましいです。
よつばと一緒にはしゃぐ、とーちゃんやジャンボ、綾瀬家姉妹たちの姿を物語っているキャッチコピーです。
おわらない夏のおわり。
子どもの頃は夏休みは永遠に続くものだと思っていました。そんな子どもならではの夏休みのイベントが詰まった巻です。
そして、とーちゃんの友達・やんだが登場します。やんだはぶっきらぼうな性格だけれど、よつばと同じ目線で遊んだり目一杯喧嘩ができるかけがえのない存在。彼の存在が物語に一層笑いを誘います。また、あまりの人気ぶりにグッズ化もされている「ダンボー」が登場する巻でもあります。ダンボー誕生秘話をぜひお見逃しなく!
今日も世界はひろがっていく。
よつばはとーちゃんに初めての自転車を買ってもらいます。まさにこのキャッチコピー通り、自転車を手にしたよつばの世界はますます広がって行くのですが、ある日とーちゃんに黙って自転車に乗って遠くへ行ってしまうよつば...。そんなよつばに対してとーちゃんが取った行動とは?
いつもは優しいとーちゃんの親としての深い愛情が感じられる巻です。
こどもが走れば、おとなも走る。
よつばととーちゃんの友達たちと一緒にいく、初めての牧場。
そんな牧場での一枚が表紙になっている7巻。よつばが走ると、とーちゃんたちも走る...。よつばと一緒にいると、気付いたら大人たちも子どもようにはしゃいでしまいます。
平日、休日、祭日。毎日。
風香の高校の文化祭や、近所の子ども会の祭りにハッピを着て参加するよつば。
夏から秋というイベントが多い時期を描いているため、子どもにとっての非日常がギュッと詰まった巻です。
変わっていく季節、変わらない毎日。
お隣に住む恵那やあさぎ、その友人のトラたちと一緒に気球を見に行くことになったよつば。
子どもの目線で見る広い敷地や気球たち。そんな子どもの時にしか感じられない景色が描かれています。
毎日という宝箱を、今日もあける。
初めて「嘘」をついてしまうよつば。もしかしたら成長の証なのかもしれないけれど、嘘は絶対にいけませんよね。そんなよつばの嘘に対してとーちゃんが取った行動とは?
とーちゃんとよつばの毎日が特に色濃く描かれている巻です。
世界は見つけられるのを待っている。
よつばは「子ども用のカメラ」を手にします。
よつばはカメラで色々なものを撮影するのですが、子どもならではの目線で撮影される写真の数々はまさにこのキャッチコピーそのもの。
目の前には実物大の世界地図。
初めてキャンプをすることになったよつば。
子どもの視点から感じたキャンプ場の自然、夜空、そして夜明け...。セリフではなく景色やキャラクターたちの表情で私たちに語りかけてくるシーンが特に多い巻です。
そして今日も、日々は続く。
とーちゃんの母親・ばーちゃんが登場します。
よつばの生い立ちは謎に包まれているのですが、本当の孫のように愛情を注ぎ、時には叱るばーちゃんの姿に胸が温かくなります。
世界VS子供
とーちゃんの妹・小春子に会うために、よつばが東京に行く巻です。
東京で出会うよつばにとって初めてのコトやモノ。まさに東京はこのキャッチコピーの中で言う世界なのでしょう。
よつばの"はじめて"に触れて
巻を追うごとに出会うよつばの「初めて」そしてそれに出会った時の彼女の「感動」。
単行本のキャッチコピーは、これらをシンプルながらも確実に私たちに伝えてくれます。
『よつばと!』15巻のストーリーはもちろん、キャッチコピーが楽しみです!