パティシエ、サッカー選手、アイドル…アナタは子供の頃、どのような夢を持っていたのでしょうか。
『アニメタ!』の主人公である真田幸(さなだみゆき)は、アニメーターを夢見る若者の1人です。そして19歳のある日、業界大手アニメ制作会社への入社が決定し、夢を掴むことができました。
本作は、念願叶いアニメーターになった女の子が業界の現実に打ちひしがれながらも、憧れに挑戦し続ける作品です。全ての夢追い人に捧げる最も熱気を帯びた1冊をご紹介いたします!!
目次
- 焦がれるほど思いを馳せた世界に足を踏み入れた女の子のお話
- 主人公と同じ目線でアニメ制作の知識が身につく
- プロに課せられる責任の重さが身に染みる
- たった1枚の付箋が幸に篝火を照らし続ける
- 全ての職業に通ずる"熱意"が込められている
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焦がれるほど思いを馳せた世界に足を踏み入れた女の子のお話
真田幸、19歳。努力と根性で奇跡的に通過した1次試験の結果を持ってして、アニメーターになるべく満を持してアニメ制作会社の扉を叩きます。
しかし実技試験の結果は散々、面接官は酩酊状態、挙げ句の果てには専門学校を薦められてしまうなど、誰が見ても散々な面接結果でした。
圧倒的に才能が求められるアニメ業界。仮に幸が他の応募者に勝るとしたら、それは誰にも負けないほどアニメに打ち込む圧倒的な熱意です。
このやりとりが採用試験の合格に関与したかどうかはわかりません。しかし時に圧倒的な熱意はほんの一握りの才能にも勝る力を秘めている、そんな可能性を感じさせる瞬間だったのではないでしょうか。
こうして無謀にも思われた幸のアニメーターへの挑戦は、動画マン採用試験合格という形で幕を開けました!
主人公と同じ目線でアニメ制作の知識が身につく
幸は動画マンとしてアニメ制作会社・N2 FACTORY STUDIOに入社しました。
動画とは、起点となる絵=原画と原画の間を滑らかに繋ぐ「中割り」の作画をする作業をするポジションです。本作を読み進めると、自然とアニメ業界の専門用語や仕事内容を知識として身につけることができます。
業界でも大手企業に受かったとは思えないほど業界用語を知らない幸。
しかし思い出して下さい。新入社員として入社した会社で、リスケ、バッファ、フルコミットなどのビジネス用語をコッソリ調べた経験、誰しもあるのではないでしょうか。
彼女の気持ちになると少し胃が痛くなりつつも、業界について知識が浅い読者が置いてけぼりにならないような工夫がなされていることが良くわかります。
アニメが好きな読者にも、業界を志望する読者にもオススメできる作品です!
プロに課せられる責任の重さが身に染みる
プロ意識の重要性はどの業界でも変わりません。例えば、お客様の前に立つ時はアルバイトであろうと1人の店員だ、という考え方は接客業の経験者なら痛いほど身に覚えがあると思います。
動画マンにおけるプロ意識とは、1本1本の線の描画です。まつげ1本、髪の毛1本、輪郭の一筆。たった0.2ミリ以下のズレが動画の全てを台無しにしてしまう程、線1本に大きな責任を伴います。
早く描かなければ仕事にならない、上手く描かなければ話にならない。しかし昨日引けた最高の線が今日もまた引けるとは限らない。なによりも線に言い訳をすることは許されない。
0.1%の才能に99.9%の熱意でしか立ち向かえない人間の挑戦がいかにして過酷なものであるか、そしてプロとしての責任の重さが紙面を通して読者にまで伝わってくるほど力強い描画の数々が、何よりも印象強い魅力です。
たった1枚の付箋が幸に篝火を照らし続ける
夢が叶って動画マンになれても、業界屈指のアニメ制作会社に入っても、自分の実力不足を実感させられることに対して苦しまない人はいません。時には全て諦めたくなってしまうこともあります。
しかし同時に、自分に対して本気で向き合って応援してくれる人の存在には心の底から助けられるものです。どん底にまで落ち込んだ日でも、たった1枚の付箋がまた線を引こうという気持ちにしてくれます。
厳しい世界ながらも見てくれる人は見てくれている。この付箋の差出人について、今は未だ何もわかりません。しかし、匿名だろうと真剣な応援はいつだってクリエイターの心を支えるものです。
厳しいだけでなく、クリエイティブな世界は暖かくかけがえのない繋がりもあると言うことが読者にまでしっかり伝わってきます。この付箋の存在こそが作品の良さを一層際立てているのです。
全ての職業に通ずる"熱意"が込められている
『アニメタ!』は右も左もわからないような新人の女の子が憧れの業界でなりたい自分を目指すお話です。しかし本作はクリエイターだけでなく、憧れを持って入社した全ての業界で共感が得られるほど職業に対して真摯に向き合う作品なのではないでしょうか。