「4歳児がアパートで独居」という衝撃的な設定の青年マンガ、津村マミ先生の『コタローは1人暮らし』。2021年4月24日からテレビ朝日にて関ジャニ∞の横山裕さん主演で実写ドラマ放送中の話題作です。
ダメな大人とワケあり男児の出会い
一度賞をとったきりくすぶり続ける31歳マンガ家 狩野進。自堕落な毎日を送る狩野の住むアパートの隣部屋に、生活力もコミュニケーション力も高すぎる4歳児 さとうコタローが単身で引っ越してきます。その日から、ふたりを中心にアパート住人や地域の人びとの間でコタローを見守るふしぎなご近所付き合いがはじまります。
家事全般をひとりでこなし、行く先々であらゆる大人と仲良くなってしまうコタロー。彼の独居や異常なまでの気遣いにはもちろんワケがあります。詳しくは作品内で明らかになりますが、さまざまな理由で両親がコタローを育てられなくなってしまったのです。
「子育て自己責任論」に引き離されたコタロー家族
子育ては家族の自己責任?
近代以降の日本は、子供を生み育てることの責任を家族に求めてきました。自分たちがすきで生んだんだから自分たちで育てて当たり前という「子育て自己責任論」です。育てる余裕がない家庭は子供をあきらめるか親戚にあずけるなど、あくまで育児は家族内で完結させることが当然とされてきたし、いまでもその考えは支配的です。
コタローの家庭はそんな自己責任論に押し潰されてしまった例と見ることができます。コタローの両親は、社会の制度や考え方が違えばもっと早く周囲に助けを求められたかもしれないし、抱えていた問題も他者の手を借りて解決できたかもしれません。
コタロー自身も自分の「弱さ」を責めてしまう
一方でコタローは両親を一切責めません。逆に親と離ればなれになってしまった原因は自分の「弱さ」にあると自分を責めています。「自分でなんとかしなきゃ」「自分が強くならなきゃ」という思考回路はコタローの両親とまるで同じ…。コタローもまた自己責任論に囚われた人間のひとりなのです。
責任のない子育てが家族を救う
狩野をはじめとする隣人たちは、コタローを育てることに対して誰も責任を負っていません。それでも誰かがコタローを幼稚園まで送迎したり、コタローの夏休みをシフト制で一緒に過ごしたりと、みんながコタローの幸せと健やかな生活を願い自然に支えあっています。
その状況はコタローに両親がいないからこそ成り立っているのですが、もしも両親がいたとしても、子育ての責任を家族だけに負わせず支えあう社会があったら世の中もっとハッピーになるはず!『コタローは1人暮らし』は、ご近所さんをはじめとした子供を見守るコミュニティが子育てに悩む家族の救世主となる可能性を示しているのです。
しっかり笑えて癒やされる
まじめな話ばかりしてしまったのですが、このマンガは公式サイトでも「アパートメントコメディー」と銘打つほど笑いに満ちた作品!
狩野以外にも、ヒモ彼氏と別れられない女・秋友美月や、離婚後息子に会わせてもらえない男・田丸勇など、ちょっとダメなやさしい大人であるアパート住人たちとしっかり者のコタローとのやりとりは、笑えると同時にほっこりします。
さらに本作に欠かせないのがコタローの「とのさま語」。コタローがすきなアニメに影響を受けた話し方で、自分を「わらわ」相手を「○○どの」と呼び、語尾は「~~ぞ」「~~であるな」といった具合。話すコタローがかわいくて癒やされるだけでなく重めなシーンの悲壮感がちょっと緩和される作用を果たしていて、作品の重要なエッセンスになっています。
見どころだらけの作品、期間限定無料も!
これまで面識のなかったアパート住人たちがコタローを介して交流を深めつつ、コタローのやさしさに触れて自分自身の問題と向き合っていくところも作品のおもしろさのひとつ。
見どころいっぱいの『コタローは1人暮らし』ドラマを観ている方もそうでない方も、ぜひ一度マンガで読んでみてください!
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『コタローは1人暮らし』ドラマ化に関する記事はこちらからどうぞ。