シュナの旅

宮崎駿/著

宮崎駿さんによるフルカラー幻想絵巻『シュナの旅』。神の国に実る金の穂の正体とは

巨匠・宮崎駿さんによる全ページフルカラーイラストが魅力の『シュナの旅』。青い飛翔体が日の落ち始めた空を流れる絵はまるで映画を見ているかのよう。

飢えに苦しむ小国に訪れた旅人が、金色の穂のことを王子シュナに告げるところから物語は始まります。

シュナの旅
宮崎駿/著

シュナの旅 (アニメージュ文庫)
宮崎駿/著

民を救うため穂を探す旅に

金の穂さえあれば、人々が飢えなくて済む。

穂を手に入れるため、西へ向かって旅立つ王子は、人買いに売られる姉妹に出会います。銃と引き換えに少女たちを買い取ろうとしますが、少女は立ち上がり…。

「いけません!」

銃がなければシュナも簡単に狩られてしまう。それに自分はあなたにだって買われたくない、と強い視線を向ける少女。自分を助けようとしたシュナを守るとともに、自分たちの人間としての尊厳も示す少女の姿は「ナウシカ」を思い起こさせます。

追っ手を撒いて神の国へ

翌日、シュナは人買いの輸送車を襲撃し、武力によって少女を救い出すと、少女と共に追っ手を逃れ、西へと向かいます。

西の果ての断崖の前で少女と別れたシュナは、火薬を使った罠で追っ手たちを追い落とした後、一人、崖を下りていきます。崖下には古代に失われた生物たちが息づく世界がありました。

風の谷のナウシカ』でも表現されているように、宮崎駿さんの「生物」の描写力は本当に素晴らしいんですよね。多様な生き物の存在から、森や海の豊かさが表されています。

宮崎駿/著
風の谷のナウシカ

人の命によって作り出された「モノ」

たどり着いた場所には高い塔が。空を駆ける謎の飛翔体から塔の中に流しこまれたのは、なんと「人」でした。しばらくすると塔とつながる水路に水があふれ、その水の中から緑の巨人が次々と生まれてきます。まるで、人々が塔の中で消化され、巨人に生まれ変わったかのよう。シュナは巨人たちが育てた金の穂をむしり取って逃げますが、その後、一切の記憶をなくし…。

映画を一本見たような感動がある

旅の始まりから少女との出会いと別れ、シュナの行動力と知性に引き込まれます。圧倒的な世界観は宮崎駿さんならでは。『シュナの旅』は命の連鎖や絆について気づかされる名作です。

単行本一冊とは思えないほどのボリューム感のある物語、『シュナの旅』。

宮崎アニメに共通するコンセプトやデザインなどが垣間見れるところも嬉しい一冊です。超おすすめ!