ショートケーキケーキ

森下suu / 著

『ショートケーキケーキ』三角関係、シェアハウス、兄弟。いろんな繋がりから生まれるいろんな家族のカタチ

森下suu先生が描く『ショートケーキケーキ』は、寮暮らしの高校生のラブストーリーです。太陽のように明るい女の子・天ちゃんと、誰にでも優しいけど本心を見せたがらない理久、文学少年でいつも本を読んでいる千秋の三人が、それぞれみんな大事という絶妙なバランスの三角関係をつくっています。

森下先生はネーム担当マキロ先生、作画担当なちやん先生の二人組。お二人は高校の頃から友人同士でした。その頃からマンガを描いていたようですが、なちやん先生が『バクマン。』を読んだことをきっかけに、一緒にマンガをつくることに。

『バクマン。』は、作画と原作の二人でデビューを目指す物語なのですが、このお話が次のマンガ家のデビューに繋がっているというのも素敵なアナザーストーリーですよね。お二人はその後、初投稿してから半年くらいでデビューしています!すごい!

振ってしまったことが恋の始まり

2時間かけてバス通学していた高校生の天ちゃんは、幼なじみのあげはに誘われて学校の近くにある星野下宿所で寮生活を始めることになりました。天ちゃんは星野下宿所で、少しチャラい感じの男の子・理久と、本が大好きでよく本の言葉を引用している男の子・千秋に出会います。

出会ったばかりの理久から告白された天ちゃんは、軽そうな告白を本気と思えずに振ってしまいます。ですがその後から、徐々に理久が気になり始めるのでした。

心変わりはいつから?

恋愛ベタの千秋は理久のことが大好きで、天ちゃんと理久がくっつくように応援していたのですが、ある時、天ちゃんに惹かれている自分の気持ちに気づいてしまいます。

好きって気がついたら余計に辛くなる。自分に分かったところで、あの人とは何も関係ない。今日もまた長い一日が始まる

引用元:『ショートケーキケーキ』4巻46~47ページ

シェイクスピアの名作を引用する千秋の気持ちは天ちゃんに向いているのですが、天ちゃんはまだそのことに気づいていません。

天ちゃん自身も、一度振ってしまった理久のことが好きな自分を自覚し始めてから、ちゃんと前に進んで、理久ともう一度向き合いたいと考えるようになります。

家族ってなんだろう

いつも笑顔でいる理久は、地元出身なのに下宿所で暮らしています。理久には兄の鈴(れい)がいるのですが、見た目がぜんぜん似てないんですね。二人はどういう関係なのでしょうか。理久が入ってきて欲しくないと考える領域に、天ちゃんと千秋は少しずつ踏み込んでいきます。

親子や兄弟姉妹のような血の繋がりがあると、自動的に家族になることが多いですが、結婚は血の繋がりのない家族関係です。また、最近増えてきたシェアハウスの暮らしでも、困った時はシェアメイト同士で助け合うような関係が生まれることがあります。

三角関係のラブストーリーだと、振られた子はちょっと遠い位置になりがちです。本作では、理久とライバル関係にある千秋が理久のことが大好き。理久も無意識のうちに千秋にだけは素の自分を見せていて、ライバルなのに大切な人同士、という不思議な関係性が保たれています。

血の繋がりだけじゃない、いろんなカタチの家族があって、その一員としてお互い支え合っていけるというのは、辛い時に頼れる場所が増えるということかもしれません。天ちゃんは好きな人の暗い部分も全部を愛して家族を大きくしてくれるような子なのです。

そして彼らの生みの親であるマキロ先生、なちやん先生の関係も、家族新しいカタチを感じさせます。

人物の表情が魅力的

天ちゃんのお兄さんの名前は「照(てらす)」くんと言うのですが、天ちゃんと合わせると天照(あまてらす)になります。ヒーローの闇を照らすという意味で天ちゃんの名前がつけられたことが、最終12巻のあとがきに書かれています。

理久は女の子みんなに笑顔を振りまく子ですが、天ちゃんだけにはちょっと複雑な表情を見せます。照れていたり、恥ずかしそうにしていたり。理久にとって天ちゃんが特別だって分かる微妙な表情の変化も、ぜひチェックしてみてください!

なごめる絵やかっこいい絵がいっぱい流れてくるので、Twitterもフォローもおすすめ!リボンのついたおこめのようなアイコンもかわいいよ~!

甘いケーキが幸せの象徴みたい!

ショートケーキケーキ (全12巻) Kindle版

先生のデビューまでの経緯が載ったインタビュー記事は、スピカワークスのサイトからも読めますよ!